①現行の最低保有台数制限(5台以上)で「安全・安心」が担保できるか?
どんなに小さな会社でも大きな会社であっても「会社」である限り社長が存在し、経理や営業実務をおこなう事務職がいます。また、運送事業を営む以上「運行管理者」や「整備管理者」が必要です。小規模事業者の場合、これらの業務を兼任している場合や社長の奥さんや家族が経理や営業実務をおこなっているケースが少なくありません。しかし会社全体の運営費には、地代・家賃その他の営業費用などが存在します。保有台数が少ないほど、これらの営業費用(固定費)に対する1車あたりの負担率が大きくなるのは当然です。
これらの営業費用は事業運営上絶対的に必要不可欠な費用ですから、運賃収入から優先的に振り分けられ、残余のあらゆる経費や費用を差し引いて残ったものが運転労働者への賃金・労働条件に必要な資金に充てられることになります。同じ賃金・労働条件で運転者を雇用した場合、小規模事業者ほど1車あたりの収受運賃は高額にならざるを得ません。しかし実際には、小規模事業者ほど収受運賃は低い傾向にあり、裏を返せば小規模事業者ほど、運転者の賃金・労働条件は低くなるのです。当然、法で定められた最低基準(労基法や労働・社会保険加入、最低賃金法などの諸法令遵守)が担保できるかどうかは、極めておぼつかないものです。
「規制緩和」以降にこの業界に参入してきた企業の9割以上が車両保有台数10台未満であり、大阪トラック部会の調査では社会保険未加入事業者の8割が「規制緩和」後に設立された会社であったことなどを見ると、現在の最低保有台数制限である5台では法令遵守はとうていままならず、「安全・安心」を担保することはできないということになります。
②「安全・安心」が担保できる企業規模(最低保有台数)とは?
車両台数20台以下の企業では長期にわたって赤字経営を余儀なくされています。つまり、事業として成り立っていないのです。
法令遵守をはかりながら「安全・安心な」トラック運送事業を安定的に営み、労働者の雇用や生活を担保するためには、2人の運行管理者を選任することが必要な30台以上の車両で運送事業を営む必要があるものと考えます。
③最低保有台数引き上げのプロセス
以下の諸事項について検討を加え、プロセスを明確にする必要があるものと思われます。
事業所単位か事業者単位か1社1営業所の小規模事業者と1社複数営業所を持つ事業者との整合性をどうはかるかの検討をおこない、合理的基準に基づいて方向性をだすこと(例えば、1事業者30台以上とし、複数事業所をもつ事業者については、1事業者につき全体で40~50台以上であることに加え、1事業所あたり20台以上であることを許可要件とするなど)。
ii現存する小規模事業者のとりあつかいと経過措置後継者問題とあわせた企業合併も視野に同業種間・同地域間での企業合併をおしすすめること。業界団体や行政が、消滅企業の経営者の補償や雇用保障をはじめとしてその後押しを積極的にすすめること。
当面、協業化や協同組合化などを促進させること。