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メルケル、モスクワ訪問

2021-08-21 16:47:06 | アジア情勢複雑怪奇
金曜日、ドイツの首相メルケルはモスクワを訪問した。

メルケルは9月に引退するので、これが最後の、おわかれのモスクワ訪問になる。

そういうことだからなのか、ワーキング訪問の時の場所じゃなくて、クレムリン宮殿でメルケルを迎えていた。



メルケル婆はプーチンからお花なんかももらっていた。

 


さらに、会談前には、メルケルはモスクワの無名戦士の墓に行って献花をしていた。

Merkel lays flowers at Tomb of the Unknown Soldier in Moscow


そうして席についた、報道陣を前にした最初のご挨拶で、メルケルは、ほとんど唐突に、

私はもちろん、80年前、ナチ・ドイツがソ連を攻撃したことに言及しないわけにはいきません。そして私は無名戦士の墓にリースをささげることで、この機会を名誉なものにしました。

私たちは様々な点で異なっていますが、お互いに話をすることは良いことだと考えていますし、私たちは連絡しあって、話しを続けるつもりです

I certainly cannot fail to mention that 80 years ago Nazi Germany attacked the Soviet Union, and I have just honoured this occasion by laying a wreath at the Tomb of the Unknown Soldier.

Even though we have our differences, I think it is a good thing that we talk to each other and we intend to keep in touch and continue talking.

Meeting with Federal Chancellor of Germany Angela Merkel


とかいう文言を挟み込んでいた。

この、我々には差異がある、しかし対話し続けることが大事なのだ、として、チャネルを閉じないでいることの強調は、ロシアに関してメルケル政権がキープし続けた姿勢ですね。

というと、冷戦を作ろうとしている勢力に対してメルケルが積極的に、果敢に抗していたのだ、みたいな解釈がリベラル方面から出そうですが、成り行きから考えると、そういうことじゃなくて、むしろ、この姿勢を堅持することが、というか、それだけが、対ロ関係でドイツが利益を得られる道だ、とギリギリのところでメルケルは理解して、それが故に、それがわからないドイツ国民を前におろおろしている、いうのが本当のところだと思う。

そう、ここ数年のモスクワにおけるメルケルの態度というのは、おろおろしているという表現がぴったりだと思う。

メルケル政権とは、というよりベルリンの壁崩壊以降のドイツの政権とは、結局のところ、ウクライナを襲ったことでもわかる通り、ナチその2だった。ユーゴ紛争を忘れてもらっては困るわけですよ。


■ キエフに何か言えよ

そして、ウクライナは無茶苦茶のままで、クーデター後のポロシェンコ政権も、ゼレンスキー政権も、大多数のウクライナ国民の苦境をよそに、ロシアと戦う姿勢を示して気勢をあげている。

今般、プーチンは、このように言う。

ウクライナの指導層は状況を平和的に解決するという考えを捨てる決心をしたようです。この状況にあっては、私たちは、再び、ドイツ首相に、近々キエフを訪問されるそうなので、ウクライナに、約束したことの実施について影響力を行使していいただきたいとお願いします

"It looks like that Ukraine’s leadership has decided to abandon the idea of peaceful settlement of the situation. In this context, we once again ask Mrs Chancellor, in view of her upcoming visit to Kiev, to exercise influence on the Ukrainian side in terms of the implementation of its commitments," he said. 


是非ともお願いしたいものですよ、ほんとに。


■ 妄想世界にいるドイツ

だがしかし、本国ドイツでは、ロシアがクリミアを併合した、と脈絡なしで語るのが通例になっているので、とうていウクライナを紛争化した問題そのものを取り上げる環境はない。

それどころか、事ここに及んで、ナワリヌイ がどうしたこうしたとかまだ言ってる始末。

あのお兄ちゃんを掴んだことで、再び、ドイツが上に立ってロシアに対し、これもダメ、あれもダメ、あんたらの政治機構はどうしたこうした、言論の自由がないとかなんとか騒ぐのがドイツの言論界の主流になってる。

率直にいって、ドイツの言論界とロシアの言論界はもはや比較のしようがないほどロシアが上でしょう。情報機関の質も比べられない。

なぜなら、ロシアは、現実に即して分析したり、考えたりしている人たちが大多数であるのに対して、ドイツの言論人は、妄想世界をこねくりまわしているから。この基盤を変えない限り、何をやってもダメな洞察しか出ない。


