バイデンとプーチンの会談は、予想通り、特に何も出なかった。
でも、それなりに両者が語ったことそれ自体が、2014年のウクライナ危機以降の成り行きを考えれば、意味の大きな出来事だったと言えるでしょう。
途中トランプがプーチンに会ったけど、トランプは米国の正式な大統領だが、実質的に実務レベルを含む利害関係者の誰をも代表していなかったという、恐るべき状態の大統領だったので、会っても現実的な意味はなかったってことなんでしょう。実際、何も動かなかったどころか、かえって、反トランプに火がついて荒れ狂うアメリカを加速した。
それに対して、バイデンはエスタブの代表者なので、存在自体に一応意味はある。
■ 冷戦を望んでない
いろんな動画の切り取りが出回ってるけど、UKのSkynewsのクリップがなかなか実のあるところを拾ってると思った。2分25秒ほど。
前半はプーチンが、米ロ両国で刑務所に入ってる人(スパイ)の交換とか、サイバーセキュリティ、ナワリヌイについて短く語るところ、後半では、バイデンが、プーチンは冷戦を望んでない、俺はこう言ってああ言った、彼(プーチン)は理解したと思うよ、などと言ってる。
BREAKING: Biden - 'Putin doesn't want a new cold war' https://t.co/im22viWJDI
— Levan Ramishvili (@levanrami) June 17, 2021
誰でも知ってる通り、冷戦を望んでいるのは西側であってロシアではない(笑)。
つまり、西側の大将が、ロシアは冷戦を望んでないってわかってくれたわけだよ、とかいう寝ぼけたことを言ってるわけですが、実質的な意味としては、アメリカが望んでないと自分からそこにフォーカスした、というところが、なかなかのポイントでしょう。
ロシアのTASSもそこを拾ってる。
バイデンは、プーチンが米国との冷戦を求めていないと信じている、という見出し。
といって、これですっかり仲良しになるみたいなことは起きない。単純に、いろんなところで衝突したり交渉したりが続くだけ。
ロシアのレッドラインは春先の一戦で言い渡してある。それを踏み越えたらなんでもする、戦争も辞さず、本気だと西側を納得させた。
ロシアとしては、この、その余波としてふっかけられた会談(バイデン側が会いたいと言った)を上手にこなしたって感じじゃないでしょうか。
■ 野に放った虎
会談後、プーチンとバイデンは別々にプレスの質問に応じるという設計になっていたので、プーチンは1時間近く一人で様々な質問に対応した。
(これはクリップ画像)
ナワリヌイだの、なんだのというアホな質問にも答えてた。もちろん、何を答えようと、西側ジャーナリスト集団の気に入る答えは出ないので、多分、記事になる時には、プーチンは答えを回避した、言い逃れた、負けた、不機嫌だ etc.となることは、既にわかってる。もうこれは仕様のようなもの。
だけど、回数を繰り返せば、あたり前だが、西側プロパガンダと異なる視点に気づく人は増える。
そこで、それこそやっちゃダメなことだろう!という、ポンペオ登場。プーチンは勝手にロシアのプロパガンダを流してる、と騒いでる。
Pompeo: Putin was allowed to 'spout Russia propaganda' to world unchallenged in solo press conference
そりゃまぁ、プーチン一人の会見というのは、言ってみれば、虎を野に放すようなものでしょう(笑)。それを米の各テレビが放映しちゃう。
だけど、共同記者会見を避けたのはバイデン政権、あるいはアメリカの側の都合でしょ? どうしてかというと、1つは、
バイデンの発言能力とプーチンのそれでバイデンば負けちゃうから
そしてもう1つは、
二人並んだ会見だと、せっかく作った冷戦っぽさが終わったみたいになっちゃう、そんなことは避けたい、というアメリカの側の、要するにポンペオみたいな人たちの希望の故でしょう。
だからこうなった。プーチンが野に放った虎になったのは、もってアメリカ内のエスタブ官僚たちの考えの浅さの故だと思う。
■ オマケ
昨日のバイデンで、アメリカで最も目を引いたのはこれではなかろうか。
バイデンが、自国のうざいジャーナリストに、プーチンが態度を変えるとどうして自信を持てるんだ、とか尋ねられ、バイデン爺は、そのジャーナリストに、指をさしながら説教し始める。
"I'm not confident I'm going to change his behavior. What the hell? What do you do all the time?... If you don't understand that, you're in the wrong business."
