数日前、米の駆逐艦が台湾海峡を航行したというので、軍事をビジネスにしている佐藤氏がこう言っている。
【このような目に見える形の行動が大事→米駆逐艦、台湾海峡を航行】
— 佐藤正久 (@SatoMasahisa) November 23, 2021
国連決議違反の「北朝鮮の瀬取り」対応もそうだが、台湾海峡における航行の自由作戦、繰り返しの行動、動的抑止が大事。
台湾海峡の安定化の為、日米含む多国間連携が大事。実施中の海上自衛隊演習も多国間 https://t.co/GRrhUfv3Tf
多国間で連携して、ドイツだのオランダだのイギリスの船がここを通ったからといって、SO WHAT?? なわけですよ。
どうせNATO諸国と、極東でNATOになりたい、西欧かぶれの日本人が騒ぐだけだと誰でも知ってる。つまり、こうやってメインランド・チャイナに圧力をかけたからといって何がどうなるわけ?と誰か考えないとならない。
だけど、こういうことで儲ける側にいる人たちはそんなことは考えない。さあ次はこれ買って、あれ買ってと夢がひろがりんぐの装備品の代理人みたいな人たちが喜ぶだけ。
そうかと思うと、ウクライナ方面では、米軍がロシア国境に爆撃機を飛ばして、ぶいぶい言わせているという、恐ろしい状況が続いている。ロシアは、プーチン、外務省、FSBがこぞって、我々はレッドラインを言い渡したが、無視しているのはEUでありアメリカだという言明を行っている。つまり、ロシアは平静、そして引かないということ。
それに対して、数でいえば膨大な数のメディアを傘下に収める西側メディアが、ロシアが悪い、ロシアが悪い、ロシアをプッシュせよ、ロシアは弱い、いずれ屈する・・・と書き連ねる。
アメリカの議会のなんかのスタッフらしい人のtwitterがこのサンプルみたいなノリなので取って来てみた。
西側にはたくさんのオプションがある。制裁であり法の執行だ。盗まれた資産を差し押さえろ。ノードストリーム2を止める。これはとても簡単だ。プーチンは、我々が彼に依存するよりももっと依存している。
The West has so many more options than it thinks it has. Sanctions, of course, but also law enforcement. Seize stolen assets. Stop Nord Stream 2, that one is easy. Putin is so much more dependent on us than we are on him. Not even close
— Paul Massaro (@apmassaro3) November 23, 2021
だそうですよ。現実には何の根拠もない(笑)。
この間、アメリカがロシアから石油を買ってることは誰でも知ってるし、最近も、ディーゼルを大量に買ってた。そして、前にこのブログで、いろいろ調べていった結果として、原発の燃料問題というのがあったことを書いた。アメリカは言うほどエネルギー独立していなかった。ただ、西側のメディアが追わないだけ。
ということで、私としては、最近の状況を前に、ナポレオンが言ったとされるこの一言を思い出す。
When your enemy is doing something stupid, don't interfere.
敵が何か馬鹿なことをしている時には、介入するな。
ナポレオンがどこで言ったのか知らないんですけど、しばしば有名人の警句みたいなのに載ってるらしい。googleすると確かに書いてる人がぽつらぽつらいる模様。
で、これを思い出したのは、だいぶ前で、ウクライナ、ポーランドあたりの騒動やら、CIAだかアトランティストだか知らないけど、次から次から、ロシアが襲ってくる、ロシアが、ロシアが、ロシアが・・・という事件を作ってくる事態を前に、これって、むしろロシアは、敵が馬鹿なことをしているならやらしておけ、って思ってるんじゃないかと書いてた人がいて、なるほどな、と思ったわけですよ。
NATOは半年に1回ぐらい、騒ぎを作って、そのたびにメディアを賑わせてるわけだけど、この度に当然金はかかる。おバカな人たちを雇っておくための工作資金だって長期間になったら馬鹿にならない。
しかも、そのたびに、欧米諸国は、EUの外交方針に無茶苦茶に振り回されて、結果的に、どう見ても正常な政府とは呼べない、EU/US/NATOによるクーデターの産物であるキエフ政権の面倒を見なければならなくなっていることについて、文句も言えず、ただリソースを垂れ流す。そもそも無理筋なことを言いつくろって騒ぎを作ってるわけだから、総体としての欧州諸国およびアメリカの人々にとって、ロシア攻撃で得られた便益はひとつもない。(一部の人の利益にはなる)
