長いようであっという間の21日間のジロ・デ・イタリアがローマで幕を閉じた。マリア・ローザは今年がジロ初参戦となったタディ・ポガチャルが2日目の初勝利から守り通した。とにかく強いポガチャルの姿が際立った3週間だった。歴史ある建物や風光明媚で美しいイタリアを私もTVの画面を通して旅することが来たような気がしている。
10数年前、初めてグランツールをTV観戦した頃は、3ヶ月のヨーロッパ観光が出来ると呑気に思っていたら、ドーピングスキャンダルがそんな風景を暗く覆っていった。ランス・アームストロングのツール・ド・フランス7連覇の記録が抹消され、アルベルト・コンタドールの血液ドーピング疑惑が出始めたころから、徐々に心がロードレース観戦から離れて行くことになる。
ロードバイクは観るより走る方が楽しくなったことも影響したのだが、ロードレースの観戦は久々だった。10年以上も時が流れているので当然のことなのだが、選手の顔ぶれもバイクもフォームも大きく変貌を遂げていた。唯一、ポガチャルのアシストだったラファウ・マイカが私の知った唯一の顔だった。彼はかつてコンタドールのアシストをしていた選手だったのだ。
4年前に若いポガチャルがツール・ド・フランスを連覇し、ここ2年はヨナス・ヴィンケゴーという怪物が現れたことはネットを通して知ってはいたのだが、久々に目にするロードレースは何もかもが新鮮で、ドーピングの「ド」の字も出てこないほどクリーンな世界に生まれ変わっていた。
春先のクラシックはファンデルプールの独壇場だったのだが、ジロ・デ・イタリアが始まると主役はあっという間にポガチャルに替わってしまった。4月末のリエージュ・バストーニュ・リエージュでファンデルプールを下し、その勢いのまま、最初のステージから積極的にアタックを見せ、2日目にはジロ初参加・初勝利でマリア・ローザを獲得すると、ステージ6勝。総合2位のダニエル・マルチネスに10分近い大差を付けての圧勝に終わった。
マリア・チクラミーノ(ポイント賞)も若さを見せる面はありながら、リドル・トレックのジョナサン・ミランが圧倒的なパワーを見せつけて獲得。マリア・アッズーラ(山岳賞)は山岳の登りで圧倒したポガチャルが、若いクライマー達を抑えて獲得。たが、2位のジュリオ・ペリツァーリ(VFグループ・バルディアーニCSF・ファイザネ)や3位のゲオルグ・シュタインハウザー(EFエデュケーション・イージーポスト)といった若手の活躍が目を引いた。
マリア・ビアンカ(新人賞)は地元イタリアのアントニオ・ティベーリ(バーレーン・ヴィクトリアス)が獲得した。最終日を繰り下げとはいえマリア・アッズーラを着て走ったペリツァーリと近年選手の不振に喘ぐイタリア人にとっては溜飲を下げる大会となったはずだ。
大会が始まるまではポガチャルの強さは分かってはいたが、昨年までの脆さを併せ持つ姿も見てきたので。どこまでの走りを見せるのかは半信半疑だったのだが、今年のポガチャルはWツールを見据えて確実に進化していた。ステージ6勝を挙げてはいるが100%の力で勝ち取ったステージは最初の個人TTだけだったような気がする。それも自身の課題克服の為の試みだったに違いない。ポガチャルの頭の中にはツールでヴィンケゴーを下すシュミレーションがあるのかもしれない。
これから選手たちはピンク色から黄色のジャージを目指す戦いへと向かって行くことになる。今年は最終日に個人TTが待ち構えるツール・ド・フランスだが、目下連覇中のヴィンケゴーが間に合うのかはまだ分からない。ポガチャルはレースには出ず高地でのトレーニングに専念するらしいので、本来ツール・ド・フランスの前哨戦と言われるクリテリウム・ド・ドゥフィネやツール・ド・スイスは個人的にもスキップしてツール・ド・フランスに備えたい。ロードレース観戦は時間が長いので結構体力がいるのだから。
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