炭素繊維の品質は一般的に炭素密度が高いものほど高いとされています。これはCFRPが原材料であるアクリル(PAN)繊維などを高温で蒸し焼きにして、余分な成分を除去することで作られるためです。この蒸し焼き工程を繰り返し炭素(C)の密度を高めるほど硬く引張強度の強い製品になるのです。
但しこれは素材がという意味です。炭素繊維はその名の通り炭素製の糸ですから、そのままでは製品に加工できません。そこで一旦炭素繊維に樹脂を含ませたシート状のプリブレグという中間製品に加工されます。このプリブレグには織られていないUnidirectionalなものと平織りや朱子織で織られたものがあります。自転車のカーボンフレームなどは金型(正確にはカーボンは熱処理が必要で焼き型になります)にこのシートを重ねて張付けてゆくことで造られるのです。この際のカーボン繊維の向きをどうするか、何層重ねるのかといったことでフレームになった際の強度や振動吸収性も大きく変わってくることになるのです。
カーボンフレームの価格の高さは素材そのものが高価だというよりも、アルミやクロモリのような金属と異なり、単に材料を鋳型に流し込むといった製法が使えず、金型(焼き型)にシートを張付けるという作業に手間隙がかかるためでしょう。つまり人件費がかかるということです。近年カーボンフレームの価格が下がりつつあるのは、これまでアメリカやヨーロッパで製作されていたものがアジアでも製作が可能になったことが大きいと思っています。勿論、GIANTのCPMPOSITEモデルのように廉価版カーボン繊維を使用して原料コストをさらに削減し、より低価格なカーボンフレームを製作しているメーカーもありますが、基本的にチタンフレームの価格の高さとカーボンフレームのそれは意味合いが異なるということは知っておきたいところです。チタンの場合は原材料がまだまだ高価ですが、カーボンは原材料がPANなどのアクリル樹脂のため素材そのものの価格はさほど高いものではありません。勿論、製品の密度や引張強度、フィラメント数によっても価格は異なりますが・・・
先にも書いたように良いカーボンフレームを造る為には単に良い素材を使うだけではダメで、プリブレグをどのように張合わせるかという技術とノウハウが不可欠なのです。GIANTではひとつのカーボンフレームに500枚以上の自社製プリブレグを使用しているとカタログに記載されています。この技術は単にメーカーだけのものに留まらないのが実情のようです。シートを金型(焼き型)に張付ける作業はほとんどが手作業になるため、手先の器用さと勤勉さが求められます。近年、カーボンフレームの多くがアジアで生産されているのは単に人件費が安いというだけではないような気がしています。アジア製を危惧する向きもありますが、一部ではフレームがイタリア製ではなくアジア製になってからの方が良い製品になっているという声さえ聞こえてきます。
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