香港の火付けデモの話で極東が盛り上がっているけど、イランの方はさらにスケールの大きな火付けデモが起きていた。
とはいえ、こっちはやる方も凶暴だが対応する当局者も容赦のない土地柄だったりするので事態が流動的とはいえなそう。要するに政府側の方が強いってことね。
値上げ抗議で死者140人超か ガソリン政策でイラン苦悩
産経ニュース-2019/11/26
とか書くわけですが、商売ができないように経済制裁をかけまくって、社会的混乱を起こして火付けデモを発生させるという米のやり口。これは香港型ではなく中南米型ですね。
ビックピクチャーとしては、ロシア、中国、イランが協力関係を密にしてきたことで、東インド会社残党みたいな西側勢がユーラシアを思うようにコントロールできなくなっている。
だから、西側勢は最初ロシアを、次に中国をがたつかせようとしてる。今回はイランと香港で火をつけた、みたいにも言える。
ただ、香港とイランは別の目的だと思う。香港はむしろ日本がターゲットでは?つまり欧州でいうウクライナ危機と同じで、これをきっかけに日中間に波風を立てる。冷戦だよ、冷戦!というムードを作る。
イランの方は、根本的に解決すべき問題として横たわるのは中東再編、イスラエル・パレスチナ問題。イスラエルは現在混乱中。
で、そんな中、イラン海軍が、近いうちにロシア、中国と合同演習をすると言っているというニュースがイギリスメディア(Daily telegraph)に出て、それがzerohedgeに出て多くが知ることなる、という展開が来てる。
これ自体は、そういえば夏頃こんなことを言っていたので、そこに中国が加わっても驚かない。普通にいるだろう、そのへんにって感じ。
ロシア海軍、イラン海軍、共同軍事演習を予定
さらに、2日前には、CSTOというロシアとその周辺各国との集団安全保障体制の枠組み(ロシア、アルメニア、ベラルーシ、カザフスタン、キルギス、タジキスタンが加盟国)が、首脳サミット、外相サミットを行っていて、そこで、
CSTOはイラン核合意の保全を支援すると声明を出していた。
Post-Soviet security bloc CSTO to help preserve Iranian nuclear deal — statement
https://tass.com/politics/1093607
これはつまり、万々一アメリカがイラン相手に戦争をしかけるみたいなことになったらCSTOはイランの側に立つ、という含みか。つまり、イラン、ロシア、CSTO(中央アジア諸国)、中国がつながるよ、と。
位置関係としてはこんな感じ。これはいわゆる南北回廊の路線図。インド、テヘラン、モスクワが陸路で繋がり、スエズ運河を回避したらこんなに近いですよという話だけど、ここに接続して商売のできる中欧から東欧にも大きな影響をもたらす図でもある(わざわざロシアと戦争するとかいう馬鹿話に付き合ってどうするよ、という話)。
で、そこに米軍はどれほど基地を持っているかというとこんな感じ。アホか、というほど貼り付けてる。
で、ロシア、中国、イランが今回演習するといっているのは、アラビア海ってことになるんですかね。となるとパキスタンの去就が気になるところ。
ついでに、イランとロシアの関係が緊密で、CSTOの立ち位置がはっきりしたら、当然に当然にアゼルバイジャンもCSTOと同期するんだろうと思う。そもそもアゼルバイジャンはイランとロシアの真ん中にいるわけだから他に選択肢はないとも言うし、歴史的にアゼルバイジャンとロシアは帝国時代から別に不仲ではないし、あいかわらずロシア語が使われているという話なので(特に教育)流れとしてロシア回帰していっても不思議はない。
さらに、トルコがロシア製のS-400を使ってみて演習もどきをしているっぽいので、こっちの準備も、NATO側に有利な話ではないわな、それ、ってところ。
トルコのS-400の意味は、本質としては対イスラエルだと思うので、つまりそれはイランと同期してる。
盤面としては、トルコとイランがパレスチナ側に立って、ロシアと仲間たち(CSTO)+中国がケツ持ちをして、イスラエル&湾岸に、お前らどうするんだよ、と言っているみたいな恰好か。
まぁ、イランといえば核が、核が、核がという騒ぎになってるけど、これってつまり中東で唯一の核持ちはイスラエルで、だからイスラエルには誰も攻撃できないという設定を維持したい側が、それが崩れちゃう、崩れちゃうといってるって話ではある。
核兵器はそりゃ大変なことだが、核兵器しか破壊が可能でないというわけでもない。イスラエルがイランに核撃って、イランに核がないからといってイランは滅びない。報復能力も別にそんな最新鋭じゃなくたっって届くミサイルならなんだっていい。距離はそう長いわけではない。
しかし、それでダメだっつーなら、よーしわかったっつって、カスピ海の真ん中でロシア海軍から超音速ミサイル付きのコルベット買ってそのまま撃てばいいんじゃないか。とっても効率的かつ効果的(笑)。
誰もいわないけど、カスピ海のコルベット(小型の船)からクルーズミサイルでシリア領土内(のISの基地)を攻撃できたということは、イスラエルにも同様に向けることが可能だということですからね。
黒海からカスピ海へ
イランとロシアの関係は、今やロシアの安全保障会議書記のパトルシェフが公式表明した準同盟ですから、いざとなったらできるオプションはなんでも揃えておくでしょう。
しかし、パトルシェフさんはもう一つ、会談後の記者会見で含みとしてとっても大きなことを言った。
私たちの対話者(米とイスラエル)が地域の主要な国、つまりイランについて語った声明に関していえば、私は次のようなことをいいたいと思います。
イランは常に私たちの同盟者でありパートナーですし、そうあり続けています。これに伴い私たちは二国間ベースでも複数の国のフォーマットにおいても関係を一貫して育ているわけです。
イランは一人ではないからね by パトルシェフ
ということで、だんだんと大詰めになってきたってことなんでしょう、いろいろと。
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