コロンブドール

Les Films de la Colombe d'Or 白鳩が黄金の鳩になるよう人生ドラマを語る!私家版萬日誌

諏訪 敦彦監督最新映画「風の電話」今は亡き大切な人と想いをつなぐ電話 即感

2020-01-28 | 映 画
「風の電話」  即 感
まずこの映画は、東日本大震災での多くの犠牲者がでた災難を日本を含め世界の人々が知っているという認識で成り立ち始まっています。
この大震災の認識が、この映画の主人公ハルを通して、大震災で家族を亡くしてしまい、生き残った自分との過去と未来への心の葛藤が語られています。
その心の葛藤が、ラストの「風の電話」BOXへと綴られています。
この映画では、よく食事の場面がでてきて”食え”と心細く苦しんでいるハルに言います。その声に少しづつ反応し食すのですが、この食べる行為は”生きる”という事が明確に伝わってきます。
ハルを助け自宅で夕食をとらせる公平訳の三浦友和さんの”食え”は説得力がありました。つまり、食べることは生きる事であり、「生き苦しむ」ことを伴う生き物の宿命であります。それ故、ハルはその苦悩の元である東日本大震災で亡くなた家族という過去への整理に実家のある福島大槌町まで行く気に成ったのではないでしょうか。
そのハルの表情は、不安だらけのあの無表情で無口な気だるい高校生だったのではないでしょうか。しかし親切な兄妹の車に乗せてもらい、またレストランで食事をさせてもらい、シングルマザーの大きくなって生命が宿っている妹の腹を擦るハルの生命の感動は、自分の今の負の気持ちを払拭しまた一歩踏み出した感じがありました。
またクルド人大家族での食事場面も、家族を失ったハルを通してその幸せそうな家族にも日本で「生きる」という苦悩が有るという事を知る事が出来、諏訪監督らしい国際的な視野からも描かれていました。
さらに西島秀俊さん演じる森尾は、姉の親類の家で西田敏行さんが居る家庭で夕食をとる。そこの家庭の会話の有る空間がハルの温かい家庭の過去の思い出が募ります。それがハルの家族の幻想へと繋がるようです。
それが津波で流された実家跡への場面につながりその余韻でハルの叫びに観客は共鳴させられます。”どうして答えてくれないのか?”と・・・。
その”叫び”をラストの風の電話BOXへとその余韻を持ったまま、ハルは話しかけます。その声が、吹く風に乗り、見る人には天国にいる家族のもとに伝わり、返事が返ってくることを観客は感じたよです。
またこの映画は、森尾の実家横の菜の花、ハルの家跡での夕陽、風の電話BOX横の植物の葉の黄色が印象的な映画ですが、この黄色がこの作品のテーマを一層深いものにしているようです。
黄色は昼間の太陽をイメージし、闇(深層意識)を照らし、表面に現れた意識を意味を分析
、分析するそうですので、ハル自らこの黄色で過去と未来を分析し答えを得たのでしょう。
この映画、ハルを通しての自分探しであり、過去の痛みを忘れず、未来の自分の生活の糧にする物語と思います。観る人の自分史で、色々と感動は違うと思いますが、自分が感じたものでいいと思います。
皆さん観て下さい。いい映画です!  

映画『風の電話』公式サイト

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