NATO東方拡大を止めろとロシアが宣言して以来、にわかに、ロシアがウクライナと戦争する騒ぎが欧米メディアによって作られている。日本でも、各紙が勝手に書いてる。なんの根拠もなく。
で、アメリカにとってのベストプランは、ウクライナがちょっかいをかけてロシアが、シリアとかアブハジアでやったように前線の軍事施設をぶっ叩くというシナリオかいな、など思ってみる。これなら米兵を出す必要はないので、自分は強い俺様としてのパフォーマンスをして、満身の力を込めてロシアをなじる。
どうしてかというと、こうなる。
ロシアがウクライナに侵攻したら、緑の党がパイプラインを遮断してドイツ経済は自殺。バカは死ななきゃなおらない。
— 池田信夫 (@ikedanob) January 20, 2022
[FT]ドイツ連立政権、ロシアからのガス管巡り亀裂: 日本経済新聞 https://t.co/01Xx82mS5w
大人のネトウヨ池田さんは、温暖化だの炭素化だのをまき散らしたことを念頭に言ってるんだと思うけど、結果的にはどうでも同じだと思う。
で、上で書いたような状況というのは、実際には軍事紛争として小規模なら、そもそもウクライナ人とロシア人という区別できないような人たちの話なんだから、外野はうるさく言わずに適当にいなして当事者同士で終わらせることもできる。(畢竟、それがミンスク合意)
だがしかし、ここに馬鹿がいる(笑)。それは西側メディア。そしてそれに同期しちゃう西側の各国政府、世論。
ロシア軍がウクライナの端っこのロシア寄りのどこかで軍事施設を壊したことぐらいでも、物凄い騒ぎをするは必定。何もなくてもこの騒ぎなんだから。
すると、アメリカは制裁だ、物凄い制裁だ、とかねてからいっている通りにこぶしをふりあげる。そして、いつものように(笑)、自分がロシアから重油を始めとする原油を買っていたり、ロケットエンジンやらある種の金属を買っていたりするところは無視して、子分たちには、ロシアと取引などまかりならんと騒ぐ。
カナダを除く外国からの石油@アメリカ。メキシコ、サウジ、ロシアが三つ巴で、現在ロシアがトップランナー(白線)。
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(ちなみに、量の問題よりも質の問題があるからこの売買は続くと言われている。石油って1種類じゃない。燃料だけのものでもない)
そして、よせばいいのに、EUは、そのアメリカのお触れを受けて、同盟なんだから仕方がない、といって追随する。
するとヨーロッパのエネルギー政策はぐじゃぐじゃになる。
これは、アメリカにとってどんなことか?
安保政策的には悲しんで見せるだろうが、経済的には、万歳!! でしょう。ヨーロッパ市場に売れるぞ!だから。LNGは輸出できるし、こうなったら石油もどうだい、これもあれもと売りつける市場がそこにある。ヨーロッパは弱っていくがそれなりに人はいるし相対的に金持ちエリアだから高く売れる。
誰だったかが言ってたけど、アメリカはヨーロッパを昼飯にしようとしているのに、ヨーロッパ人は全然気が付いてない、という状況。
それなのに、ドイツときたらアメリカのネオコン・ナチリベと一緒になって、ロシアの侵略を防ぐべきだとかいう寝言を語っていた。
つい2週間ぐらい前までは、
オピニオン:ドイツはロシアの侵略に立ち向かわねばならない
Opinion: Germany must face up to Russia's aggression
とか、
ロシアでは、ウクライナとの軍事的緊張でえん戦気分
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などという記事がドイツ国営DWに出まくっていた。あきれてスクシャしておいたのが上の記事。厭戦って、侵略する側にはあっても、自国領土を攻撃される側にはないでしょう。ウクライナはロシアなのだ、というのを本当に失念してるんだなと思った。
■ ヨーロッパの失敗
で、どうしてこうなったかといって、そりゃもう2014年2月にウクライナでクーデターなんかしなきゃよかっただけの話なんだけど、そこからもう8年になろうとしているわけですよ。
この間に、ドイツは何をしていたかといえば、結局は、上述のプロパガンダ路線もさることながら、ミンスク合意をキエフに飲ませるという大事な仕事を放棄して、ロシアが悪い、ロシアが悪いの合唱に加わっていたただけ。本当にアホだった。
そもそもミンスク合意は、基本は、ドイツ+フランス+ロシア+ウクライナの4か国の、いわゆるノルマンディー4のフォーマットで決めた。本質部分は、メルケルとプーチンが何時間も話し合って決めた、と言われている。
このへんが2015年2月の記事。
Normandy 4' Ukraine peace talks in Minsk LIVE UPDATES
http://rt.com/news/231327-minsk-peace-talks-updates/
http://rt.com/news/231327-minsk-peace-talks-updates/
