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核サミット終了

2016-04-02 18:13:33 | 太平洋情勢乱雑怪奇

オバマ政権の肝入りで行われていた核サミットなる催しが終わった。

核物質の管理厳格化 核サミット、共同声明を採択へ
http://www.nikkei.com/article/DGXLZO99199710S6A400C1FF2000/

 【ワシントン=川合智之】ワシントンで3月31日から開いた第4回核安全保障サミットは1日、核物質の管理を「国家の根本的責任」と明記した共同 声明を採択して閉幕する。テロリストによる核物質入手を阻止する取り組みを各国に求める。国際原子力機関(IAEA)が定期的に国際会議を開き、核テロ対 策の情報を共有する。

 具体策の一つが、核兵器の原料となるプルトニウムや高濃縮ウランの管理強化だ。これまでに15カ国・地域が高濃縮ウ ランなどを国外に搬出した。各国に核濃縮を放棄させるため、原発の燃料となるウランを国際的な枠組みで備蓄する「核燃料バンク」をカザフスタンで2017 年にも稼働させる構想もある。

 

核物質の管理については「国家の根本的責任」というのは、テロリストや国家を超えた組織体に持たせるのはご法度という意味ですよね。なぜそう書かないのかわからないけど。

声明はともかく現実には、様々な国が高濃縮ウランを国外に搬出した。国外ってどこ?というと、だいたいアメリカなんじゃないですかね。

日本もその一環で、

兵器級プルトニウム返還

の他にこれもあった。

兵器級ウランを撤去、京大炉から

日米、サミットで合意へ

http://this.kiji.is/87121741502496777

 

話題になったところでは、イギリスも兵器級のウランを700キロ分アメリカに搬出することになってる。

UK agrees deal with US to process 700kg of weapons-grade uranium
http://www.ft.com/cms/s/0/20c298f2-f67c-11e5-96db-
fc683b5e52db.html#axzz44TiPdNRH

 

で、安倍ちゃんはこの事態を、

 安倍晋三首相は1日、核安保サミットで演説し「日本は『利用目的のないプルトニウムは持たない』との原則を実践する模範国だ」と表明。「核物質の最小化と適正な管理への日本の決意を改めて示す」と強調する。(太字私)

核テロ防止へ日米協力 京大の濃縮ウラン回収へ

http://www.nikkei.com/article/DGXLASGM01H89_R00C16A4MM8000/?dg=1

 と言ったらしい。

う~ん・・・。結局こういうことを言えるのも、現在僕たちは英米グループだからで~す、という話なわけで、なんといったものか。というか、利用目的不明に著しく大量のプルトニウムをため込んでいたのは日本なわけで、その意味で今回の声明の目的は日本なんじゃないのぉ?とか言いたくなるものがあるぐらい。

 

■ これ以前の報道

結果から見て、中国の人民日報の記事が問題点を一番適格に伝えていたのではなかろかという気もする。日本の中ではビデオニュース等がぼちぼち伝えていた程度だけど、自国のおかれた状況をメインストリームはあまりちゃんと伝えてこなかったと思う。

 日本の核物質保有問題、日本はいつまで「自らを欺き」続けるのか? 
人民網日本語版 2015年10月10日15:19 

http://j.people.com.cn/n/2015/1010/c94474-8960237.html

報告書によれば、日本はきわめて敏感な核物質である分離プルトニウムを47.8トン保有、うち10.8トンが日本国内にあり、1350個の核兵器を製造で きる量だという。これほどの国内保有量は、国際原子力機関(IAEA)が定めた「供給と需要のバランス」の原則に大きく反している。日本はこのほかにも、 1.2トンの高濃縮ウランを保有している。
(中略)
 さらに日本では、放射性物質の漏えいや、核物質の「申告漏れ」などがたびたび発生していることから、日本の核問題に対する疑念は増すばかりだ。国際社会 はこれまで、様々な形で日本の核問題に疑問を投げかけている。中国外交部(外務省)の報道官もこの件に関し、幾度も懸念を表明している。整理してみると、 国際社会は日本の核物質保有に関し、以下の6つの疑問を持っている。
 

外交部、日本側は核物質の過剰保有問題の解決を
http://j.people.com.cn/n3/2016/0304/c94474-9024995.html

(前略)【記者】日本が現在核兵器に転用可能なプルトニウム48トンを保有していることについて、米カーネギー国際平和財団上席研究員のジェームズ・アクトン氏は先日東京の日本記者クラブで講演した際「プルトニウムの貯め込みはアジア地域の緊張と核テロのリスクを高める恐れがある。他の国も便乗して核物質を貯蔵する恐れがある。プルトニウムの製造は自国の原子力発電所の使用範囲を超えるべきではない」と指摘した。
2016年03月04日09:27



■ 西側の再編成?

