車社会の我国で自転車のさらなる普及がもたらす経済効果はないという見方が趨勢です。確かに自動車と自転車の価格を比べても、移動距離や積載量などを考えても、自転車のさらなる普及が景気を上向かせる材料になるとはとうてい考えられないのですが、エネルギー効率で考えると意外な面が見えてくるのです。
1gを1km動かすのに必要なエネルギー量で、その効率を比較してみると、自動車が0.8calなのに対し自転車は0.15calと5倍以上もエネルギー効率が高いことが分ります。化石燃料の枯渇化、原子力の危険性が叫ばれ、クリーンエネルギーが伸び悩む中、これだけエネルギー効率の高い自転車を都市交通として利用しない手はないでしょう。また、エネルギー効率がこれだけ高い乗り物が普及して、経済効果がないなんてことは絶対にないはずだという観点から論を進めて行きたいと思います。
日本の移動手段と聞いて思い浮かぶものとして、車や電車と並んで『自転車』が挙げられるでしょう。それほど日本では自転車が私たちの中で普及している身近な乗り物ということなのです。数字で見ると、日本では一人当たり約0.7台もの保有率があると言われています。一家に1台どころか一人に1台という数字なのです。世界的に自転車の保有率を比べると、オランダやデンマークなどの北欧の国々やドイツしか上回る国はいないのが実情なのです。
しかし、それほど自転車を保有している国であるにも関わらず、他国から自転車先進国としてお手本にされることがないというのもまた事実なのです。その理由は自転車を利用する人が多いだけであって、利用する環境を良くしていこうとする動きが鈍く、目立った活動をしていないからではないでしょうか?
特に大きな問題点として、自転車はどこを走ればいいのかという根本的な問題が我国にはあるのです。先進国の中にあって、こんな根本的な問題さえ解決できていないのは日本だけでではないでしょうか?法的に言えば、自転車は軽車両に分類される列記とした車両な訳ですから、どこを走るべきかと云われれば当然『車道』でなければいけません。ただ、これまでの日本は法で定まっていたにも関わらず、どちらかといったら自転車は歩道を走ってきたという現実がある訳です。
その背景にあるのが、日本で普及している自転車の大部分は軽快車(自転車産業振興会ではシティ車とホーム車に分類)、通称ママチャリであるということに尽きると私は考えています。自転車産業振興会のデータによると自転車の全販売台数に占めるシティ車とホーム車の割合はおよそ7割。クロスバイクを含めたスポーツ車はわずか1割しかないというのが実情なのです。ママチャリは車社会の中では低速のため車道を走るよりも歩道を走る方が安全だという認識が長く我国にはあったことが、大きな要因だと思います。ちなみに軽快車の平均速度は16km/hほどという認識が一般的のようです。
しかし、技術の進歩に伴ってママチャリが必ずしも低速な乗り物ではなくなってしまった。また、クロスバイクやシティバイクなどロードバイクほどではないにしろかなりスポーティーでスピードの出せるモデルも多く普及するようになったことも起因し、自転車の歩道走行は歩行者にとって大変危険なものとなってしまった訳です。自転車産業振興会でも軽快車をギアなしのホーム車とギア付きのシティ車に分類するようになっているのです。にも関わらず、政府や行政が自転車は車道を走れと強制できなかった背景には、自転車が車道を安心して走行できるような法律や環境をしっかりと整備することができなかったことがある訳です。
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