「日本の黒い霧〈上・下〉」 (著者:松本清張氏、新装版出版日:2004/12/10、出版社:文藝春秋(文藝春秋1960年1月号~12月号に連載。1974年に出版された文庫の新装版。))
上記のベストセラーとなった本を読みました。
下巻あとがきより、「私はこのシリーズを書くのに、最初から反米的な意識で試みたのでは少しもない。また、当初から、『占領軍の謀略』というコンパスを用いて、すべての事件を分割したのでもない。そういう印象になったのは、それぞれの事件を追求してみて、帰納的にそういう結果になったにすぎないのである。」。
先入観や偏見を持って見て捉えた訳では無く、主流メディアとは離れて独自に数多く細かく取材し、情報収集して詳細に分析し、客観的に捉えた上での結論として、戦後の不可解な事件の数々が「アメリカ占領軍の謀略」によるものと言う事に繋がったと言っています。そして決して「小説」では無く、あくまでも「ノンフィクション」、「実録」が本書に在ります。
最近はインターネットが発達して、一般のメディア・マスコミが報じない情報も、一般市民が簡単に入手する事が出来る様になっています。かつては権力が情報隠蔽しタブー化する事によって、その権力の保持や保身、欲望に繋げていました。また戦後68年(2013年現在)も経過している事、米国の疲弊もあって、その様な謀略の数々が安易に暴露される様にもなっています。しかし、著者がこの「実録」を社会に発表したのは、戦後1952年のサンフランシスコ講和条約発行後8年と間も無い頃であり、相当な勇気や決断が必要であったものと思います。当時はまだインターネットも勿論無く、現在に比較してメディアが発達していなかったせいもあり、特に一般市民においてこの「実録」は半信半疑であったものと思います。しかし現在において本書を読む事により、その「実録」の真実性を容易に理解出来るのではないかと思います。よって、今こそ本書を読む価値がある様に思います。
また現在、世界各地で行われている陰謀・謀略についても、本書を通して見えてくるものと思います。
数々の不可解な事件の内、国鉄の下山・三鷹・松川事件(下山事件:上巻、松川事件:下巻各収録)は、間近に迫った朝鮮戦争における鉄道輸送の重要性から、占領軍がその国鉄を掌握する為に起こされたもので、その後の国鉄職員の大量解雇にも繋がりました。その事に反対する国鉄労組と構成する共産党員・共産分子が事件を起こした様に見せかける工作を行ない、その後の反共政策やレッドパージにも繋がりました。しかし、それらの事件をはじめとして、GHQの「自作自演」であり、共産主義者が行った様に見せかけて、共産主義・共産主義者に悪のレッテルを貼って来た訳です。そしてそのレッテルを貼られた共産思考を持つ者達は職場から追放され、再就職する事も出来ず、貧困と困窮の中、思考やイデオロギーを失わされてしまいました。
帝銀事件(下巻収録)においては、当初警視庁も戦時の731細菌部隊の陸軍関係者に絞って捜索していたのですが、突然、北海道の一画家に「冤罪」が被せられて、事実が隠蔽されてしまいました。戦後、A級戦犯等とされていた多くの者達が、CIA等の諜報員として働く事を条件に釈放されました。その諜報員や元軍関係者らをGHQやCIAが使って、数々の陰謀・謀略を行なって来ました。
他にも著者自身が間違いに気付いて3回の改訂をし遺作となった、占領軍による「一九五二年日航機『撃墜』事件」(本書上巻「『もく星』号遭難事件」と下巻「征服者とダイアモンド」に同様内容収録)もあります。
GHQは様々な部局によって一つの機構として構成され、それら部局がそれぞれの専門分野において、日本の戦後改革を行ないました。
その内、CIE(民間情報教育局)は戦後の教育改革を担当し、連合国軍最高司令官総司令部(SCAP)の指令により結成された日教組にも深く関わりました。そしてその教育改革により、日本人の愛国心を骨抜きにしてしまいました。また、当時の先端メディアであったラジオを通してのキャンペーンやプロパガンダを流す為に、NHKの「真相箱」等を直接管理しました。そしてNHKが当時から現在に至るまで、「自主規制」も含めて、自主性を無くしてしまっている現実が在ります。この事は、新聞やテレビ等のマスコミ全体を通して言える事です。
本書には、多くのGHQ部局の略語が登場しています。以下に、本書や本書下巻解説、「ウィキペディア」より、GHQ各部局(の一部)を記します。
