自由帳~子供の心で~

南保大樹が日々思ったことや稽古状況など、舞台創りを綴ります。

出逢いがあれば……ベリャコーヴィッチ

2016年12月11日 | 追悼
言葉を紡ごうと思う…


怒られた…いや怒鳴られた…

真っ赤な顔をして大声をあげて向かってくる…

身体全体で怒りをぶちまけてくる…

恐ろしいよ…

そんなに怒んなくったって…

すぐできないことだってあるじゃん…

許してくれなかった…

なんとかしなくちゃ…

ありったけのエネルギーを出してやろう…

とことんまでやった…


子供のような笑顔で「これから海に行く」って…

たまたま旅先ですれ違って…

こっちは身体も精神もボロボロなのに…

でもその笑顔に癒される…


その時にならないとどこを稽古するのかわからない…

すると思いもしない場面をやり、新しいアイディアに驚く…

チェンジは当たり前…

発想力は無限だった…

何度も驚かされた…


演じてみせる…

今でも心に残っているのが「どん底」のサーチンの最後のセリフ…

「人間…」二段ベッドに上がりやってみせた…

ハンパなかった…感動した…

そして同じ「どん底」のアンナの死ぬシーン…

死を前にして生きたいパワーが溢れながら死に向かう…

涙が出そうになった…


「検察官」の九州公演ラストで最後の検察官役の代役をやった…

1分くらいのシーンでセリフも1行…

出番前の袖でそわそわと落ち着きがない…

声を出したり咳をしたり…

舞台に出る恐ろしさを知っているんだな…


来年ユーゴザパト劇場は40周年を迎える…

そのことを何度も言っていた…

誇らしいのだろう…

実際凄いことだ…

そこに駆けつけたいと言ったら「泊るところは心配するな俺の家に来ればいい」と言ってくれた…

「俺の家は寝室が10部屋あって…」と少し自慢が入りながら嬉しそうだった…

泊まりたいよ…

ロシアで逢いたいよ…

あなたの誇りを祝いたいよ…


ワレリー・ベリャコーヴィッチ


衝撃的な出逢いでした…

衝撃的な毎日でした…


いま俺はフランスにいます…

あなたの訃報を聞いてからなんだか力が入りません…

毎日のレッスンもやろうと頑張るけど実が入らない…

でもそろそろ切り替えてありったけのエネルギーを出そうと思う…

そう…あなたに怒鳴られたときのように…


ありがとう、ベリャさん。

ここ10年間のあなたとの冒険は生涯の宝です。



ハムレットダイジェスト映像↓
ベリャコーヴィッチがクローディアス。
YouYube→https://www.youtube.com/watch?v=ZwvSxGyQ_Jc













南保大樹