北朝鮮がまた何か打ち上げ、マレーシアが北朝鮮外交官の国外退去を求める、というなにやら東アジアがあわただしい。
アメリカはずっと慌ただしいのだが、ここ数日はトランプがオバマ前政権が自分のところ、もしくは自分の陣営を盗聴させた、と言い出したことで応酬が続いている。
■ オバマ主義
話の成り行きに行く前に、げーっと思うのは例えばこの記事。
トランプ氏「オバマ氏が電話を盗聴」 証拠は示さず
http://www.nikkei.com/article/DGXLASFK05H09_V00C17A3000000/
もちろん日本のだけじゃないけど、証拠も示さず「それはロシアだ」という論法はもっぱらオバマ政権のやり口やないの、というところ。ウクライナで墜落したマレーシア機の時なんか、被害の詳報の前に、ものの1時間もたたないうちに、オバマとバイデンがロシアだという証拠がある、とか言い出してそれが世界中の人が従うべき「決定」となって、現在に至ってる。
さらにいえば、ロシアがクリミアを取ったというストーリーもオバマの「決定」。
ロシア人外交官35名、家族を含めて100名を突如帰国させ、米国内のロシア資産の押収も証拠なし、検証なしのオバマの「決定」。
この悪魔のような男たちを支えるのが世界中の主流メディアたち。
と、この構造にいると認識することがまず大事っすね。
さて、そのプロの嘘つきオバマは、上のトランプの主張に対して、自分は盗聴を命令させるようなことを決していない、とこれまたオバマ主義とも言うべきスタイルの文章を発表。
オバマのステートメントはいつでも、見た目立派な文章で、最大の効果は常に自分を防御すること、というのはもう前から指摘されている。つまり弁護士の手法なんだよな、としばしば言われた。
例えば今回のような、トランプに対して行政府の側からの盗聴行為はあったのか、という枠の問題には決して答えない。ホワイトハウスはやっていない、ということを証明できれば勝ち、という構造。
が、しかし、ふと思うに、これは、むしろ、安富歩さんが指摘していた東大話法なんじゃなかろうか。
- 自分の信念ではなく、自分の立場に合わせた思考を採用する。
- 自分の立場の都合のよいように相手の話を解釈する。
- 都合の悪いことは無視し、都合のよいことだけ返事をする。
なんと wikiに項目あった。ここ。
7. その場で自分が立派な人だと思われることを言う。
10. スケープゴートを侮蔑することで、読者・聞き手を恫喝し、迎合的な態度を取らせる。
なんてオバマにぴったりじゃないの。
■ 宗教的支配
で、この話法を、安富さんたちは相手に異論をさしはさませない言葉を使った暴力だ、というあたりまでは言っていたと思うけど、私が思うにこれって宗教的支配志向のことを言っているんだと思うんですけど。「正統」を上が決めて垂直で下におろす機構。それに従わない人を「異端」とみなし排除に働く。これは、著しく反近代といってもいいかと思う。
近代が引き出した最も大きな価値(好むと好まざるとにかかわらず)は、あなたと私は対等であるという思想なんだと思うんですよね。
庶民である私は、王様であるオバマの行動に対して疑義を挟むことができる、ということ。この際に使用する武器が法であり、その対決の場が議会というより多くは裁判所。[理性もあった。対決の場がアカデミアとか著作物。それが科学へと結びつく]
別の言い方をすれば身分ごとに異なる判断基準の体系を是認しない、個人を一律に均質なものとして設定するということで、よく考えると思考実験的なところがあるとも言えるけどまぁそう。
で、これをさらに別の角度から言えば、法の支配と呼ばれる、と。
で、オバマたちがやっているのは、反論の機会を相手に与えず、上から決定を下し従わない奴ら(例えば対露関係融和者)を「異端」とみなし一方的に断罪すること。
頂点の権力を持った人たちが法の支配、法の支配と叫んで歩く過去数年というのは本来異常な事態。俺らが法だ、と言っているも同然になる傾向に踏み出している。庶民は当然に疑義を持つべき事態。が、本来的な意味から外れているのに気がつかず、みんなして、まったくその通り、と言っているんだからなんだかなぁって感じ。法の支配とは一重に運用にかかっているのに、それをスローガン化しているところが実に悪質。免罪符とかお札みたいに扱ってる。買った人(承認した人)は救われる≒お前は味方に入れてやる、と上が言うみたいな構図。
そう考えてくると、様々な局面で多数のアメリカ人たちがどうも本気でオバマを嫌い倒していたように見えたのは、言語化されていない中で本質的にこのヤバさを嗅ぎ取ったからと理解することもできるかも。
だって彼らこそ、all men are created equalを基礎に集団を統治しようとした最初の人たち、およびその価値を正しいものとして受け継ごうとしてきた人たちだから。(これはブリッツが歴史的に引き出してきたことに依拠しているわけだが)
■ とりあえず成り行き
で、とりあえず成り行きに戻ると、トランプは、ホワイトハウスとして、議会に盗聴問題の調査を要求した。
トランプ氏、議会に「盗聴」調査要求へ 情報機関元高官は否定
http://www.nikkei.com/article/DGXLSSXK10005_W7A300C1000000/
すると、議会がどう決するかがまだ決まってない中、FBIのコミー長官がそんなことはしていないと否定し、さらに司法省にトランプの言明には根拠がないと明言しろと言っている模様。
FBI Director Asks Department of Justice to Refute Trump's Wiretap Claims
https://sputniknews.com/politics/201703061051291870-comey-asks-doj-refute/
というわけで、シンプルに言って泥仕合になると思いますが(笑)、引き続き、要するに、アメリカは本当に宣伝しているとおりの統治機構なのか、それとも各省、各種情報機関の指揮命令系統は実はアメリカの政治機構と独立なのか、という話ですね。
でもって遠くから眺めれば、司法省を落とそうとしているのではなかろうか、などと思えなくもない。司法って支配側の最後の砦ではあるわけだし、ここが反近代になったら、まぁ普通に宗教支配的になる。既に、オバマ政権のやってることは異端審問官のようだとは思えば何度も書いてたなぁと今更思い出す。
戦況としてはトランプ側不利だし、春先には弾劾目指してまた動こうとしているという噂は常にあるので、今回の動きはトランプ側からの奇襲作戦のような恰好か。
前にも書いたけど、トランプはクリントン追及を止めたことで、言ってみれば弾薬庫を捨て去ったも同然みたいな感じだと思うんだよね。逆には、そこらへんが裏取引だらけのトランプ政権ってことでもあるんだとは思うが。
というわけで、政権が変わって2カ月立とうとしているが、それでもまだ通常運営に行かない異常事態のアメリカはさらに続く模様。
でも、その間に、いろいろと現在の機構のアラが見えていいんじゃないかという気もする。
もう「東大話法」にはだまされない 「立場主義」エリートの欺瞞を見抜く (講談社+α新書) | |
安冨 歩 | |
講談社 |
満洲暴走 隠された構造 大豆・満鉄・総力戦 (角川新書) | |
安冨 歩 | |
KADOKAWA/角川学芸出版 |
①エルサレムに米大使館発言。
②イランへの追加制裁
③軍事費増額
④金融規制緩和
飼いならされたのか、飼いならされたふりをしているのか。
弾劾ネタはロシアだろうけど、ロシア大使と接触して何が悪い?