マスコミに載らない海外記事さんが、ドミトリー・オルロフのインタビューを訳されていた。
私も1カ月ぐらい前に読んだ。だいたいいつも興味深く関心を持っているThe Sakerがオルロフにインタビューしたもの。
オルロフはロシア人でソ連崩壊後アメリカに住んでる人、The Sakerは革命時にロシアを離れた白系ロシア人の子孫でスイス育ちの人で現在アメリカに住んでる人。したがって、両方ともロシアに詳しいわけだけど、それぞれに個性があって、どちらも頑固で面白いインテリさん。
The Sakerによるドミトリー・オルロフ・インタビュー
http://eigokiji.cocolog-nifty.com/blog/2019/05/post-6088f3.html
前半はウクライナについて、ウクライナとはそもそもどういうところなのか、ウクライナというアイデンティティーは歴史的にはまったく底が浅いというか、ないというか、なんなのそれというところだということが余すことなく述べられている。
後半がアメリカについてで、覇者アメリカみたいなものはもう終わってるんだが、どこかで大きな事件(ストレステストと呼んでいる)が起きないから誰も気づかないだけ、といっている。
が、しかし、
アメリカ合州国は、衰退しつつある一部の人々の権益に奉仕する組織として、かなり長い間、役割を果たし続ける可能性が高いでしょう。疑問はこういうことです。誰がそれに含まれるのか、誰が含まれないのか?
であって、もっとわかりやすくいえば、
しかし私が前にお話したように、アメリカ合州国は、カントリークラブのようなもので、国ではないのです。メンバーには特権がありますが、国に暮らしてはいてもクラブ・メンバーでない人々の生活がどうか、メンバーは気にしません。誰でも入国させるし、国民でない人々にも投票させるという最近の動きは、アメリカ市民権それ自体に何の価値もないことを示しています。アメリカ国民唯一の生得権は、その多くがトランプが野外便所の国」と呼んだ国からの外国人浮浪者に囲まれて、路上浮浪者として暮らすことです。
要するに、アメリカ合衆国というのはその単位の中に入っている全員のためにあるのじゃなくて、クラブの人の特権は守られるがそうでない人はホームレスにでもなんでもなれ、という設計だということですね。
これはもう、ロシア人だけでなくヨーロッパからアメリカに住んだ人なんかも前から言ってますね。ヨーロッパでなじんで来たような意味での「国」ではないんだなということ。つまり、建前だろうがなんだろうが、ともあれ、なんとかして全員を食わせないとならないとは最初から考えてないってこと。
これは結局、社会権が根付かなかった社会だという言い方もできると思いますね。ソ連を嫌いすぎて歴史を見ることができなかった社会とも言えるでしょうが。
中盤にある、ヨーロッパについての話も興味深い。欧州というよりこれは日本も含めて「属国」になっているところ全体に当てはまる。
EUは多くの重大問題を抱えています。財政的、金融的に健全ではありません。全体的に、あるいは構成諸国として、アメリカに主権を渡してしまって、もはや完全な主権を行使する能力がありません。しかしアメリカはその決定が支離滅裂になるほど、内部対立で困窮しているため、アメリカはもう支配を維持することができません。
全体的構造はマトリョーシカ人形のようなものです。アメリカは一種のひび割れた外殻です。その内側にNATOがあり、それはロシア国境まで、ヨーロッパの大部分の占領軍です。それはロシアに対しては役に立たないでしょうが、占領地の住民に対しては確かな暴力の脅威となり得ます。NATOの内部にEUがあり、それは政治的議論をするだけで行動に移さない委員会と、次々と多数の規則や規制を紡ぎだす肥大化した官僚制です。
この軍事/政治的上部構造は、アメリカ覇権という重要な因子なしでは、実際には全く構造ではありませんから、我々はそれが、うまく機能すると考えるべきではありません。
アメリカ覇権という仕組みの下側に属国群が入っている。その外殻なしには属国群は機能できない仕組みになっちゃってる。
だから、NATOという軍事力は、NATOが表明している敵、すなわちロシアには意味がないかもしれないが、占領地の住民に対しては確実に暴力的な装置となっている、という見取り。
いやぁ、その通りでしょう。占領地住民には、ロシアが敵、中国が敵、という「存在理由」を売り込むけど、ホントに機能しているのは、占領地住民に対する圧迫。基地おいて制空権を奪うという仕様ですしね。
そもそも、米vsロシアみたいな、そんな地球が壊れるような戦争なんかしたくない。ただ、小型の戦闘を計画して、前線に置いた欧州東部や日本が壊れるだけらからやるならやってもいいな、というのが現在および今後の計画なのが恐ろしいわけですが、属国民ときたらそれすら気づかない。
ロシアはここの属国民じゃないから、それが見えるわけね。そしてプーチンもそうだけど、ロシアの指導者層は、自分たちも一回ソ連をやっていて、アメリカほど壮大なことはしてないがいわゆる衛星国やらソ連内の共和国をまとめる時に何をしたか、何が不評で、何が好評で、何が大変で、みたいな損益分析ができてる。そこから見ると、現在のアメリカのやってることがわかり、そして、もうアカンやろ、と見える。
だから、現在のロシアは欧州の中のドイツと文字通りのパイプを繋ぐことをきっかけにここを最低限でも利害共同体にして、ロシア人と欧州人は敵同士ではないことの一つの担保とし、同時に、お前(アメリカ)のその手には乗らないという意味で、ロシアの最新鋭のミサイルのターゲットは欧州ではなく、まずもってアメリカ本土だと宣言しているわけ。今年の3月には5カ所だったか6カ所だったかの具体的な場所まで宣言してた。あははは。
極東側は、アメリカの属国であることを文明人の証みたいに思ってる、わけのわからない日本人(笑)がNATO相当の国なので、もっと複雑。
■ オマケ:呪術を払おう
わけのわからない日本人(笑)は、冗談で言ってるんじゃなくて、マジで日本の一番の問題点は、「欧米」と一緒だと文明人だ、高いところにいる人だ、というこのへんな思い込みだと思う。アメリカだけじゃない。このへんな差別誘導装置みたいなものが働くから、どれだけ中国が発展しようが、ロシアの宇宙船に乗せてもらって日本人が宇宙に行こうが、中国やロシアにテクノロジーがない、資本主義をマネージできない、金がない、どうせ潰れる、破綻する、みたいな意味不明な言説が優勢になる。これはもう、呪術の世界だと思う。
そうそう、ついこの間まで、日本とヨーロッパは封建社会があったから資本主義を受容できるが、中国、韓国、ロシアはそれがないからできないのだ、わはは、みたいなことを真面目な知識人たちが書いて、書いて書きまくっていた。
あの人たちは現在どんな考えを持っているんだろうか?