クロムの備忘録的ダイアリー

定年後の日々の楽しみや関心事、具体的には写真、カメラ、観る将あるいは投資の話題などを綴っていきます。

山鉾・鯉山の懸装品

2023年08月27日 17時44分32秒 | 祇園祭
懸装品(けそうひん)とは山鉾を装飾する豪華な幕地を指します。
鯉山の懸装品(けそうひん)は1570~1620年にベルギーで織られたタペストリーです。
元々は伊達政宗の命でヨーロッパに渡った慶長遣欧使節の支倉常長がローマ法王から下賜された5枚の連作タペストリーの1枚が山鉾町に伝わったものです。
タペストリーはトロイ戦争の場面を描いたもので、鯉山に伝わったタペストリーは、
「トロイ王プリアモスと王妃へキューバの祈り」と名付けられています。
それが9枚に分割され、見送り、前掛け、胴掛け、水引となりました。
ちなみに他の4枚の題名と現在の状態は次の通りです。
・トロイ王子パリスと美女ヘレンの出会い
 金沢前田育英会が原型のまま保存
・トロイ王子ヘクトルの妃及び子息との別れ
 長浜曳山祭 鳳凰山 見送り
 祇園祭 鶏鉾 見送り
 祇園祭 霞天神山 前掛け
・トロイ王プリアモスの敵将アキレウス訪問
 芝増上寺 明治42年消失
・トロイ陥落の図
 大津祭 月宮殿山 見送り
 大津祭 龍門滝山 見送り
 祇園祭 白楽天山 前掛け
5枚のうち1枚が消失してしまったのは残念ですが、400年以上前にベルギーで作成されたタペストリーが残っているのは感慨深いものがあります。

タペストリー「トロイ王プリアモスと王妃へキューバの祈り」の全体。

分割されたタペストリー

トロイ王プリアモスと王妃へキューバ




山鉾巡行時の鯉山

鯉山の見送り

祇園祭・後祭の山鉾、鯉山

2023年08月25日 11時37分52秒 | 祇園祭
鯉山のご神体は中国の登龍門の逸話にちなみ、竜門の滝を登る鯉です。
この鯉は左甚五郎作と云われています。
山鉾の前面には朱塗りの鳥居を立て、奥にはスサノオノミコトを祀った朱塗りの祠を安置しています。
鯉山の会所ではご神体と懸装品が飾られていました。
この懸装品が素晴らしいもので重文に指定されているタペストリーを元に作られた物です。
簡単にタペストリーの由来を記しますと、慶長遣欧使節の支倉常長がローマ法王から下賜された5枚のうちの1枚です。それが後年仙台から山鉾町に伝わり、大胆にも9枚に分けられて山鉾を飾ることになりました。
タペストリーの画題はトロイ戦争となります。





鯉山のご神体。


懸装品。元は1枚のタペストリーだった。
見送り(山鉾の後部を飾る懸装品)の人物はトロイ王プリアモスと王妃へキューバ。

祇園祭・後祭の山鉾、浄妙山

2023年08月23日 15時33分52秒 | 祇園祭
浄妙山は平家物語の宇治川の合戦に材を取った山鉾です。
ご神体人形は源平合戦時に源氏方についた三井寺の浄妙坊と一来法師という2体の僧兵です。
荒法師・筒井浄妙が橋のたもとで奮戦中に後ろから来た一来法師が「悪(あ)しゅう候、御免あれ」と叫んで頭の上を飛び越えていきまんまと先陣を勝ち取ったというシーンを再現しています。
懸装品のうち前掛は智積院の長谷川久蔵(等伯の息子)作の桜図を織ったものです。




一来法師。山鉾に載せられた際は浄妙坊の頭に手をついている。

三井寺の荒法師、浄妙坊。

前掛は国宝の桜図に材を取っている。

前面に桜図が見えます。合戦のシーンなので橋桁に平氏方の矢が刺さっています。
別角度からの浄妙坊と一来法師。一来法師は片手で全身を支えています。

祇園祭・後祭の山鉾、八幡山

2023年08月22日 19時34分31秒 | 祇園祭
八幡山は石清水八幡宮から勧請した八幡宮を祀っています。
起源は定かではありませんが、応仁の乱前には既に創建されていたそうで、歴史のある山鉾です。
御神体は八幡神です。八幡神は第15代の応神天皇を指します。応神天皇は倭の五王の一人で、記紀によると渡来人を用いて国家を繫栄に導き、中世以降は軍神八幡神として武家に信奉されました。
八幡山保存会の会所では高僧の名書の屏風や、尾形光琳の屏風を写した丸山応挙の屏風が飾られていました。また別の場所では山鉾を飾る懸装品に並んで伝・左甚五郎作の鳩が飾られていました。歴史のある山鉾なので会所には所狭しと由緒のありそうな品々が展示されていました。
また鳩は八幡山のマスコット的存在のようで、色々な物にデザイン化されていました。
八幡山のご神体は山鉾の社の中の厨子に納められた応神天皇の騎馬像だそうです。
太宰府宮小路康文謹書屏風。宮小路浩潮は比叡山で天台を修め権大僧正となった。空海の書法を究めた名筆家として知られる。
光琳百花図屏風。丸山応挙が光琳作を写したと伝わる。




新旧の鳩像。

左甚五郎作と伝わる鳩像。


祇園祭・後祭の山鉾、鷹山

2023年08月21日 20時23分23秒 | 祇園祭
鷹山は2022年に196年ぶりに復活した大型の山鉾です。
御神体は鷹匠(たかじょう/鷹使い)、犬飼(いぬかい/鷹を補助する猟犬を扱う者)、樽負(たるおい/道具等を運ぶ者)のお三方です。これは光孝天皇の御幸で中納言・在原行平が鷹狩りをする場面からとられています。
NHKの番組によると、復活したといってもまだまだその途上にあり、今年はご神体人形の衣装を新調しました。鷹匠の衣装は能衣装を参考に、楽器尽くしという柄の小袖に狩衣を羽織っています。
西陣織の豪華な着物ですが、狩衣に隠れて小袖の模様が見られないというのもある種、京都人の心意気を感じさせるものです。
今後も鷹山保存会は鷹山の復興を継続していくということです。

御神体人形。左から鷹匠、樽負、犬飼。

新調された小袖、狩衣(かりぎぬ)、指貫(さしぬき、袴の事)を纏った鷹匠。

犬飼。

樽負。
山鉾の奥にご神体が見えます。
復活に先駆けて数年前から活動開始した囃子方。レパートリーは30曲。

山鉾の車輪は先祭の船鉾から譲り受けたそうです。