President Biden snaps at CNN's @kaitlancollins who asks why he's "confident" Putin will change his behavior:
— Daily Caller (@DailyCaller) June 16, 2021
"I'm not confident I'm going to change his behavior. What the hell? What do you do all the time?... If you don't understand that, you're in the wrong business." pic.twitter.com/LSX0QY2AF1
要するに、他人の行動を変えるなんてことを俺は確約した覚えはない、そんなことはできない、そうさせるようにするのが仕事であって、それがわからないならあんたは仕事(政治ジャーナリズム)を間違えている云々、といったことを言ってる。
実は、バイデン爺の言ってることは正しいでしょう(笑)。それが正しく思えない人がいるのは、もって、ネオコン型の、我々が言葉によって「リアリティーを作る」みたいなカルトにはまっている人が多いから、と言ってみたい。
リアリティーを作る、ってのは冗談じゃなくてですね、ヌーランドの夫であるロバート・ケーガンがマジでそんなことを堂々と語っていたことが知られている。
だけど、だから、いやもうそこなわけですよ。
トランプを米のエスタブが認めないというアメリカの事情はアメリカが解決するしかない。
他方、トランプは左をちゃかして応援団を喜ばせる手法だから、これではまとまらない。単に左右が入れ替わるだけ。
この事情はアメリカ人しか解決できない。
https://www.youtube.com/watch?v=gog4YNHEhqA
「プーチンは素晴らしい教育者で、知恵遅れの子供達にごく簡単なことを繰り返しゆっくり微笑みながら、静かに彼らの自尊心を傷つけないよう、1たす1は5ではないですよ2ですよ、という具合に接した。」
その魯鈍のひとり、BBCの記者とのやりとり
BBC「バイデンはロシアとの安定的で予期可能な関係を呼びかけた。しかし、西側では予期不能性がロシア外交の特徴と見られている。あなたは西側との関係改善の為、この予期不能性を転換する用意はあるか。」
プーチン「あなたは言葉のすり替えの名人だ。殆ど芸術の域で、羨ましい程だ。質問の最初の部分、西側は見做していると次の部分、それを転換する用意はあるかだが、西側は見做しているという事実はなく、これについて説明する。2002年の米国のABM条約の脱退は、予期不能だった。19年のINFの脱退。これが安定をもたらすのか。オープンスカイからの脱退。何ら安定的ではない。幸いなことにバイデン大統領とは戦略的に合意し、新戦略兵器削減条約を5年間延長できた。仮にあなたがウクライナとクリミアを取り上げるなら、全てはそこから始まった。聞くが、ウクライナのクーデターを支持することが安定に繋がるのか。ヤヌコビチ大統領が全ての野党の要求をのみ退任、選挙を予定していたところに、血塗られたクーデターを仕掛け、結果、南東部とクリミアの状況もたらした。あなたはこれが予期不能なことと言うのか。私はそう思わない。私が見るところ我々にとって明白な脅威が存在し、真に安定的な状態になるために、全ての分野において正しい行動について合意しなければならない。これは、今日我々が話し合った事柄、つまりハッキング問題であり、地域紛争の問題であり、これらは合意可能であるとの印象をバイデン大統領との会談で持った。」
以前、ラブロフとBBCの記者との会見でも気になったのですが、西側の記者の「上から目線」。馬鹿な上に傲慢とくれば救い難いですね。
面倒で不愉快なやり取りをわざわざ書いてくださって、本当にありがとうございます。私はもう、そこらへんの西側ジャーナリストの話を繰り返す気になれなくなることがしばしばです。
で、その中でいえば、ケドミの言う通りでしょう。
地点Aから地点Dに行くには、BかCを通らねばなりません、現時点Mに至るには理由がありましと教えているようなもの。
何度言ってもワープができると信じる子どもを前に、ワープはできませんと教えるプーチン先生の辛抱強さに驚くばかりです、ほんと。
今回はプーチン到着後、15分遅れてバイデンが会談場所に入っているのですが、これは毎日新聞によると会談前日にアメリカ側が「プーチンより早く会場に入らない」と宣言していたためらしいのですよ。巌流島の宮本武蔵のような話です。
数日前の事前の報道では、プーチンとバイデンの米ロ首脳会談が4時間半の予定だと報じていたのですから???それはあり得ないのですよ。プーチンは可能でも、バイデンは体力的にも精神的にも絶対に無理。
そして会談後の今朝の毎日新聞は休憩をはさんで会談時間が合計で2時間40分だと書いている。たぶん、プーチンが2時以上一方的に喋っていたのでしょう。
出典を探しているけどもう見つからないので正しいとはいえない、けどあり得そうでしょ?