昨年4月11日にイギリスのエクアドル大使館からロンドン警視庁によって引きずり出されたジュリアン・アサンジは現在刑務所の中。
アサンジ、エクアドル大使館から引きずり出される
ヒラリー登場:アサンジ逮捕を喜ぶ
そして、イギリスはアメリカの要請に応じてアサンジを犯人引き渡し条約に応じて引き渡せと言っている。
その件でロンドンで数日間にわたって公聴会が行われていた。Craig Murrayなど当初から関係していた人のみならず、今回はペンタゴン・ペーパーズのダニエル・エルズバーグが高齢を押して出席していた。
ダニエル・エルズバーグという名を聞いて、若き日のことを思い出す人は多数いるだろうと思うが声援が聞こえない。
継続的に追っているのは、亡くなったロバート・パーリーの意思を継いで現存するコンソーシアムニュースなどか。
https://consortiumnews.com/
その代りに、それらダニエル・エルズバーグを尊敬する人たちが忌み嫌っているであろうFoxニュースのタッカー・カールトンが3月にピンク・フロイドのロジャー・ウォータースを番組に呼んで話を聞いたことがある。
この動画。
Pink Floyd's Roger Waters: Assange being used as a warning to journalists
https://www.youtube.com/watch?v=qOJFFZQTl_U
で、そんな中、数日前にトランプ政権が、アサンジがDNCメールのソースを明らかにすることを条件に恩赦を提案していた、というニュースが出回った。
Trump offered Julian Assange a PARDON deal in return for 2016 DNC emails source disclosure, lawyer says
https://www.rt.com/news/501039-trump-assange-pardon-dnc-2016/
どこまで本当の話なのか今いちよくわからないところはあるんだけど、本当だとしたらトランプはホントに汚い奴だなというしかない。
なぜなら、かかっているのはそこではないから。
アメリカ(およびその子分のイギリス)の当局者は、アサンジを「Espionage Act」、つまりスパイ行為防止法とか、防諜法といった名前で呼ばれるような法で有罪にしようとしている。
しかし、アサンジはソースではなく、誰かから聞いた話を他者に広めることをしている存在、つまり、他の様々なジャーナリズムと同じことをしている。
ここにおいて、アサンジだけ防諜法違反とすることは、見せしめにしてジャーナリズムを破壊することだという話。
そこで、ソース出せ、そしたらお前を助けるというのは、あかんでしょう。
というか、トランプ政権は本当に根性なしだったわ、ほんと。
例えば、政府を指揮しているんだから、最初から、セス・リッチさんという人の死がとても不審だという訴えがあるので、司法当局は調べをやり直す、などとと言えばよかったじゃないか。そこから芋づる式に上に届く道は多いにあり得る。
そういうことを何一つせずに、2016年には大盛り上がりを見せたクリントン財団とISの問題を、ここまで鎮めてしまったのがトランプ政権だとも言える。
'Trump would not be permitted to win' - Assange interview w/John Pilger (Courtesy Darthmouth Films)
つまり、トランプ政権というのは、後から見た時、何一つ片づけず、やったことといえば、クリントン政権の疑惑を忘れさせ、FRBの世紀の大量緩和策を可能にしたことでした、となるかもしれない。
■ スノーデン
アサンジの公聴会の前に、スノーデンが動画で2時間ぐらいの話していたんだけど、いつものように重要なことを語っている。
Joe Rogan Experience #1536 - Edward Snowden
アサンジのイギリスから米国の引き渡しが完成したらどうなるか
通常、リークの場合、各国は公表者(新聞とか雑誌)を罰するのではなくソース元を罰してきたが(ソース元には国家公務員法違反、みたいな適用可能な法があるケースが多い)、アサンジはメディアだ
アサンジを罰するということは、媒体が何かを探してきて書いたことそのものがespionage(スパイ活動)で罰せられるものとなる
という点を指摘し、こんなことを言っていた。
・・・それはあなたがたみんなの社会を害するし、みんなの子どもたちの将来をダメにする。
何もかも党派的になってしまっている今日の世界で、人々はこのことを忘れている。
It harms your society. It harms your children's future. People forget about this in today's world where everything has become partisan.
私はこの最後の部分、partisanというのが重要だと思った。
partisanを党派的と訳してみたけど、これはいわゆるパルチザンのパルチザン。要するに、あるパーティー(集団、党)を熱烈支持すること、言うことならなんでも正しいという態度、心持のことですね。そこから、実質的意味として「偏向」と解釈されることもある。
公平かどうか、正しいのか、適切なのか、全体的にどうか、どう評価されるべきか、などというものが後ろに置き去りにされてしまう心性のこと。
こういうのは現在戦争しているというのなら、それもやむを得ないことはあるだろうけど、それでもその戦闘の最中でさえ昨日の行動を評価してみることが大事であることは論を待たない。そうでないとまた同じ過ちを繰り返す。
だから partisanというのは、目標が定まっている短期間の出来事を除けば(例えば、なんでもいいからこの人を当選させるのだ、みたいな)、ほとんどどんな時でもお奨めできない、できれば止めた方がいい態度と言えるのではないかと思う。
で、だからこそ、今現在ステルス帝国は、中露との冷戦をことさら演出しているのではないのか。
なんでかというと、アサンジだのスノーデンの言うことはみんな「敵」の言明だと言える雰囲気を作れるから。
いいか、これはアメリカの安全保障にとって重要なのだ、で全部締めきっちゃうってこと。
アメリカ人を1つの党に入れてしまおうという行動と言ってもいい。
■ 私たちはちょっと知ってるの
で、こうやっていくとどうなるのか。
アメリカの大日本帝国化かって感じだろうか。
大日本帝国はそもそもの作りが体制批判を許さない宗教カルト体制を指向するよう設計されている上に、議会すら大政翼賛会にした。全員1つの党に入っていて、外国人の言うことはみんな敵の謀略だみたいなメンタリティを仕込まれた。
(そして、一般人は信じるしか生きる道がないが、要路にいる人たちは要領よく逃亡した)
結果はどうなったかというと、敗戦したにもかかわらず、多くの人は、率直に「ほっとした」という感想を残した。最近の人が何を言おうが、昭和時代を知っている人にとって到底覆せない事実はこれだ。
どうみても明るい展望はないっすよ、この道には。
■ 参考記事
アサンジュ:ISとクリントン財団の金主は重なる(本編)
マジでそれだと思いますね。
liberalであるからこそ、立論や妥当性で競うことができた。
党派的になってしまえばそれは封建的とか、領主様はオールマイティ世界に戻るようなもの。
「リベラル」はあってもlibertyはないというのは深刻な事態。