その意味で、フランスとドイツに、しかし、ウクライナに対する近接性と関わり方の深さからいって、ドイツに重大な責任があるものだった。
なのに、それをキエフに遂行させられなかったし、頑張って取り組んだ形跡もない。
ミンスク合意というのは、要するに、クーデター後分裂したウクライナのキエフ政権とドンバスの2地域は話し合って、キエフ政権はネオナチ政権で、ドンバスはそれが嫌なんだからドンバスに高度な自治を与えて、ウクライナは連邦制にしろというもの。ウクライナという国は残るわけだし、当時として一番合理的な判断でしょう。
ミンスク合意をロシアが合意を守らない、とか書いてた記事がこの間多数ありますが、ロシアは合意の当事者ではない。つまり、書いてる人は嘘を書き、読んでる人はもの知らずだから通じてただけ。
無論、英米は、この2人が決めたことを面白く思ってない。そこで徐々にに妨害に入ったが、それは想定内の話でしょう。ロシアは、というかプーチンは、何度もメルケルにチャンスを与えていたと思う。はらわた煮えくり返ってたと思うが。
だがしかし、メルケル婆は全部無駄にして去った。
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(毎度おなじみ、ドイツを壊した3婆)
ということなので、ロシアはドイツに借りはないでしょう。
裏切られ続けたという貸しと、2700万人も人を殺されたが、奴らは昔のままだという不信感はかつてないほど増大したでしょうが。
また、アメリカは、様子見だった時間帯にドイツが動かなくなってからハゲタカの振る舞いになって、ドイツの頭を抑えつけに入ったわけで、ドイツにその気があったらできることはたくさんあった。
ナワルニーだのドーピングだの、プーチンの隠された豪邸だのと、馬鹿みたいな話をヨーロッパ一円に広めていたのは、まったく、阿呆としか言えない行動だった。
やっぱりこう、2014年から15年にかけて、ロシアがウクライナを救いに出ない騒ぎをしていたころ(プーチンはロシア人を裏切ってる、みたいな騒ぎ)、メルケルはプーチンが下ろされるという説を信じたんじゃないかという噂は本当だったんだろうな、など思ってみたりする今日この頃。BND(ドイツ諜報)が、プーチンはロシアのオリガルヒに下ろされると言ったとか言わないとか。
■ 一生懸命であるらしいドイツ
で、今になって、ドイツはこの間モスクワに行った外相がしおらしかったり、ウクライナが武器をくれといったが断わる、といった態度を取ってる。
今日は今日とて、ドイツはウクライナへの武器輸出をしたがるエストニアを 止めた、とか威張ってた。
Germany blocks Estonian arms exports to Ukraine: report
遅いわけですよ。まったく。
で、アメときたら、地中海に空母を出してさらに話を盛り上げている。しかし、アメリカもイギリスもウクライナに直接兵隊を出す気は全然ない。
US carrier heads to surprise NATO wargames
そして、ドイツの首相は、ウクライナでの軍事紛争を阻止すると熱を込めて語っているようだけど、そりゃ別にウクライナの人々の幸福のためじゃなくて、要するに、アメリカに昼飯にされる恐れにようやく気付いたからにすぎない。
German chancellor urges to do everything for averting military escalation over Ukraine
そもそも、ガリシアSSの旗まで上げられて、やめろ!と言えないドイツ人ってのも、相当いかれているというか、正義感の欠如が甚だしいというしかない。
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■ ということで
ということで、ロシア政府がアメリカに対してNATOの東方拡大やめろ、97年以前に戻せ云々と突きつけているので、そこにフォーカスが行くのは当然なんだけど、むしろ、驚き桃の木の結果が待ち受けているかもしれないのに、ほとんど打つ手を失った、実にへんな存在なのはドイツだと思う。
だって、これって、要するに、ヨーロッパの当面見える将来はロシア次第になっていると言っても過言ではないですよ。ここで、ロシアが、とにかくドンバスの正面に英米が持ち込んだ設備は破壊しておいた方がいい、と思ったら別に軍事紛争といったスケールでなく簡単にできるし、それほど悪いこととも思えない(隣国がテロ化する、ゲリラ化するのを防ぐという理由がある)。
やるもやらないもロシア次第と言っていい状況。そして、そうなった時に、こらえて大ごとにしない知恵とか、態度をドイツは持ってるか? 英米メディアと一緒に騒いで、自国の経済政策を台無しにする方向しかないのでは? なんなんだろう、この人たちは、といった感じ。
こんなおばさんたちに、どうして国の行方をまかせたのだろうかと驚く。まあヒトラーに任せた人たちなんだからそもそもそういう国なのか。
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