オバマ政権は発足後から核のない世界がどうしたこうしたという話をしはじめそれでノーベル平和賞をもらったような気がするんだけど、一体全体どういう意味だったんでしょうねと改めて振り返ってみるとわけがわからない。

一応、共同宣言のサマリーっぽいのはTASSで読んだ。国連も喜んでます、みたいなことをバンキムーンが言ったらしい。

UN chief welcomes 2016 Nuclear Security Summit outcome
http://tass.ru/en/world/866746

 

今になって思うに、オバマの核サミットアジェンダの一つの目標は西側再編なんじゃないですかね。アイデアとして、TPPとかTTIPと同じ。これまで以上に、アメリカが総大将としてこれら属国群を支配するという体制を強化したのではなかろうか。2008年、オバマが出て来た時を考えればなおさらそう思う。自社の魅力が衰え、多少混乱が予想されるからこそ既存カスタマーをがっちり囲い込むのだ!みたいな。

もちろん、テロリストグループや国の枠を超えたグループの手に核兵器を渡さないという趣旨は非常に大事ではあるけど、西側グループは実のところ核不拡散問題については、勝手に例外を作っていて、それが潜在的な地域の緊張要因となっている、またはなりかねない。それは日本とイスラエルのこと。

イスラエルはそれ以外にも特殊要因があるからちょっと置くとして、日本に関しては、知らないうちにプルトニウムつみあげて、ロケット技術開発して衛星あげて、と、実のところ考えようによっては北朝鮮とポジションが同じになってる。そうならないのは、日本が西側グループの重要な国家だから、でしょ? もしそうでなかったら、今ごろ経済制裁をくらってても不思議ではない。イランの様子を見ればわかる。

そのうえ、誰にも頼まれないのに核施設で事故を起こしてそれも収拾できないという状況があるので、日本は大丈夫、とはとても言えない。

にもかかわらず、追い打ちをかけるように、すべてはアンダーコントロールとか言ってみたり、住民の避難経路策定が机上の空論だと非難されても無視して原発再開を主張する政府ってのもなぁなわけですね。

 

と考えてくると、この体制ができたならば日本に核兵器持たせるかも、みたいなネタも出やすくなるかも。だってそれは実質的にアメリカの核だから。

右派がうるさければそのうち核シェアとかの話が来るかもしれない。既に出ている、憲法は核兵器保有を禁じていないみたいな発言は、右派にとっての安倍政権イメージの維持のための戯言だと思う。ほうら、安倍ちゃんは頑張ってる! みたいなブーストのためのネタ。

それだけだと残りの人たちのための対策にならないので、いいや君たちは安心していいんだよ、的な演出が来るのでは? 

G7の外相が広島を訪問するそうなので、そこできっと、私たちは既に一体です、日本はかけがえのない同志です、という感じを演出するんでしょう。これで右派も左派もニッコリみたいな。
 

■ 多分そう成功してはいないのでは?

日本が大量にため込んだプルトニウム等の話はともかく、しかしながらオバマの核に関するレガシーは半端で、そしてそれが故に恐怖のシナリオが生きてる気もしないでもない。
 

今回のサミットで目立ったことの一つはロシアが出ていないこと。ロシアのいない核サミットって、そもそもあらゆる点で実効性に疑問がつくのでは、とみんな思ってるけどごしょごしょですましてる風。

 09年にチェコの首都プラハでの演説で「核なき世界」を訴えてノーベル平和賞を受賞したオバマ氏にとって、核安保サミットやイラン核合意は重要な政権の遺産(レガシー)だ。ただオバマ氏の戦術核削減の提案にロシアのプーチン大統領は反対し、核軍縮は暗礁に乗り上げたまま。ウクライナやシリアでの軍事対立を背景に、プーチン氏は今回のサミットを欠席し、具体的な成果が乏しいとの指摘もある。

これは日経の上の記事のまとめ。

イラン核合意はオバマのレガシーだというんだけど、これが成功できたのはロシアが協力的だったからでしょう。前回のシリア危機でサリン問題を片づけたのもロシア主導。オバマは、インチキ情報に踊らされてシリア攻撃をするというブッシュの二の舞を避けた。それもロシアあってこそ。だってあそこで力を持った勢力が反対にまわらなかったらオバマは抵抗するタイミングなかったですよ。

