昨日は、イランのライシ大統領がロシアを訪問して、ロシア議会で演説したりプーチンと会ったりしていた。
日本の新聞はどこも、プーチンとライシさんが会ったところに着目しているようだ。
対米共闘で連携、ロシア・イラン首脳会談
それもいいけど、でも、ロシア下院でスピーチして、今後のロシアとイランとの太い関係を熱心に訴えていたことも非常に重要でしょう。
これはイラン外務省のサイトから。
2022/01/20 - 13:51
Ayatollah Raisi at the State Duma of Russia:
Iran seeks "maximum interaction" with all countries around the world based on increasing formation of a "civilised global community"
ロシアとイランの関係は、歴史的にみればそれほど良好でないし、むしろ悪い時期の方が多いのではないのかな。
ホメイニという右派のおっさんがムジャヒディーンがらみで登場しているわけで、ソ連とイランの関係は良くなかった。そして、アフガニスタンのムジャヒディーンがトルコで訓練されるならイランを通らないわけもない。
また、ナチスの時代はイランはナチ側だったので、ソ連とはもちろん良好でない。そして、去年書いた通り、1941年春先にイランが英に、夏に英ソによって抑えられたというのは1941年からの欧州戦線の展開にとって大変に重要だった。
ということで、今回の事態は、イランがナチ派(西側がしこむ過激派)と手を切っていくという出来事なのかなと思ってみたりもする。
そして、だからこそロシアの議員たち、つまり人々の代表に話しかける必要があったのかな、と。
つまり、ロシア側にはイランは表裏があるから信用ならない、という発想を強く持っている人たちが多いんだと思うわけですよ。実際そうだし(笑)。
現状、どちらかといえば左派のキャンプにいた、ナチみたいなリベラル勢に注目が集まって、そいつらの馬鹿さ加減に腹を立てざるをえないわけだけど、逆にいえば、こっちはだんだん話が明らかになってきた。対して、右の方の膿はまだ出てない。
こんな感じ。(40年ごしのアフガン騒乱:不明点がいろいろ見えた)
このプロットにとって重要なもう1つの柱が、イランのイスラム回帰だったでしょう。あそこが世俗的な政権のままだと、アフガニスタン-イラン-トルコというある種の回廊が完成できない。もとより、アフガニスタンではイラン系種族が強い影響力を持つ。
ホメイニのイラン革命を思い出すと、ある種のナチ残党ネットワークの存在が浮かび上がり、それをほじくるとアル・フサイミーに行きつく。
フサイニーから親ナチネットワークまで
https://blog.goo.ne.jp/deeplyjapan/e/b68ddbb835d588715ab90ecb5a527fd7
ホメイニのイラン革命を思い出すと、ある種のナチ残党ネットワークの存在が浮かび上がり、それをほじくるとアル・フサイミーに行きつく。
フサイニーから親ナチネットワークまで
https://blog.goo.ne.jp/deeplyjapan/e/b68ddbb835d588715ab90ecb5a527fd7
■ 奇妙な夏の出来事
そこで思い出すのが、去年2021年夏の奇妙な出来事。
UKとロシアの外交官が、テヘランで一緒に写真を取って、それがWW IIの英ソによるイラン保障占領時代を思い出させるというので、イランでちょっとした騒ぎになった。
UK and Russia ambassadors anger Iran by restaging WWII image
イランでは、イギリスならまだしも、ロシアもこうなのか、俺たちを馬鹿にしてる、俺たちは英ソに占領されたのだ云々とかいう騒ぎになって、英紙を中心に結構な数の記事が書かれた。
これだけだと、単に外交官たちが並んで写真撮っちゃったという話かな、ということかもしれない。迂闊でした、みたいな。
だがしかし、この話が興味深いのは、この写真は、在イランのロシア大使館がtwitterか何かに投稿したことから表に出たという成り行き。
このBBCの記事でも触れてる。
The Russian embassy posted a photo of the two diplomats recalling a famous picture of the wartime leaders in 1943.
それに対してロシア大使館は、別に傷つけようという意図があったわけではなく、単に、ナチス・ドイツに対する連合国の戦いに敬意を表したまで、と言ってすましてた。
ということで、これは外交官のおふざけがバレましたという話じゃない。いや、写真を撮ったところまでは単に談笑していただけかもしれないが、それを投稿した時点では意図を持ったのではないのか。では何を意図したのか。
ロシアとイランが非常に緊密な関係を築くことになるとして、しかしながら、ロシアはイランのナチ(または過激右派)要素まで是認する気はございません、いかがですか?というロシア外務省からのアプローチなのではないのか、と私は去年の夏から思ってる。これでどうなるのか、釣ってみた、みたいな。
結果、イランではこれは騒ぎにはなったが政治化はされなかったようだった。
■ プロパガンダの機序が壊されてるのか
考えてみるに、これは、
主に在米ポーランド人が振りまいている、
我々はソ連とドイツの両方から攻められた → だから独ソ両方同じように悪い → スターリンもヒトラーも同様に悪い
というプロパガンダと同様にパワフルな中東版プロパガンダに対する苦情なのかな、と思ってみたりもする。
中東版は、土壌が反英なので英が悪いは簡単について、そこにソ連も加わり、それは主にイランの体験から導かれる。
英ソ連の両方が悪い → 英もソ連もユダヤに支配されてる → シオニストが悪い
ってやつ。
そこに、70年代以降は、ホメイニの、ソ連は宗教を否定した悪魔の国、みたいな話が乗っかって、ムジャヒディーン作戦、イスラムの大義がどうしたこうしたを基にした、反シオニストとかいうアイデアが大手をふるい、イランの中の宗教右翼みたいなじーちゃんたちが飼ってる手下が、シオニストは敵だ、見つけ次第殺せとか言い出し、イスラエルが目くじらを立てるという、ある種の出来レースみたいな状況が生まれる。
また、反シオニストという切り口から、ユダヤ人排斥を売り者にしたナチの方が正しかった説が温存され、「ホロコースト」否定の急先鋒だったのは実にイラン。これもまた、シオニストの陰謀なのだ云々という話で、あられもないことを言い募り、ドイツよ目覚めよとかいって、ホロコースト否定論を扇動しまくっていた。
そう、イランには実にまったく困った要素が多分にある。
■ クリーニング
というわけで、ユーラシアではクリーニングが上手く行っているといったところではなかろうか。
ロシアは、多分にカラー革命的だった「ロシア革命」を総括して、うるさいNGOやら売国奴を追い出し、ロシアはロシアだ路線爆走中。
イラン、中国は、ムジャヒディーン・ビジネスから足を洗い、落ち着かせる方向に向かってる。
テロリスト製造ビジネスのトルコがもたもたしているが、ここはヨーロッパとの関係が深すぎるのでそう簡単に混乱は終わらない。
対して、ヨーロッパは絶賛混乱中。
■ 関連記事
「ホロコースト」犠牲者の4割はソ連市民
https://blog.goo.ne.jp/deeplyjapan/e/a1ddea619916eb9a9080b7f4e679ba70
https://blog.goo.ne.jp/deeplyjapan/e/a1ddea619916eb9a9080b7f4e679ba70
1945年1月27日:ソ連赤軍アウシュビッツ解放
■ 現状のまとめ
2020年:the Westのナラティブ管理崩壊年