ここ1週間、わけてもここ数日、米+NATO vs ロシアの間になかなか大きな問題が起こっている。
こんな感じ。
ロシア ウクライナ情勢めぐり 米とNATOに新協定の草案
この見出しが既にプロパガンダなのは、現在、米を大将とする西側とロシアの間に起こっているのは、「ウクライナ情勢を巡り」ではないこと。それは大きな症状。
根本的に問題なのは、NATOの東方拡大問題。
何度も書いてるけど、NATOという軍事同盟を東側(ソ連側)に拡大しない、という約束があったからソ連軍は引き揚げて、双方がめでたし、めでたしとなったのに、ソ連が壊れたら急に、勝手に、ソ連周辺だった元ワルシャワ条約機構内の国々をNATOという軍事同盟に入れ出した。
1999年に実現化したのが、ポーランド、ハンガリー、チェコで、この当時は、そもそもハンガリー、チェコあたりはまぁドイツの手下になるのが道なんだろうという感じで、あまり問題視されていなかったのかもしれないが、これがつまり、ナチのロシア侵略を静かにやり始めたようなもの。
で、そこからいろいろあってモスクワ正面で、ここから突破だ~とか言っているのが「ウクライナ」という、既にもう何がなんだかわからなくなったユニットという感じ。
ロシアが「ウクライナ」を侵略するという最近の騒ぎは、米国務省が広めて、その手下の西側諸国が勝手に騒いでいる騒ぎといっていいでしょう。だって、既に、クリミアはすっかりロシアに復帰して普通に昔通りのロシアになって、ウクライナ東部のドンバス地域は、過去7年間しっかりと自治共和国体制になっていて、その上で様々な点からロシア連邦と共存できる、経済的に生きていける体制を作った。
つまり、その残りが「ウクライナ」。ここはナチ化が酷い、アメリカのコロニーなわけだから、どうしてそんなところをロシア連邦が今更ほしがる理由があるの?というお話。つまり、ロシア側が侵略したがっているなどというのは、まさしく、米国務省と西側体制による、宣伝にすぎない。
何をしたがっているかというと、残りものの「ウクライナ」にロシア連邦にかかっていってもらって、死んでもらいたい、ということでしょう。「ウクライナ」で死人が出れば出るほど、ロシアの侵略がーーーーーーという大騒ぎができて好都合。それをきっかけとして、さらにロシアを孤立化させるのだという、2014年にウクライナで航空機が落っこちたあたりと似た発想。
だがしかし、事態は、2014年よりも、西側にとって悪い。なぜなら、その間にロシア連邦は、そうなった場合にどうするのかの対策を講じてきたから。
ということで、今般、ロシア連邦外務省は、米とNATOに対して、安全保障上の確約を書面で、つまり、国と国との書面による合意(普通条約という)によって要求することにした。上のNHKの表現ではこんな感じ。
この中でロシアは、NATOが、ウクライナの加盟など、これ以上の東への拡大をしないと保証するほか、NATOに加盟していない旧ソビエト諸国やヨーロッパ東部で、いかなる軍事活動も行わないことなどを求めています。
またアメリカに一方的に示した条約の草案では「軍の部隊や兵器を、自国の領内を除いて、相手国の安全保障上の脅威と認められる地域に展開することを控える」としています。
またアメリカに一方的に示した条約の草案では「軍の部隊や兵器を、自国の領内を除いて、相手国の安全保障上の脅威と認められる地域に展開することを控える」としています。
一方的に、というのが馬鹿くさい。ロシアの提案なんだから一方的にもくそもないでしょう。
また、一方的というのなら、一方的にNATOが東方侵略を始めたおかげで、これまでどれだけ面倒臭い、馬鹿話にみんなして引きずられなければならなかったか、そこを見ろよ、といったところ。
また、書面で、というのがなかなかのツボでしょう。約束とは紙に書かれなければ約束ではない、なんて理屈は各国の裁判所も採用していないし、歴史的に考えてもそんなルールはない。だが、過去30年、西側諸国の民は、ゴルバチョフはNATOの東方拡大はないと約束されていたと知っても、紙に書かれないから正式じゃないですね、そうよそうよ、で済ましてきた。
実際には、様々な重要人物が当時、東方拡大はしない、東西冷戦は終わりだと喜んだ(約束の効力はあった)というのにね。
NATO東方拡大:ゴルバチョフはマジで約束されていた
■ 資料
ロシア外務省の正式な記事はここ。この中に条約の提案などもリンクされている。
17 December 2021 13:36
Press release on Russian draft documents on legal security guarantees from the United States and NATO
■ で、どうなるのか
アメリカとNATO+極東NATOのつもりチームが全体として、そうだわ、なにもわざわざNATOの東方拡大をして紛争を作ったりする必要はなかったのよ、などという思考回路に行くことは、見える将来においてないと思われる。
これらの人々は、ロシア人が死ねばそれでいいのよ、彼らに生きる権利などない(安全保障を許さない)、という主張を繰り返してきたも同然なので、つまるところ「ナチその2」チームと申せましょう。
これを止めるというのは大きな決断になるので、現在の西側の体制においてこれができるとは誰も思ってないのでは?
