自転車のフレーム素材はクロモリ(スチール)から始まりやがてアルミからカーボンへ推移したという見方が一般的ですが、色々と調べてみると必ずしもそうではないということが分ります。
19世紀の終わりに現代的なチェーン駆動の自転車が完成し100年以上もロードバイク用フレーム素材の王者として君臨してきたのはクロモリ(スチール)でした。イタリアのアランが初めて接着アルミフレームを作ったのは1970年代のことですが、クロモリと同じスタンダードケージと呼ばれる細い径に制約されていたため、「アルミは柔らかい」というマイナスイメージが強く、アルミフレームが主流になるのはクラインやキャノンデールに代表されるアメリカメーカーの肉薄大径化を待たなければなりませんでした。
90年代後半から2000年代初頭にかけてのアルミフレームの大ブレイク以降、軽いが堅いと云われてきたアルミフレームですが、細い径に制約されたスタンダードケージ時代はクロモリ以上に柔らかな素材と考えられていたようです。
肉薄大径アルミチューブが当たり前になると、高剛性にして重量が6~8kg台という軽量バイクが続々と登場し、金属素材ならではの溶接による設計の自由度の高さも加わり、90年代後半にはロードバイクの主流はアルミへと移って行きことになります。
1998年にピナレロがカーボンバックを取り入れたプリンスを発表するやどのメーカーも一斉にカーボンバックのハイブリットフレームを作り始め、2000年代初頭はカーボンバックのアルミフレームが主流となり、フレームのカーボン化が急速に進むこととなります。アルミフレームは軽量化の為に肉薄大径化を進めた結果、剛性が高くなりすぎてしまったようです。
チタンフレームというとカーボンと並び新しい素材と考えがちですが、実はチタンがフレーム用素材として採用されたのはアルミ同様1970年代の初めなのです。イギリスのスピードウェルが1975年にフルチタニウムのロードフレームを発売しているのです。翌76年にはアメリカのテレダインが同じくフルチタニウムのロードフレームを発売したのですが、どちらもクロモリフレームの剛性には遠く及ばず、数年で姿を消す運命を辿っているのです。
けれども、90年代になるとアメリカのライトスピードやマーリンなどのチタンフレームメーカーが優れたチタンフレームを製作するようになり、特にアルミフレームが普及する前の90年代前半には、プロの中でもエース級の選手のみがチタンフレームを使うという現象が起こっているのです。
今でこそ、そのしなやかな乗り心地が見直され、大人のラグジュアリーバイクとしてチタンが注目されるようになっていますが、2005年にビアンキがパリ-ルーベ用としてチタンバイクを投入しマニュス・バクステッドが勝利したことを知る人は少ないのではないでしょうか?
※コメント投稿者のブログIDはブログ作成者のみに通知されます