25 持統天皇の紀伊国行幸最終歌
持統太上天皇はどんな歌で紀伊国行幸を終わるのでしょう。
有間皇子の形見の地を辿った鎮魂の旅の最終歌です。
行幸の人たちは、ほっとした気分で紀伊國に別れを告げたのでしょうか。
1679 紀伊国に止まず往来む 妻の杜 妻よし来せね 妻と言いながら
(紀伊の國に やまず通わむ 妻のもり 妻寄しこせに 妻と言いながら)
これからも紀伊国にはずっと休まず通って来たい。妻の社の神よ、妻を連れて来てください。妻と言う名を持っておられるのだから。
「止まず通わん」と云っているのは老女帝です。次の年の崩御ですから、本人も先が長くないことくらいは承知しているはずです。それでも「止まず往来」と詠んだのです。
更に、文武天皇に「やまず往来」を約束させたのでしょうか。そういえば、文武天皇も、姉の元正天皇(氷高皇女)も紀伊国の離宮に度々行幸しています。文武帝は有間皇子のために道成寺も建立しました。
では、それはこの妻の杜の神との約束を果たしたからだと?
いえいえ、そこはわかりません。しかし、持統帝の気持ちは十分に分かります。
紀伊国にこれからも通って来たい。だから、妻の杜の神様、その名の通りならば「あの方」を連れてきてください。もう一度、あの方に逢いたい。
わたしは霊魂となってっも紀伊国に通って来るでしょう……