その間に、ロシアは自軍の整備を進め、軍の最新化、自国経済の自立に一層磨きをかけ、そうでなくても自給自足的だったのに、その上さらにエネルギーや食糧を輸出して西側世界以外の各国との関係を深めている。
また、ロシアと中国は軍事、経済(特にエネルギー)、国連対応とあらゆる分野でかつてないほど強力な協力関係を作ってる。
ロシアからすれば、どうしても騒ぎたい奴らがいるならやらせておけばいい、単純に、大戦争にさえならなければまずはOK、そして、大戦争をしたくないのは西側各国も同じだ、だろ?って感じではなかろうか。
ということは、西側各国は、ナポレオンが言うところの something stupidにリソースを取られ、また、その人たちは勝手な妄想を抱いてしゃべって仲間を増やしてるから、意味不明な妄想集団が伸長する。次から次から予算がつくから利権化して、妄想を言い続けることが既得権益化する。これは、どこかで方針を変えるための政治的決断をする時に、とてつもない負担になる。
■ NATO東方拡大こそ原因
で、そっちが大戦争する気なら、俺らは対応せざるを得ない、というのは過去10年かそこら、なんどとなくプーチンが繰り返してきた言葉。
これはまったく冗談ではない。なぜなら、NATOが東方拡大したことによって、ロシアの主たる都市であるモスクワを含む西部、北部、南部の軍区が全部、最前線となってしまったから。であれば、なんとかして敵を打破するための軍に編成せざるを得ない。そして、そうしてきた。
(青、赤、茶色の3つ)
今、欧州諸国とアメリカが見ているのはそういうロシア連邦軍。ロシア軍が大きな演習をするたびに、この地でのNATOの対応なるものが可能でないことが明らかになる。
冷戦時代と根本的に異なるのはここ。冷戦時代は、ロシア欧州部の西にウクライナ、ポーランドがあって東西ドイツが最前線だから、ドイツ人同士が揉めない限り、欧州部ロシアを強力にしておくメリットはそうなかったようだ。少なくとも即戦の構えは不要だった。
過去7年間、何度か、主流メディアが取り上げない系統のアメリカ軍の関係者がNATOの挑発的な行動を批判することがあったが、そこでは、ロシアのような軍事大国のdoorstep(玄関の前)で挑発的な行動を取るのは馬鹿だ、大馬鹿だという下りが入ってる。それは、この騒ぎがもたらしたロシア軍の編成と充実が見えているからだと思います。
しかし、予算付けて雇いまくった妄想集団は、そんなことはどうでもいい。次から次から勝手なことを言い出す。これを、止められない限り、ナポレオンの警句は明日も効力を持つ、といったところではなかろうか。
■ オマケ
ウクライナは既にクリミアを失い、ドンバスも事実上失い(ほぼロシア市場に統合されている)、残りかすとなったナチびいきのウクライナは、毎年毎年アメリカとヨーロッパ諸国が予算をつぎ込み、武器を持たして紛争を惹起するだけの存在となっている。
これはつまり、要するに、第二のアフガニスタンが作られたということ。しかしアフガニスタンより危険なのは、ああいう不名誉な撤退をするよりは、地球ごと吹き飛ばすことも辞さず、みたいな人たちがアメリカの中に出てくる確率がゼロではないこと。(つまり、対ロシアの核戦争を選ぶということ)
■ オマケ2
今日も今日とてアメリカ軍の艦船が黒海に展開して、露助ごら~とかやってる。ほとんど毎日なにかしらやってるな。
US missile-armed warship heads into Black Sea
不実のアルビオンが馬鹿だと春先に書いたばかりだけど、アメリカも親子兄弟だから同じように馬鹿なんだなと思ったりもする。
英艦船を沈めてもWW3にはならなかったでしょう by プーチン
このインプリケーションを自分で引き出してどうするよ、と思うわけですよ。
他方で、米統合参謀本部とロシアのそれの代表者同士、つまり、ミレーとゲラシモフが一昨日緊急の電話会談をしていたりする。
US’ Milley, Russia’s Gerasimov discuss security issues of concern — Pentagon
どげんかせんといかん、と思ってるのは米の方と誰でも知ってる中で黒海展開をやめられないというのは、なんとか顔を立ててる、みたいなおバカな状況だと思う。不実のアルビオンの大きな息子、みたいなところか。