・GHQ(General Headquarters:連合国軍最高司令官総司令部)
・SCAP(the Supreme Commander for the Allied Powers:連合国軍最高司令官総司令部)
1)参謀部
・G1(参謀第1部)…人事担当。
・G2(参謀第2部)…情報担当。作戦部。プレスコードの実施を担当。特に諜報・保安・検閲を任務とし、大きな発言権。占領中の数々の事件は、G2とその下の多くの特務機関(キャノン機関等)が関与。国家警察を支配下。
・G3(参謀第3部)…作戦担当。
・G4(参謀第4部)…後方担当。
2)幕僚部(GHQ/SCAP幕僚部)
・GS(Government Section:民政局)…政治行政。特に「非軍事化・民主化」政策の主導権。ルーズベルト政権下でニューディール政策に携わっていた者が多数配属。日本の機構改造の為に活動。検察庁と地方警察を支配下。
・ESS(ESS:Economic & Scientific Section:経済科学局)…財閥解体、労働改革等。
・CIE(Civil Information & Educational Section:民間情報教育局)…教育改革、思想改革、マスコミ対策等。
・NRS(Natural Resources Section:天然資源局)…農業・農地改革等。
・PHW(公衆衛生福祉局)
・CIS(民間諜報局)…公職追放、政治犯釈放等。
・SRS(統計資料局)
・CCS(民間通信局)
3)その他
CIC(G2の防諜部)、JCS(統合参謀本部)、PSD(CIEの世論・社会調査課)、OSS(戦略情報局)、OWI(戦時情報局)、LS(リーガル・セクション:法務局)、CTS(民間輸送部)、RTO(輸送司令部)、PHW(公衆衛生課)、CID(陸軍犯罪捜査局)等。
「GSとG2が日本の運営を巡って対立。GSが片山・芦田両内閣を、G2が吉田内閣を支えており、政権交代や昭和電工事件(上巻「二大疑獄事件、昭電・造船汚職の真相」に収録)の要因にはGSとG2の闘争があった。」(「ウィキペディア」より)
本ブログの、過去の関連記事↓↓
2012年11月24日付「占領下、一九五二年日航機『撃墜』事件」
上記のベストセラーとなった本を読みました。
下巻あとがきより、「私はこのシリーズを書くのに、最初から反米的な意識で試みたのでは少しもない。また、当初から、『占領軍の謀略』というコンパスを用いて、すべての事件を分割したのでもない。そういう印象になったのは、それぞれの事件を追求してみて、帰納的にそういう結果になったにすぎないのである。」。
先入観や偏見を持って見て捉えた訳では無く、主流メディアとは離れて独自に数多く細かく取材し、情報収集して詳細に分析し、客観的に捉えた上での結論として、戦後の不可解な事件の数々が「アメリカ占領軍の謀略」によるものと言う事に繋がったと言っています。そして決して「小説」では無く、あくまでも「ノンフィクション」、「実録」が本書に在ります。
最近はインターネットが発達して、一般のメディア・マスコミが報じない情報も、一般市民が簡単に入手する事が出来る様になっています。かつては権力が情報隠蔽しタブー化する事によって、その権力の保持や保身、欲望に繋げていました。また戦後68年(2013年現在)も経過している事、米国の疲弊もあって、その様な謀略の数々が安易に暴露される様にもなっています。しかし、著者がこの「実録」を社会に発表したのは、戦後1952年のサンフランシスコ講和条約発行後8年と間も無い頃であり、相当な勇気や決断が必要であったものと思います。当時はまだインターネットも勿論無く、現在に比較してメディアが発達していなかったせいもあり、特に一般市民においてこの「実録」は半信半疑であったものと思います。しかし現在において本書を読む事により、その「実録」の真実性を容易に理解出来るのではないかと思います。よって、今こそ本書を読む価値がある様に思います。
また現在、世界各地で行われている陰謀・謀略についても、本書を通して見えてくるものと思います。
数々の不可解な事件の内、国鉄の下山・三鷹・松川事件(下山事件:上巻、松川事件:下巻各収録)は、間近に迫った朝鮮戦争における鉄道輸送の重要性から、占領軍がその国鉄を掌握する為に起こされたもので、その後の国鉄職員の大量解雇にも繋がりました。その事に反対する国鉄労組と構成する共産党員・共産分子が事件を起こした様に見せかける工作を行ない、その後の反共政策やレッドパージにも繋がりました。しかし、それらの事件をはじめとして、GHQの「自作自演」であり、共産主義者が行った様に見せかけて、共産主義・共産主義者に悪のレッテルを貼って来た訳です。そしてそのレッテルを貼られた共産思考を持つ者達は職場から追放され、再就職する事も出来ず、貧困と困窮の中、思考やイデオロギーを失わされてしまいました。