■ ドイツ国内

メルケル以降のドイツはどうなるのか、まったく不明な状況だけど、現状は、アフガニスタンの敗走事件を受けて、メルケルが批判されている模様。

「アフガニスタンの冒険」は911をきっかけとして、NATOが意気揚々と出兵して、そこを橋頭保にしてユーラシアを支配する、みたいな恰好だった。

で、ドイツは国内が反対だったのにアフガニスタンに出兵して、59人が亡くなって、そこでさらに反対が強まっていた。アフガニスタンの民主化などというのは、多分誰も一度も本気にしたことはないのではなかろうか。むしろ、ナチ時代にロシアの南部でイスラム系を鼓舞して反ソ連の部隊を編成していたことを思い出した人たちなどは不気味に思っただろう。したがって、この取り組み自体がドイツ国民にとっては不評中の不評だった。

そして今日の「アフガニスタンの冒険」の失敗を受けて、ドイツでは外相が、状況認識が間違っていたという認識を示している模様だし、情報機関BNDもこんなに早くタリバンが首都に来るとは予測していなかったと認めているらしい。

大衆紙BULDなどは、なにかこう、日刊ゲンダイ的にメルケルをこき下ろしている風。



■ NATOの失敗、米の失敗

で、私としては、今般の「アフガニスタンの冒険」の失敗は、米にとっての失敗でもあるけど、でも、NATOにとっての失敗の方がよほど大きく、そしてこっちはほぼ取り返しがつかないだろうと思って見たりもしてる。

つまり、アメは、「トロイカ+」体制、すなわち、アメリカ、ロシア、中国の3つと、+でパキスタンを加えた会議をしつつき、アフガニスタンからの撤退事業をしている。

Troika Plus to meet on Afghanistan in Qatar next month


「トロイカ+」にはパキスタン以外にイランも加えて、イランにも責任をもたせるべき、みたいなことも聞かれる。

そして、イランは、正式に上海協力機構のメンバーになると先ごろロシアのパトルシェフ安全保障会議議長が語っていた。

つまり、上海協力機構が中心になっている。だけど、そうはいっても、イラン、パキスタンの向こうの湾岸地区は英米のシマだし、アフガニスタンの内部の構成要素にはこれらのアラブ世界との関わりが深い人たちが常に存在する。

タリバンが革命政権ならそれらと戦争をして潰して終わりにする、という線もあり得るわけだけど、包括的な政権を目指す、という趣旨を語っているところを見ても、闘争の果ての勝利を目指すという設計ではない。というか、こういう闘争で決するやり方ではうまくいかないことを身に染みてわかった地域だとも言えるでしょう。また、革命方式は犠牲が大きすぎるのは世の常。

このへんは、シリアも似てる。アルカイダの傭兵を潰しても、その親方がいる限り終わらない。だからず~っと会議が続いて地道に物事が進んでいるって感じ。

そこから、これら湾岸地区と英米の代表としてアメリカがいる、みたいな恰好になっているんじゃなかろうか。

つまり、別の言い方をすれば、NATOという組織体はそこから落ちてる。

そして、ふと思えば、この様子は、連合軍再びじゃないのか、とさえ見える。そこから考えると、不実のアルビオンことUKが、突如「大西洋憲章」とか言い出したのは、ビッグ3(米中ロ)体制を前に、我々はアメリカ様についていくという宣言をした、みたいな恰好か。

まぁ、NATOはそもそもナチの延長だし、東方拡大路線を取って以降のそれは隠れもないナチといった趣なので、彼らが振り落とされていくことは、多くの国と地域にとって良いことでしょう。おおざっぱにいって、ダボス+EUあたりが糞の巣窟。

そうなるとここからの問題は、トルーマンは来るのか、でしょうか。でも、アメリカには往時のようなびっくりネタはないし、アメリカ総体としてはそうする利益もない。


■ オマケ

NATO関係者、現在のところ12000人の退避完了。まだまだいるので今後どうするのか結構見もの。

NATO says about 12,000 people evacuated from Afghanistan since August 15 - Reuters

ロシア領内を通過しないでヨーロッパに向かうって、かなり大変な作業。トルクメニスタンが通過を認めたという記事があったので(TASS)、多分、ウズベキスタン→トルクメニスタン→カスピ海→アゼルバイジャン→(アルメニア)→グルジア→黒海→EU領土、と行くんだろうか。

トルクメニスタンが通過させないと言い出したら、イランに協力してもらってトルコ→黒海→EU領土。イランがふざけるな、とか言い出したらこれもダメ。

かなり大変なこと。



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2 コメント

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アフガン解放のタイミングでモスクワ詣で! (ローレライ)
2021-08-21 20:13:21
ヨーロッパにとってはアルジェリア解放並みのインパクトのアフガン解放のタイミングでのモスクワ詣でのドイツ首相!
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ドイツすごいね (luna)
2021-08-22 16:13:28
https://jp.sputniknews.com/europe/202108218639695/
ドイツ政府はアフガニスタンに残しているワイン340本とビール樽6万5000個を回収するため、追加の輸送機を発注していたことがビルド紙の報道で明らかになった。
さすがドイツ すごいね!!!
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