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プーチン訪日:日本の合意形成スキームを表示するイベントだったかも

2016-12-17 19:23:22 | 太平洋情勢乱雑怪奇

昨日、プーチンの2日間の滞在のサマリーみたいなのを7時のNHkで見た。

私は前に書いた通り日露国交正常化の第一歩だと思っているので、総体としては概ね歓迎するけど、それはそれとして、日本ってとにかく、外国の大物が来たら、日本が好きです、素晴らしいです、満足しました、と言ってもらって、大物が帰ったら、やれやれとなって忘れちゃうという根深い様式があるよなぁとか思った。で、負けたのか勝ったので騒ぐ人と、やっぱり日本は素晴らしいで安心する人がいる、と。意味がないけどここまで様式。

一方、RTの記者がプーチン一行と同行していたらしく、ロシアの視点から見た手短なレポートを作っていた。

Putin, Abe agree on joint Russia-Japan activities on Kuril Islands
Published time: 15 Dec, 2016 20:40
Edited time: 15 Dec, 2016 20:42
https://www.rt.com/news/370452-putin-visits-japan-talks/

 

親善的なこもごもの紹介の後、日本には多数の米軍基地があって、アメリカとの関係も強いが、それはそれでいつもスムースとはいかない、例えばTPP、例えば米軍関係者の暴行事件、オスプレイと最近の映像と関係者の手短なコメントを紹介。

で、米軍基地があることへの反応を2人紹介していて、一人は、

大事ですよ、中国とかロシアから守ってくれてるんですから

といい、もう一人は、こんなに数多くは要らないと思う、みたいなことを言っていた。

 

おおそこそこ重要と思ったのは「米軍基地は大事ですよ、中国やロシアから守ってくれるんだから」。これって、日本のマジョリティーの発想でしょ? 私がどう思うか関係なく。

で、この発想を持った人間がマジョリティーのところで、日米安保条約というのは基地内の使用権の問題ではなく、日本全土どこでも基地にできる、行動できるという条約なのだということを考えれば、領土問題とはすなわちロシアvsアメリカの、またはロシアvs日米の安全保障の問題だと考えないわけにはいかないわけです。

それを、日本はこれまでメディアで報道したことありました? なくはないだろうけど、ほとんど稀ではあるまいか。

 

ということで、今回プーチンは折にふれて、歴史的事情、安保と日露間の様々な問題をぶちまけていったので、実のところ日本の私たちは日本の現状とはどういう立ち位置なのかを見ることになった、って感じ。

ラブロフ外相はわざわざ、ミサイル防衛に対する日本の参加はロシアにとって懸念材料だと主張している。これも、この際日本国民にお知らせしようだったのかなと思った。でも日本国内のバカマスコミはすぐ忘れると思うし、ええやんもう、プーチンさん領土返してくれへんから嫌い、みたいな反応で終わりの人が多数だとは思うけど。

 

で、結局、日露の問題というのは、これぞまさに日米合同委員会案件なわけですよね(笑)。日本の国軍たる米軍と日本の高級官僚の集まりであるところの日米合同委員会がどう言っているのかこそ、ロシアも、そしてその他多くの外国も知りたいところでしょう。

プーチンの訪露をはさんだ一連の動きは、日本では日本国民が選んだ政治家はどのぐらいまで動ける、判断できるものなのか、または、日本では大きな問題において日本の一般大衆、日本のエスタブリッシュメント、その意志執行者としての日本政府の合意形成はどのように行われるのか、というのを測るためのイベントだった、みたいな感じがする。

日米合同委員会、報ステに載る

 

■ 日米合同員会とメディアの「独立」

で、ありていに言って、日米合同員会の一般的な結論は決まってる。日本を、中国、ロシアと上手くやっていけない国にしておけば、頼るのはアメリカだけとなるから仕事がしやすい、安泰だ、これでいい、でしょう。その中で、都合によって時期を限って、分野を限って「友好」してもよい、と。

いずれ日本を中国かロシアとぶつけて、その仲介者として存在するのが極東米軍にとっては一番おいしいわけだし。

だから、日本のバカメディアというのはここの付属品なんでしょうね。右だの左だのの区分は実に便宜的、表層的なもので、その時々で騒ぐ担当に指名されたところが騒いで話を作っていく、というのが慣行。

それに対してNHKは政権の影響を強く受けるのが一般的な上に、最近は特にそうなので、従って「いまさら聞けない北方領土」が出てきたり、報道も基本的には親善を壊さないという配慮があったように見えた。常日頃のことがありますからNHKを庇う気は一切ないですが、構造的にみれば、国営メディア vs 民間主要メディアというのは現在見え隠れする一つのテーマだと思う。

メディアは独立しているべきだ

という意味は、

メディアは(国家から)独立しているべきだ、しかし、国家以外の主体に付属してもかまわない、

というのが現状ですね。中央銀行の仕組みも一緒。

 

■ 日本と日本人

というわけで、まぁ日本というのは、日米または日米+αの支配層の持ち物であって、日本国民のそれではないというのが次第次第に見えてきたわけだけど、であれば、日本人としてこのままでいいんだろうか、であり、このまま行けるものなのか、というのが今日私たちが抱えている問いなんだろうとは思う。

