ことのはのはね~奈良町から

演劇、アート、短歌他、町家での出会いまで、日々を綴ります。

ローレン・カペリ作品展&朗読会

2019-09-08 | アート
登録有形文化財「奈良町にぎわいの家」は、百年前に建てられた、エレガントで個性的な奈良町家ですが、町家空間とコラボした現代アート展を数多く企画しています。つし二階という天井の低い空間での展示は、今回で19回。そのつし二階と江戸時代の蔵で、現在展示中の作家が、ローレン・カペリさん。フランスのイラストレーターで絵本作家です。「Cap!」という新作絵本がフランスで出版されたばかり。その絵本の朗読会を9/7、開催しました。
朗読のスタイルは、ローレンがフランス語で読み、続いて、小町座の満田さんが日本語で読むというもの。というわけで、日本語訳を読む稽古を事前にしました。「Cap!」という絵本作品は、ジュニア向けの絵がふんだんにある、とてもぶ厚い本です。登場するのは1人の女の子。その女の子が人工物(人間の作った世界)のアスファルトの道を歩きながら、ふと、別の方へ、人間がいた元の世界、自然の中に入っていって…というお話です。読むにあたっては、大人になる前の女の子の硬質感、それと、怖れを知らない前に進むような気持ち(計算のない)、それから何より「絵」の広々とした感覚を大事に読んでほしい。芝居はしないで空気を伝える。そんな難しいことを短時間の稽古で、満田さんはなんとも自然に読みました。彼女の声は少し固く、たっぷり息を中々含まないのですが、その「含まない」感じが、女の子の硬質感が出たようで、リハーサルと本番の3回、よいものを見させてもらいました。
さて、リハーサルで初めて、ローレンが読み、ページをめくり、それにあわせて、満田さんが日本語を続けます。が、なんともローレンが良くて、私はフランス語はわからないけれど、発音が心地良くて、それを受けて満田さんが読むと、あらら、こういう時間が今、ここにあるなんて…と、ちょっと胸が詰まりました。ローレンの絵本はセリフが少なく、絵をたっぷり見せるのですが、その一ページをめくるまでの時間がもとてもゆっくりなのです。つまり、言葉がない絵をたっぷり、見られるのです。この「たっぷり」な時間、すっかり忘れていました。そういえば…生まれたぱかりの息子に聞いていようがいまいが、絵本を読んでいました。その時はもう、たっぷり時間があったので。こうした、絵本をゆっくりめくる手のことをすっかり忘れていたのです。ローレンの「絵」は、こうしたゆっくりとした時間の中で、生き生きと投げかけてきます。人が大きくなる時間、子どもがゆっくりでいい時間…。
ローレンを招いてくれたのは、キュレーターの内田千恵さん。フランスと往き来しながら、アーティストの発掘しています。朗読会には、この絵本の翻訳者やフランス語が堪能なお仲間も来館され、ローレンを囲んで、フランス語の心地良い響きが町家に満ちてました。
ローレンの展覧会は9/24(火)まで。蔵のドローイングはわくわくしますよ。ローレンの手の感触、いっぱいです。
お別れする時、背の高い彼女とハグしながら「フランスに来て!」と言われました。今の私には中々難しく…。
けれども、私たちはどこへ行かなくても、フランスの女の子に会えたり、その空気を感じることができます。優れた絵本や作品が、こうして日本に、奈良に来てくれるからです。是非、皆さま、ローレンの世界を体感しに、にぎわいの家にいらしてください。




















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