先日の句会で
板前の塩振る高さ桜鯛
という句が,高得点を得ました。(私は違和感を覚えて点を入れなかったのですが。)
魚などに塩を振ったりする俳句を,私は「塩振り」俳句と詠んでいます。景がはっきりするからなのでしょうか,この情景は結構詠まれています。よく知られている俳句では
新涼や尾にも塩ふる焼肴 真砂女
子の皿に塩ふる音もみどりの夜 龍太
があります。「新涼」「みどりの夜」の季語が生かされて,焼き魚はおいしそうですし,皿に落ちる塩の音は涼やかです。他にも
白粥に粗塩ふりて夏至近し 池上貴誉子
秋鯖に塩一振りの匙加減 鏡山千恵子
岩魚への塩ふる尺の高さかな 久田しげき
等があります。
晩春の季語・桜鯛と塩の両方で詠んだ俳句もあります。
宮詣り塩加減よき桜鯛 酒井ひろ子
こまやかに塩ふる夜の桜鯛 小澤克己
桜鯛化粧塩され跳ねゐたり 奈辺慶子
「宮参り」の句は別にして,他の二つの句には塩を振る「高さ」がないように思います。私が,句会に出された 板前の塩振る高さ桜鯛 に違和感を覚えたのはこの「高さ」にあります。塩の白さと桜鯛のピンクーこの対比はいいのですが,桜鯛の大きさが気になったのです。ある程度の高さから塩を振る場合,魚はその大きさのまま,あるいは切り身にされて串に刺されているのではないでしょうか。桜鯛の大きさに串をうち,それを手に持って塩を振るというイメージが湧かなかったのです。
最後に当の作者の言「ある料理屋さんで見た光景です。実は串をうったぼたん海老に塩を振っていたのです。でもぼたん海老は季語ではなく,思いついて桜鯛にしました。」
違和感は解消されました。私も何かに塩を振って詠んでみようと思います。
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