ちょっと心の中にわだかまっていたので書いておく。
日曜日に安保法制反対のデモがあってそこに坂本龍一氏が来ていた。その短いスピーチの中にフランス革命がどうしたこうしたというところがあったというのでまたまたアホな「保守派」がかみついていたが、それは後で書くとして、それよりもこうして病をおして姿を現した、show upしたという点に何かとても、まったく個人的だが心が揺さぶられるものがあった。
この人は、主義主張についてはいろいろ言いたいものはあるけど、でも、ずっとずっとずっと日本を愛してる人なんだと私は思うわけですよ。
「戦場のメリークリスマス」という映画があったけど、あれは本当に独特なものだったなぁとあらためて思う。出てる人みんな、非常にユニークで、決して上手にできた映画ではなく、むしろ見ている方が気恥ずかしい映画なのだが、深い愛が、どこにも描けない愛があった、とか言いたくなるものがある。
原作本であるローレンス・ヴァン・デル・ポストの「影の獄にて」の方が文学的高さがある、なんだあの映画は、みたいな評もあって、それはそうだなとは思うんだけど、でも、人間同士の臭いがするこの映画の強さは捨てがたい。器量良しと言われる顔をした人間が一人も出ていないという凄い映画でもあった。
さらに、原作にはあるはずもない音楽のせいで、映画の方が遥かにおセンチに、より感情に深く残る、突き刺さるものになったとも思う。癖になる音でしたね、あれは。
で、音楽はレコード(CD)1枚まるまる素晴らしかったんだけど、その中にある「禁じられた色彩」というデヴィッド・シルビアンのが歌う挿入歌、これが凄い。これはよく聞くと要するに日本人の日本に対する狂おしいまでの感情をシルビアンというイギリス人が表現したもの、だと思う。
a lifetime away from you という一種妙な表現があるんだけど、このyouを日本そのものとして考えるとこの歌が思いもかけないものを描いていることに気付く。太平洋の島々で散っていった日本の将兵が死してなお日本という場を守る、しかしその思いをストレートにくみ取ることは現在の世界秩序の中では許されない、だからforbidden coloursなんだろうな、と。しかし将兵の魂はそれすらもわかっている、だからこそ(それを知る、感じる私は)狂おしい、という感じ。この歌が流れると今でも熱い涙が出てくる。なんなんだこのイギリス人は、なんですよ、ほんと。
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そして、どうしたわけだか、この愛の延長線上に、伊藤貫さんを思い出した。
伊藤氏は1.5年ほど前、
「三島由紀夫が最終的に腹たててたのは保守派でしょう?三島由紀夫はね、朝日新聞が憎くて腹切ったわけじゃないし、共産党に抗議して腹切ったわけじゃないわけ。三島由紀夫が嫌いだったのは、自民党でしょ、それから通産省、大蔵省、それから親米保守の言論人」
【西部邁ゼミナール】アジアは大火事で燃えている【2】 伊藤貫×西部邁
2014-04-22 02:34:28 | 欧州情勢複雑怪奇
http://blog.goo.ne.jp/deeplyjapan/e/5dd127ca246ac22046e57b81da04c846
と吐き出すように語っていた。どうにもならない、この自民党というコラボレーター政権に仕切られた日本、蜘蛛の巣の中でもがいてももがいてもまた別のフェーズの網を自ら生産して自ら網にかかるがごとき自縛的でさえある日本に対する、ある種斬鬼の念みたいな吐露だっただろうと思う。
坂本龍ちゃんと伊藤さんじゃ左と右じゃね?とか思う人もいるんだろうけど、その区分は本質的に何の意味もないと思う。
両方とも、いや三島を含めて三人とも、日本にdignityを取り戻したいという強い思いがある。
どうしたらいいのかを考える、懸念する、狂おしく思う人々を繋ぐ鍵としての三島由紀夫なのかもしれない。死して人を走らす、みたいな。
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■ ブログ内で書いた4回分の伊藤貫×西部邁さんの対談まとめ。
伊藤貫×西部邁
http://fanblogs.jp/dtj3/archive/10/0
自分でもうどこに書いたか、あのへんだったか、このへんだったかと自分のブログ内をキーワードで探すのが面倒なので、一回探したらその項目でまとめておこうと、別館というより物置を作りました。よければご利用ください。
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ヴァン・デル・ポストの深さがそう簡単に出てくるとは思えない、とか偏見を述べておきます。