奇妙な記事だなぁと思ってクリップしておく。
プーチン大統領来日「慎重に」…米国務副長官
読売新聞 10月6日(火)10時24分配信
http://headlines.yahoo.co.jp/hl?a=20151006-00050000-yom-pol
ブリンケン米国務副長官は5日、東京の米国大使館で読売新聞などと会見し、ロシアのプーチン大統領の来日について「(ロシアとは)まだ通常の外交をやるべき時ではない」と述べ、早期実現には慎重であるべきだとの考えを示した。
見出しだけ見ると何かとっても正式にアメリカから言われた~みたいに見えるけど、読売新聞がそういうことを言いそうな人を求めて東京の米国大使館に言って言質を取ってきて記事にした、ってものですよねこれ。
ということは、どういう意図があるのか。
- 日本国政府内に日露間の平和条約締結に向けて常ならぬ積極的な策があり、かつ、ロシアも前向きだ
- ロシア側に交渉の意思がない=安倍外交の失敗だ → 安倍は対露カードを使う国士なのだと宣伝してきた手前それでは困る。そうだ、アメリカに悪者になってもらおう。これはアメリカがそうさせたのだと国民に見せよう
のどちらかではなかろうか。
出発点がまったく逆。
私は、プーチンがチタを訪問したという点を非常に重く見てる。
これこれ。
プーチン、チタでWWII終結記念式典
チタは日本が作った満州国とバイカル湖の中間ぐらいにあるところで、ここはロシア革命後、シベリア出兵で日本が占領して、その後極東共和国になって、ソ連本体に吸収という経緯になったところ。
つまり、前にも書いた通り、歴史的な部分を少なくとも現在のような状態よりも改善しない限り、日露間で平和条約交渉はない、という意味じゃないのかなと思ってる。
「北方領土問題は協議しなかった」問題
■ いずれにしても、日本にも問題はある
ロシアとの交渉の問題を除いても、私はいずれにしても日本にはいろんな問題があって、それらの多くは結局のところ過去に対する認識問題に帰結する、少なくとも非常に大きな影響を与える可能性のある水源がそこにある、と思っている。
結局、まず第一には、敗戦の否認問題なんだわなぁとあらためて、白井聡さん、利口な人ですねと思わざるを得ない。
永続敗戦論――戦後日本の核心 (atプラス叢書04) | |
白井 聡 | |
太田出版 |
私は正直、なんか、そんな構造的な解明って役にたつのかぁみたいに当初懐疑的で、ちょっと受容に躊躇していた口だったんだけど、あれから2年ぐらいでしょうか、折に触れ考えてみるに、この論は有効だと思うようになりました。
ただ、前にもちょっと書いたけど、氏にしてもやっぱり日本のエリートなおにいちゃんなわけだから、いろいろお行儀よく書いてるとは思った。それは冷戦をほぐさないというある種のお約束が守られていることが代表例かな。
で、次が、冷戦とは何か論で、同時に、明治維新とは何か論が出てくれば、だいたいほぐれてくるんじゃないかと思う。早くして! 日本ちゃんのライフはゼロよ!
「戦後」の墓碑銘 | |
白井 聡 | |
金曜日 |
日米開戦の正体――なぜ真珠湾攻撃という道を歩んだのか | |
孫崎 享 | |
祥伝社 |
・連合国悪玉論を作って彼らこそ悪だ、にしちゃった。
・これは、国連無視ナンバー1国家のアメリカにも都合がよかった。(アメリカもコミュニストに騙された論はここで効く)
・共謀せぬ共謀が成り立ち、日本は妙な世界観を保持したままでいる。
こういう感じですね。
しかしこれを日本社会が筋道通り受け止めることは短時日にはもはや不可能。1世代はかかる。
そんなことならアメリカになっちゃう方が楽だ、でしょうか。不沈空母論時代に既にそうだったのかもしれないですが。