これをすっかり無視して、ウクライナというロシアとロシア人にとって掛け替えのない場所をナチス残党と欧州&アメリカの極悪勢力に引き渡したのがオバマ政権。ウクライナ危機は、オバマが広場で暴力沙汰になった時点で、ドイツ、ポーランド、フランスの外相が仲介した合意に戻せと言っていれば、アメリカの政権が全力を尽くせばあんな事態には進展していない。

そういうわけで、ロシアにはアメリカの提案に乗らないあらゆる理由があるでしょう。

ロシアからみれば、アメリカが西側の属国群を整えてロシア制裁だのミサイル、レーダーの設置だの、NATOの東方拡大、および意味不明なNATOによる欧州兵力の増強とかやってる時に、なんで攻められる側のロシアが軍備に関してアメリカの要請に応じる必要があるんだ、ってのも理由として成り立つ。

しかし、もう一つあるんじゃないのかなと夢想してみる。

それは、ロシア抜きでやれるならやってみろ、多分できないから、の具現化じゃないっすかね。で、その具現化の後にまだ何か必要なんだったら協力するけどな、ってな感じでいるのでは? 

■ ロシア抜きが示唆してしまうもの

そもそもこのオバマによる核サミットなるプランニングは核物質、核廃棄物を国際的な枠組みで処理するスキームを作りましょうって話なわけですよね。

それが上の日経の記事の2番目のパラグラフ。

具体策の一つが、核兵器の原料となるプルトニウムや高濃縮ウランの管理強化だ。これまでに15カ国・地域が高濃縮ウランなどを国外に搬出した。各国に核濃縮を放棄させるため、原発の燃料となるウランを国際的な枠組みで備蓄する「核燃料バンク」をカザフスタンで2017年にも稼働させる構想もある。

カザフスタンという世界一のウラン産出国であり、かつ、ユーラシアのど真ん中の国に国際的な枠組みを作ることでオバマのプランニングは完成するらしい。

さてしかし、カザフスタンは、安全保障に関する非常に重要な問題においてロシアが乗らない提案に一体どれだけコミットできるのでしょう?

カザフスタンは、安全保障に関する非常に重要な問題においてロシアが乗らない提案を向こう何十年間に渡って安定的にハンドルできるほど安定した国でしょうか? カザフスタン軍にはロシア軍ほどの管理能力はあるのでしょうか?

カザフスタンのナザレバエフ大統領は利口な人ではあるけど、彼が大統領でいられる時間には限界がある。で、次はどうなるんでしょうか?

カザフスタン一国をアメリカが統治するぐらいやらないと追いつかないのでは?

いや、そうするつもりだったんでしょう。ソ連邦を解体した時、ウクライナ、ベラルーシ、カザフスタンを独立させてしまってそこを適宜西側にとって都合の良い場にできればこれで何もかもOKだと思った人たちがいるでしょう。が、しかし、紆余曲折あって結局失敗したということではないかと私は考えますね。

そして、もしそれにもかかわらず核物質管理を安定的にすることが世界にとって重要だと考えるのなら、アメリカはロシア抜きではこれを達成できない、という意味になると私は思いますです。

しかしそれをオバマ政権は遂行できなかった。

達成できたのは西側の再編だけ。ということは、いずれ遠くない将来にこれら属国群を要した大戦争が起こり得る可能性は高まったというべきではないか・・・。

オバマはしかし、自分がどれぐらい危険なことをしたか、おそらく気付いていないし、それを修正できるほどの人間的な深みもない。

トランプを代表例としておそらくNATOを解体させるかなんとかして再編させようという話が起こるだろうが(既にトランプは言及したという話だが私は見てない)、それは出来上がる可能性のあるこの恐怖の枠組みをなんとかせんとならん、って話じゃないかと思う。

逆にいうなら、メインストリームは全力でこれらの反・ハルマゲドンみたいな人たちを消しに来るのでは? またかよ、ですが。

 

■ おまけ

ロシアとカザフの最新の核協定

Russia and Kazakhstan to ink nuclear power accord this year
http://www.world-nuclear-news.org/NP-Russia-and-Kazakhstan-to-ink-nuclear-power-accord-this-year-02031601.html

 


 

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1 コメント

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『核のごみ箱に抵抗』 (ローレライ)
2016-04-03 19:03:16
日本からの『プルトニウム』の受け入れにはアメリカ国内の抵抗が強いので『カザフスタンがごみ箱』にされる向きだが『核のごみ箱に抵抗』は今後、大変な国際問題となるだろう!
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