ベネズエラのクーデター騒ぎは、見るも無残な話だったように見えてきた。
まず第一に、昨日、アメリカ側のイニシアティブでポンペオとラブロフが電話会談していた。
The telephone conversation was held at the American side’s initiative.
ラブロフはもちろん、アメリカがベネズエラのクーデターの試みを支援していることを非難。攻撃的なステップを続けていけば最も極端な結果になる、という点を注意喚起しているような発言だと思う。
"It was noted that the continuation of aggressive steps will have the most drastic consequences,"
http://tass.com/politics/1056746
これは何を意味しているのか。多分、軍の関与の有無と後述するような内容の正否、意図を質しているのではないかしら。
ポンペオもトランプも、すべてのオプションがあるんだ~といっては、間接的に軍事をチラつかせて威張ってる。これが長引くと、意図しない間に現実に引っ張られて軍事紛争になる可能性があがる。
で、こういうのはシリアとかだと、もう一般人を含めて覚悟と対処のベテランみたいになってるから発言は現実を見渡しながら解釈されるんだが、ベネズエラの場合は、現地のアメと子分が一般人を動員させて紛争化させようとしている。これは不必要な危険を伴う。
つまり騒乱から戦闘へ展開させたがったウクライナのバンデラ主義者と全く同じ事態。彼らはウクライナとロシアの国境に近いところで騒乱を起こして戦争に持ち込みたかったし、今もまだそう。
とうことは、米政府の不用意なプロパガンダは、自分たちは米国内の支持者を煽って、わーい、社会主義者のベネズエラをぶっつぶせ~とか盛り上がってるつもりでも、現地の子分を刺激して、彼らが蛮行に及ぶという展開になっちゃう。米政権はこれをどこまで意図して、覚悟してやっているのかね、とラブロフは質している、といった感じか。もう、モスクワの学校の先生化が止まらない(笑)。
というところで、一方では、米軍関係者が、米のインタビューの中で、
もちろん俺らはいつでも緊急プランとか用意している。でも、今回は、介入するような類の命令は受けていない、と言ったり、
米海軍の米南部指令の提督が、目標は民主的な権力の移行だから、外交を全面的に支援します、俺らはその努力を支援する用意をしてます
"Our leadership's been clear: It has to be, should be, primarily a democratic transition… We are in total support of the diplomacy and we stand ready to support that effort," he said.
といったことを言っている模様。
これはつまり、軍部は攻撃用意をしているわけではないことを言わせているんだと思う。軍を使うったっていろいろある。
https://www.presstv.com/Detail/2019/05/01/594856/Pentagon-not-ordered-to-ready-for-Venezuela-war
■ 想像以上にダメだったくさい
で、今般のクーデター騒ぎは、マジで馬鹿みたいな話だった感じだ。
しかしもし成功していたら・・・と考えると(それ自体無理な気もするが)、米政府は一体何をどこまでするつもりなのかが非常に不穏だとも言える。
ワシントンポストなどの取材記事を総合すると、
Trump threatens ‘complete embargo’ and ‘highest-level sanctions’ against Cuba over Venezuela
グアイドらの野党勢力は、ベネズエラの防衛大臣Vladimir Padrino López、ベネズエラの最高裁判所長官、あともう1人の3人の重要人物に接触していて、この人たちが野党側に寝返ると思っていたんじゃないか、ということらしい。
が、実際には全然そんなことは起こらず、騒ぎの中で大臣のPadrinoはマドゥロ政権への忠誠を示していた。
で、別の取材では、ベネズエラ政府は野党が軍の幹部に接触していることを知っていて、むしろ接触を止めさせなかったじゃないか、との発言も出ている。
It seemed like Maduro’s ouster from Venezuela was imminent. What went wrong?