(今思えば、マクロンがNATOは脳死だと言ったあたりで、適当に顔の立つようなことをしていく、というのが最後の機会だったかもしれない。今般も、マクロン率いるフランスは、ロシアがウクライナを侵略しようとしているという洪水のようなマスコミ報道に、うちの情報筋はそうは見ていませんという態度を取ったりしてる。現状、西側でほとんど唯一の現実を見ないと不味いだろう派になってる感じ。)
そういえば、今頃になって、我々は全体主義にのまれている、ナチズムのようだ、みたいな寝言を言う人がいますが、いやもう、とっくにそうだからと言いたい。それはつまり、1934年、35年の東京は平和だったから日本は平和的だったと言っているようなもの。
だからまぁ、この話は、西側全体としては、ロシアがあんなこと言ってる、ば~か、で終わるんじゃないだろうか。
そして、多分、さすがに核攻撃もオプションだとか言うアメリカの国会議員がいるような事態は、アメリカ人にとっても既に限界を超えた恐怖になっているので、ペンタゴンとロシア政府が、その部分に関してはなんとかかんとか対話のチャネルを開けておく、みたいな感じになるんじゃないですかね。ここらへんは、主要メディアが書かなければいいだけだしね。
ということで、私としては、11月の終わりに書いた考えに変更はないです。
ということは、西側各国は、ナポレオンが言うところの something stupidにリソースを取られ、また、その人たちは勝手な妄想を抱いてしゃべって仲間を増やしてるから、意味不明な妄想集団が伸長する。次から次から予算がつくから利権化して、妄想を言い続けることが既得権益化する。これは、どこかで方針を変えるための政治的決断をする時に、とてつもない負担になる。
ただ、これは、ナポレオンじゃなくて、ナポレオンのロシア侵略の際のロシア軍の司令官、クトゥーゾフの戦法だと言った方がより適切なのかもしれない、と後で思った。
ナポレオンのロシア侵略というとナポレオンは寒さに負けたとかいう決まり切った話が語られてきたけど、根本的には、敵地で侵略行動をしているのに、いくつかの勝ち負けの後まだ態勢を立て直せると思ってることが間違ってる、って話でしょう。この教訓を引き出せないから、ナチも大日本帝国も同じことをする嵌めになったのかもなぁとか思う。
ナポレオン敗北の急所は、皇帝アレクサンドル1世がナポレオンに会わないと決意したところじゃないですかね。会わないから講和できない、講和できないから戦うしかない、戦うには飯も宿もいる、だがそこは敵地だ、という負のスパイラルが生じる。(講和できないから撤退する、というどうあれ敗北を許容することが唯一開けた別の道でしょう)
ナポレオンは西ヨーロッパでは強かったが、ロシア侵略で負けたわけです。
ナチは西ヨーロッパでは強かったが、ロシア侵略で負けたわけです。
ナチその2は、前2者とは比較にならないほどのリソースを投入したが、ロシアは崩せなかった、といったところでしょうか。
そして、前から言ってますが、私たちは今度はソ連赤軍なしでナチと戦わないとならないわけですよ。こっちの心配をした方がよくないですか?
■ オマケ
ナポレオンとヒトラーの戦争は、無駄に壮大で、最終的にアングロにいいところを食われるという同じ帰結になっている。
ナポレオンのロシア侵略、ヒトラーの東部戦線はどちらも当時としては他に誰もできないような大人数でかかっていって敗北して、ワーテルローとノルマンディーという、1桁違う相対的にいえば小さい戦争が歴史を決した戦線などと呼ばれるようになっている、という展開も似てる。
だが、ナチ2では、不実でならした人々が自分で突っ込んでしまっているので、この展開は望めないのではないのか、と今日現在ではそう見える。
ワザワザこういう書き方をされるという事は純粋に知りたいからだと受け止めます。
どこからが全然分からないのかがハッキリしないけど、戦争が長引き戦線が広がれば不利になるというのは私の考えというより物理的な物じゃないでしょうか?むしろ有利になる理由が訊きたい。
覚悟と頭というのはそうなんですが、覚悟で侵略側が防衛側に勝てるとは思えません。だから嫌がらせをして(形だけでも)相手が先に手を出した事にしたいのではないでしょうか。
頭の問題は大きいけれど、例えば諸葛亮がいても蜀は魏には勝てなかったので絶対ではないでしょう。
経済制裁はする方もされる方も無傷ではない。被害の大小はあるが。
ロシアにとってはボーナスであるならば、自分から望んで仕掛けるのではないでしょうか。
私にはロシアが経済制裁を望んでいる様には見えませんね。
相手が馬鹿だからと油断するべきではないというのがそんなに理解不能な考えとは思えませんが、疑問の答えにはなったでしょうか?
それはちょっと賛成できないです。むしろ日本は振り回された部分もある。特に、ソ連と付き合うなという条件を突きつけたのは、中国にとってはgood job だろうけど、日本にとっては悪質だったと思う。
どうしてそうお考えになるのか全然わかりませんが、私は、結局は覚悟と頭の問題だと思います。
経済制裁は全然効いてないどころかロシアにとってはボーナスだったわけですので、そこも違うと思います。
侵略側が複数の国を相手にすれば特にね。
善悪は別として全面戦争は避けつつ、分断工作やテロ、徒党を組んだり強力な兵器で周辺国を脅す、言いがかりをつけては経済制裁で孤立させる等の汚いやり方は戦略的には間違ってはいない。
プーチンはそれらを上手く切り抜けているが、厄介なのも事実。特に経済制裁は侮るべきではない。
だからこそロシアは先を見越して孤立しない様に仲間を増やし連携を強化しているのではないでしょうか。
NATO を東方拡大しない,ということを口約束ではなく条文として残すべきでした.外交の基本中の基本をどうしてゴルバチョフは行わなかったのか.それほど西側を正義と見ていたのか,と思います.
エリツィンは一つだけ良いことをしました.それはプーチンを後継者に指名したことです.しかしゴルバチョフは何も良いことをしなかった.だから西側では人気があるのでしょう.