帝銀事件(下巻収録)においては、当初警視庁も戦時の731細菌部隊の陸軍関係者に絞って捜索していたのですが、突然、北海道の一画家に「冤罪」が被せられて、事実が隠蔽されてしまいました。戦後、A級戦犯等とされていた多くの者達が、CIA等の諜報員として働く事を条件に釈放されました。その諜報員や元軍関係者らをGHQやCIAが使って、数々の陰謀・謀略を行なって来ました。
他にも著者自身が間違いに気付いて3回の改訂をし遺作となった、占領軍による「一九五二年日航機『撃墜』事件」(本書上巻「『もく星』号遭難事件」と下巻「征服者とダイアモンド」に同様内容収録)もあります。
GHQは様々な部局によって一つの機構として構成され、それら部局がそれぞれの専門分野において、日本の戦後改革を行ないました。
その内、CIE(民間情報教育局)は戦後の教育改革を担当し、連合国軍最高司令官総司令部(SCAP)の指令により結成された日教組にも深く関わりました。そしてその教育改革により、日本人の愛国心を骨抜きにしてしまいました。また、当時の先端メディアであったラジオを通してのキャンペーンやプロパガンダを流す為に、NHKの「真相箱」等を直接管理しました。そしてNHKが当時から現在に至るまで、「自主規制」も含めて、自主性を無くしてしまっている現実が在ります。この事は、新聞やテレビ等のマスコミ全体を通して言える事です。
本書には、多くのGHQ部局の略語が登場しています。以下に、本書や本書下巻解説、「ウィキペディア」より、GHQ各部局(の一部)を記します。
・GHQ(General Headquarters:連合国軍最高司令官総司令部)
・SCAP(the Supreme Commander for the Allied Powers:連合国軍最高司令官総司令部)
1)参謀部
・G1(参謀第1部)…人事担当。
・G2(参謀第2部)…情報担当。作戦部。プレスコードの実施を担当。特に諜報・保安・検閲を任務とし、大きな発言権。占領中の数々の事件は、G2とその下の多くの特務機関(キャノン機関等)が関与。国家警察を支配下。
・G3(参謀第3部)…作戦担当。
・G4(参謀第4部)…後方担当。
2)幕僚部(GHQ/SCAP幕僚部)
・GS(Government Section:民政局)…政治行政。特に「非軍事化・民主化」政策の主導権。ルーズベルト政権下でニューディール政策に携わっていた者が多数配属。日本の機構改造の為に活動。検察庁と地方警察を支配下。
・ESS(ESS:Economic & Scientific Section:経済科学局)…財閥解体、労働改革等。
・CIE(Civil Information & Educational Section:民間情報教育局)…教育改革、思想改革、マスコミ対策等。
・NRS(Natural Resources Section:天然資源局)…農業・農地改革等。
・PHW(公衆衛生福祉局)
・CIS(民間諜報局)…公職追放、政治犯釈放等。
・SRS(統計資料局)
・CCS(民間通信局)
3)その他
CIC(G2の防諜部)、JCS(統合参謀本部)、PSD(CIEの世論・社会調査課)、OSS(戦略情報局)、OWI(戦時情報局)、LS(リーガル・セクション:法務局)、CTS(民間輸送部)、RTO(輸送司令部)、PHW(公衆衛生課)、CID(陸軍犯罪捜査局)等。
「GSとG2が日本の運営を巡って対立。GSが片山・芦田両内閣を、G2が吉田内閣を支えており、政権交代や昭和電工事件(上巻「二大疑獄事件、昭電・造船汚職の真相」に収録)の要因にはGSとG2の闘争があった。」(「ウィキペディア」より)
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2012年11月24日付「占領下、一九五二年日航機『撃墜』事件」
日本の黒い霧〈上〉 (文春文庫)価格:¥ 714(税込)発売日:2004-12 |
一九五二年日航機「撃墜」事件 (角川文庫)価格:¥ 580(税込)発売日:1994-12-02 |