昨日は、トランプと安倍ぽんが仲良ししてたらその間に北朝鮮のミサイルが発射された。そこで、何、それは一大事。ううむ、我々は共にこの北朝鮮の脅威に対決せねばならぬ、ならぬのだ~、になっていた。
殆ど歌舞伎だな、と思った。
で、どうしてこんなことになったのだろうかと考えた。これはやっぱり、私たちは偽装に負けたってことなんだろうなと思った。
どういう擬装か。まず構造は、メディア上の真実と地上の現実を分離させ、メディア上の真実を多くの人間に信じ込ませたということ。メディア上の真実と地上の事実は違うというのはもうウクライナ危機の時毎度叫びながら書いていたように思うけど、引き続きこの問題は重要だと認識した。
では、この擬装の今回のネタは何か。それは、あたかも日本とアメリカが何かに立ち向かっている、ということ。これがメディア上で真実として報じられてきた。
これに対して、地上の現実は、数日前書いたように、世界のプレーヤーはアメリカ、ロシア、中国。そしてアメリカという名前の下にNATO諸国と日本とオーストラリアを中心とした東アジア版NATOがある、ってな構造。
だから、日米が共に何かに対峙するのだとしたら、それは中国とロシアに対峙するということ。しかしながら、これは地球を壊すような話なので世界中の多くの国と地域ではこれは起こらない、または、起こしていけない、あるいは、起こすべきでないものと考えられている。多数のアメリカ人はこれに同意している。
が、日本の中ではそうではない。そしてそれは日本だけではない。おそらく、一部のポーランド人と一部のバルト三国人も、アメリカと一緒にいればロシアを「やっつけられる」ぐらい思ってるかもしれない。いやしかし、まぁ、こっちは実はあんまりって感じかな、とも思うけどね。
ということで、メディア上の真実と地上の現実は多くの日本人の頭の中ではかみあっていない。
一つの突破口としては、「世界」という語を使う時、自分はどこを念頭にそう言っているのかと考えてみるといいんじゃないか。世界という語を使いながら、実は日本とアメリカぐらいしか頭になかったり、あるいはせいぜいドイツとアメリカの一部がそう言っているだけなのに世界といっている、みたいな不用意な慣習に私たちは馴染みすぎている。
■ どこにいったの中国包囲網?
でまぁ、北朝鮮の行動によって日米は共通認識ですという大団円でめでたしめでたしという物語で人々は拍手をするわけだけど、え、じゃあ中国包囲網はどうなったの?
日本政府は過去数年間、世界中に中国の脅威を売りさばいて来たはずなのだが、この話はどこに行くのだろうか。わかりません。
というか、中国の脅威を叫ぶことで、であるから日米同盟は重要だという話に持っていくことが果実だったので、果実とったらもう原因の方はどうでもいい、なんでしょうかね。
ウォールストリート・ジャーナルによれば、
2017 年 2 月 13 日 07:09 JST
多分、日本はこれから中国と仲よくすべきだ、そうだそうだ、になるんじゃないかと想像。
理由づけとしては、北朝鮮問題を解決するには中国の支援が必要だから仕方がない、とか?
そんなの長年同じなんですが、まぁいいと。
そういえば、拉致問題の解決という話はどこに行ったのだろう?
■ 東アジアの日本
オバマ政権の8年間というのは、日本ではほぼ安倍ちゃん、民主党、安倍ちゃん2の時代。この間に何が変わったか。それは、日米一体という幻想の日本の完成じゃなかろうか。
振り返ってみて、安倍ちゃん1が登場する前、小泉純ちゃんの時代には、日本は、東アジアにおいて胡錦濤とプーチンと並ぶ小泉だったんですよ。小泉をほめているつもりはないんだけど、とりあえずあの人の時代には、胡錦濤はけしからんみたいなことを言ったり、靖国問題で火をつけたりもしたが、その時ですら、小泉は孤立していなかった。
あるインタビューの中で、小泉は、私はAIPECに行く前にはロシアと中国には連絡することにしてたからね、そしたら中国が靖国のことを言い出して云々と語っていた。ここから中国と靖国問題で揉めた話が続くんだけど、問題はそこじゃなくて、中国とロシアと連絡つけながら行動しているということだと思う。
これはつまり、日本は東アジアの国だという立ち位置をしっかり取ってるという意味ね。これは西側の配下ではあるが、根本的には東アジアの大国だという位置取りともいえるでしょう。
そもそも小泉は本籍福田派だから、よく考えれば親米だがアメリカ一本ではない基礎の上に立ってた(だからこそ親米アピールが過剰に必要だったのかもという気がしないでもない)。安倍1も、中国とはそんなに悪くはなかったような気もするけどここは微妙。民主党時代を挟んで俄然、アメリカ一本という姿勢が強まった。言うまでもなく、民主党が中国とアメリカを対等に扱いたいような姿勢を見せたから、少なくともそう映ったから、なんでしょうかね。
私は実のところをこの点、あの民主党政権を評価していない。民主党議員143名の訪問団というのはいかにも愚策だったと思う。あれは別にあんなに取り上げられるとは多分思ってなかったんだと思うんだが、その考えもまた甘い。
どうせやるなら、(北から)ロシア、韓国、中国に50人、北朝鮮、台湾、フィリピンに30人ずつの国会議員を送って、よろしくお願いします以外の趣旨をもたせずさわやかに笑顔で挨拶して帰ってくる、みたいなことをさせればよかったんじゃなかろうか。もちろんその前後にアメリカに100人とかしてもいいよ。
中国は台湾について腹を立てるだろうけど、これが私たちの立ち位置です、私たちは東アジアの国ですという日本の意図は明らかなわけだから、立場上怒る以上のことはできなかっただろう。
いやしかし、奇怪な8年だったなぁとか思うのだが、いずれにしても確実にいえるのは日本の立場は低下した、これですね。
ただ、混乱のおかげでいろいろと構図が見えてきたのはよかったのかもしれない。
かの大東亜戦争というのは、終わっていないように思います。
日本では武器を放棄して降参したのですが、占領されたままで再軍備できず、国境が定まらず、国交回復していない国がいくつかできてしまったままです。中途半端です。北朝鮮などは朝鮮戦争が片付いていないこともあり、ああいう調子です。
この辺りの事情がすっきりしないので、話が混乱してよく見えないところが出てきやすいのではないかと思っています。
トランプ大統領と安倍首相はざっくらばんな話をお互いにして、多少の共通認識を築けたところが、まずは評価できると思います。
中国に対しては、現実的な路線を基礎にしていくのでしょう。
いや、多分冗談じゃなくて問題はイデアなんじゃないっすかね。イデアとしての日本から離れられないのが問題なのでは? 皇国史観との決別こそ解法への糸口だ、なのかもなぁとわりと真面目に思います。
日本は長い歴史を持つ国で、正しい歴史観を抜きに語れないものですが、その「正しい歴史」というのは丹念に隠されているものです。いわば「最高機密」なのです。