これってもう、いつの話だよという感じ。で、現在の多くの日本人は、それは1945年に敗戦したからこうなった、とすぐに思うんだと思うけど、それは問題の矮小化だと私は思う。

そもそも戦前の活動からして、日本人のための日本の話とは相当にかけ離れている。何してまんねん、としか思えないようなことをしてた。で、国内的にはそれは軍部とそれに煽られて領土を拡張すればすべてうまく行くという夢を求めた人の妄想物語になるんだけど、それだけですべて片づけるのは間違いでしょう。

だからどうすりゃいいんだ、と言えば、簡単な解決法はないし、多くの人は今の具合が続けばそれでいいと思っているんだから、国内または自発的には変化のきっかけも予兆もないと私は思う。

 

むしろ事情はもっと悪い。日本が抱えているもう一つの問題は、高齢化時代だという点ですね。しかも、現状から次の20年ぐらいまでの高齢者はここまでの日本でそう悪くない世代を生きた高齢者なので、自分たちが変化しなければならないなんて思ってない。むしろ、日本は素晴らしい、これでいいんだ、というのが基盤の感情だと思うし、外国は日本を見習えとか無邪気に言ってみたりする。部分的にはそう思うところもありますが、とうてい普遍スキームじゃないですよ、日本は。

ということは、人口動態からいえば「これは幸いですと思ったわけです」的な冒険主義的な子供が育つ可能性は低くなる一方、妙に高飛車な誤解に満ちた子供たちが育つ可能性も一方にある、ってことですかね。ガラパゴス・ハッピー・チルドレンみたいな。

50年後の日本あるいは日本人はどんな人たちになっているんだろう。わかりません。

アメリカ、ロシアがなんにつけ妙に前向きな人たちが登場するのは、主権のある国家だからすなわち独立的に思考するよう推進されるというだけでなく、人口動態の問題も小さくないのかもしれない。

というわけで、まぁぼちぼち社会を壊さない程度に適宜自覚的に離反しながら、前へ前へと展望を繋ぐべき行動する、ってのが最適解となるんでしょう。置文伝説派ですからあせってみても始まらない。

 

■ オマケ:合同委員会の弱点

好例の妄想セクションでございますが、なんかこう、トランプの影にはロックフェラーがいるだろう、だからキッシンジャーが出て来たのだ、みたいな話をここで重ね合わせて考えるべきなのかな、と。

このおじいさんの最近の談話からは、もう大国同士は戦争はできないのだと思い知ることが大事、みたいな、平和的バランスオブパワーっぽい考えが強く出ている。まぁもともとバランスオブパワー派の人ですが。

ということは、日本を中国かロシアにぶつけようみたいな、ネオコン戦略は否定されるべき、ということになる。

さらに、キッシンジャーに敬意を払っているらしいトランプは、ロシアと戦争しないと叫び続けているようなもので、アメリカ国民も少数ではなく一定数は確実にこれを知ってむしろ積極的に支持した。

しかも、つい数日前には、ついに、プーチンと非常に親しいと言われているエクソンCEOを国務長官に指名したばかり。

と考えてくると、第二次世界大戦終結あたりから「冷戦」をはさんでかなり強権的に作った体制を修正して、もっと長続きするような平和的バランス・オブ・パワー体制に移行しようとするのなら、極東のあり方を整理しようと考える人たちがいても不思議ではない。

プーチンが、最後の記者会見でダレス国務長官に言及した(いわゆるダレスの恫喝の話)のは、今日的には結構意味があると思った。現在の体制はこの人たちが作った体制だから。(スクリプトの最後の方

で、その現れとして、米の下っ端扱いだったフィリピンが中国との関係を改善し、ロシアには歯をむくばかりだった日本にも現実を見せ、みたいな感じなのかな、と。ということは、次は朝鮮と台湾でしょうね。

さてここに問題がある。

日本ったら頑固に極東米軍の下僕と化してしまって、日米合同委員会、いいじゃないですか便利で、みたいなふざけた人々になってる(笑)が、日本の敗戦を機にばらけたり、ペンディングになっている問題を、日本国民の民主的な意志を反映させずに決められるものなのか、ってのは非常に大きな問題ではなかろうか。

日米合同委員会には日本国民の民主的な意思を反映させる仕組みはゼロで、それが故に効率的なのだが、果たしてそれでやっていけるものなのか?

日本では、いいよ、となるんだが(笑)、アメリカは各種制度は腐っても、根幹は、一人ひとりの私たちの国アメリカ。all men are created equalの私たちのアメリカであるという根幹に揺るぎはないので、人々による統治、民主主義を推進せず、積極的にシークレットな強権主義を擁護するかのような処置としての日米合同委員会(というか実際官僚は帝国日本の解体を逃れたので今いるのはその残滓、そこが極東米軍と合体、ですからね)を許し続けるというのは全くOKでない。つか、こんなことになってるとはアメリカ人はほぼ知らない。知ったらなんていうんだろう?