https://www.mcclatchydc.com/news/nation-world/world/article229875474.html#storylink=cpy
つまり、グアイドらはあやふやな「確証」を得て、自信を持って、今日がマドゥロの最後だとか発言し、ネット上には大量のこの手のグアイド側のプロパガンダを支援する発言が出回っていた。
が、マドゥロの方はそんなことは何もないと確証していた、といったところか。つまり、グアイド側がマドゥロ側に釣られた可能性もあるし(大臣がどれだけ確証を与えていたかによる)、野党側が単なる思い込みで突っ走った可能性もある。
ということで、これは壮絶な失敗なわけだけど、ボルトンみたいな人はこれで考え直すような人ではないから、ますますデマを流して話を混乱させているし、今後もやるでしょう。
例えば、あの大臣は本当は確証していた、裏切りなんだという記事をじゃんじゃん書いて疑心暗鬼を呼ぶとか、最高裁判所の長官もこれをもらって、あのポストに釣られみたいなデマ記事を書き出すことはあるでしょう。今般も、途中で何度もボルトンやポンペオが嘘情報を流して、話を膨らませていた。
また、失敗直後から、ボルトンだったかポンペオだったかが、マドゥロは本当はキューバに逃げ出すつもりだったがロシアに止められた、というデマも流していた。
トランプは、これはキューバが悪いのだ、キューバへの制裁を完全にすると発言している。完全な制裁ってどんな制裁なんだろうかとまず疑問に思うところだが、そのうち、お前には生きている権利はないとか言い出しそう。
Trump threatens 'full' embargo on Cuba over Venezuela security support
こんな政権があるってことがまず信じられないが、よく考えればオバマ政権も、ウクライナの騒乱全体で嘘ばっかりついていたので、もはやこれが米政権のノーマルなのか?
この手の汚いことをやり続けていくと、ベネズエラ内のアメリカに対する評価はただ下がりとなるだけでなく、アメリカ国内の現政権のベネズエラ政策に対する批判も強くなる。
強くなるといっても、なんせ現状は民主党がタカ派になっているから表だっての野党からの批判にはならない。特に、ポンペオたちが、これはロシアが裏にいる、ロシアがどうした、ロシアの支持で云々とロシアをからませてくると、猶更民主党がタカ派になる。
が、しかし、一般人でトランプに期待を寄せていた派は、エバンジェリカルズ(福音派)以外は次第に冷静になって、この政権もまたオバマと同じだと気付いてきてる。
ボルトン、ポンペオ、エイブラムズだけが悪いとは言えないのは、この件に関してはトランプも積極的にデマを流しているから。
制裁をするからベネズエラの一般人が苦しんでいるという点を無視して、もっともっと苦しめろ! 悪の社会主義者たちが悪いのだ、そうだ、ベネズエラとキューバとニカラグアをやっつけろ! みたいなことを言い出す人たちを、トランプは積極的に煽っている。
トランプが候補者だった時代にこれ以上の介入戦争を止めてほしいと思って支持した層は、呆れていくしかない。
呆れて消沈するだけでなく、よく考えましょう、自分もトランプに期待した一人だがトランプだからという理由で今の政権のやり方を批判しないのは、ジーザス・トランプを信じると言ってるようなもの、間違ってます、ベネズエラ人が心配ならまずは制裁と無用な介入を止めさせることです、ということを書き出したブロガーも散見できる。
ということで、トランプ政権としては、この一件はかなりヤバい一件になる可能性があるんじゃなかろうか。
トランプは、シオニストグループ、特にユダヤグループをバックにつけたから選挙は安心と考えられているけど、そうはいかなくなるケースとなるのかしらと、ちょっと興味深く思ってしまう。
しかし、安倍と一緒でアメリカも有力対抗馬がいない状態。
ということは、デマは誰も止められない。しかしデマはデマなわけで、冷静に見ている人たちは呆れていく。アメリカは自分の退潮を推し進めようとしているとしか思えないが、そもそも政権はアメリカの立場を維持しようというためにあるのであって、一般アメリカ人のためにあるわけないじゃん、と考えると別にこれでいいのかという気もする。最初からトランプの政策は大金持ち集団にとっては特に悪いことはない。借金は無限にできるのだとかいう理論を振りまいてるし。