元々、おおざっぱにいえば米国務省系統は、日本が極東米軍による私的支配みたいなことになっているのを遺憾としている、という話ともつながる。

ということで、多分、今って、あんまり刺激しない形で日本にも少しは目を覚ましてもらうしかないとか思われているんじゃなかろうか。プーチンのあの長々としたインタビューはそのための問題点整理と思えば納得がいく。

プーチンのインタビューは読売が行ったインタビューなわけですからね。そりゃやっぱりCIAに背いた、ではないでしょう。現在のアメリカで、諜報、情報、軍、治安機関を横断して、ネオコン的な人たちとそうでない人たちとの間で暗闘があるようだ、という話と重ねると、そうでない人たちによって承認されたか、はたまた、むしろ積極的に行け、と言われたのでは?

日本人、関係するアメリカ人の政治的是正見解主義はプーチンには関係ないからいろいろ言えちゃう。これは今年の2月にドイツ大衆紙ビルトが行った長いインタビューを思い出させる。プーチンはいわゆる忌憚のない意見をアーカイブから出して来た様々なエビデンス付きで話してた。

下僕っていいわよ、みたいな呑気な日本に、ちょっとは独立的になれよ、昔の記録とか出せよ、お前、いい加減整理しろよ、という声がかかっている、と。こんな感じ?

もちろん日本のエスタブリッシュメントはやりたくない。

で、それができなければ、まぁお前は仕方ないからずっと格下な、ってなるんだと思う。

それならそれでいいやと成っちゃうのが日本だってのがまたまた問題なんだけど(あはは)、多分、上の推測が成り立つのであれば、今後も、どうでもとにかく目を覚ませ的なアプローチが来ると思う。

下記の広範で書いた政治的是正知識万能主義はもうもたないだろう、ってなことと話もあうよね。

宴の始末(23) アレッポ人道支援と政治的是正知識体制の解体

 

ザックリいえば、アメリカはアメリカで長期的なことを考えたら、もうちょっと民主的に、もうちょっとオープンに、バカみたいなハンドラー抜きで日本と付き合いたいんだと思うよ。俺も変わるから、お前も変われよ、な、みたいな。

 

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「真珠湾への道は日露戦争での“勝利”から始まっています」

 


 

日本はなぜ、「基地」と「原発」を止められないのか
矢部 宏治
集英社インターナショナル

 

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集英社インターナショナル

 


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6 コメント

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『占領下日本』にプーチンの風穴 (ローレライ)
2016-12-18 06:11:01
『占領下日本』の『ガラパゴス空間』の野党がトランプとか『アメリカ共和国』なら『占領下日本』にプーチンの風穴が空けられたのが日露外交。
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NHKの中継 (石井)
2016-12-18 07:06:24
暇で偶々記者会見の模様NHK の中継で見ていました。例のダレス云々の件、同時通訳者が黙ってしまい、プーチンの声も入らない状況で何の事か全く分かりませんでした。後でロシアのニュースで理解できましたが、あれは通訳者の能力の問題か、それとも彼女が「上級国民様」のご意向を慮ったのか気になりました。それにしても、プーチンの発言は、1年前の国連演説の「あんたら何をやらかしたのか分かってんのか」以来、アメリカに関して直裁的な表現が増え分かり易くなりました。
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ネオコンとオリガーキの線 (蔵権)
2016-12-18 11:06:09
ネイジマコフ氏は、ロシアのオリガルヒ(新興財閥)の一部は自分たちに都合のいい経済的な恩典を受け取る代わりに島を引き渡す考えに同意を示していると指摘している。しかもオリガルヒらにとっては最も魅力的なのは日本の極東への投資ではなく、巨大なエネルギー協力のプロジェクト。(「ナーシャ・ヴェルシヤ」紙、「クリルの妥協」、グルーバル社会運動研究所の国際政治分析センターのミハイル・ネイジマコフ所長
https://jp.sputniknews.com/russia/201611022966682/

んで、世耕と交渉していたウリュカエフの逮捕に繋がってくると。
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プーチンの風穴 (ブログ主)
2016-12-18 14:55:30
ローレライさん、

『ガラパゴス空間』にプーチンの風穴って素晴らしい言い方ですね。まさにそれですよ。
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ダレス (ブログ主)
2016-12-18 14:59:34
石井さん、

素晴らしいフォローありがとうございます。
へ~、ダレスと言わなかったんですね。まぁ咄嗟に言葉がでなかった通訳者のミスという線も捨てがたいですが。

いずれにしてもプーチンは言及したので、産経の「要旨」では一応ダレス国務長官という名はありました。この要旨はしかしまた別の「ミス」があったので、後で何か書く予定です。

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オリガルヒの存在 (ブログ主)
2016-12-18 15:04:51
蔵権さん、

どうもどうも。ナイスなリンクありがとうございます。

日本の右派の中に紛れ込んでいる発言者の一派の狙いはオリガルヒがらみの金だな、と私はずっと思ってみてます。

で、島を取ったら安保村もうれしい、というわけで右派内で利益が合致する、と。

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