オバマ大統領がそろそろ訪日するというので、なんとなくまたぞろ、日本と共に中国と戦うアメリカに期待をしている人がいる模様。
中国と組んで反日を叫べば叫ぶほど、自らの同盟国であるアメリカのアジア戦略
との乖離がますます大きくなり、米韓関係にも大きな隙間が生じる恐れがある
といった感じ。今日もまた『株式日記と経済展望』さんを読ませてもらいました。
そうかもしれないし、そうでないかもしれない。
しかし今のアメリカは、ロシア(と中東)で頭がいっぱいだし、これは最低でもあと2か月は続く(5月にウクライナの選挙があるから)。また、ロシアが立ち上がったおかげで東方拡大したNATOのある種の非現実性が見え、欧州がちょっとおろおろしている。
非現実性というのは、一番大変な思いをする大国はだいたいにおいて慎重で、他人に助けてもらえると思う国々が過激なことを言う、という構造を内包した組織だということ。で、この時、いわゆる大国にその小国に振り回される余裕はあるんですか、という問題。
こういう状況でアメリカの東アジア戦略はどないなりまっか、ということなんだと思うけど、中国と正面から事を構えないようにするにはどうしたらいいのか、という方向に行くんじゃないんでしょうか?
伊藤貫さんがおっしゃる、米中共同封じ込め体制がやんわり存在することになるんじゃないかと私は思う。日本に核を持たせない(プロトニウム返してね)、朝鮮半島、台湾について日本に語らせない、とその通りの事態になっている。
で、そうであれば、韓国は米中の狭間に立って二股外交を強いられている、というよく見る想定は、別に二股になっていないのでは?
つまり、東アジアにおいては日本の「過去」が問題なので、韓国も中国も日本との関係を構築できない、というシナリオは今も優位ではあるまいか。
■悪者を作って、善を率いるアメリカ
韓国のやっていることは、ロシア問題で真っ先に声をあげてロシアが如何に悪いかを主張するポーランド+バルト3国と同じだと思えばわかりやすい。
アメリカの作戦は、悪者を仕立て上げて、そこにいじめられる善にあたる側を自分が応援する、ということらしいのだ。どこにもそんな外交戦略は書かれていないのだが、通してみればそうなる。
(この時アメリカみたいな図体のデカい国が応援したら、悪者を不必要に刺激することになるのだが、そんなことは気にしない)
東アジアの今日の情勢でもこの構図が生きていると思える一つの理由は、ついこの間日本は河野談話の「見直し」さえ封じられているあたりか。結局、日本は何一つ汚名を濯ぐことができていない。
要するに、肝は、アメリカの外交政策にとって、「真実」はまるで問題ではない、ということだと思う。
日本の保守派は、ここを理解しなかった。真実を述べれば必ず勝てるという態度は立派だし、長い目でみればそれはそうだと私も思うが、アメリカの外交方針はそんなことでは決まらない。
■作られた歴史問題は実際機能する
現実問題として考えれば、ポーランドとロシアも別に未だに過去を巡って年中反目しているわけではなく、そもそも真実をというのならドイツにもロシアにも言い分はあるし、イギリスにもある(イギリスではポーランドによって第二次世界大戦に引きづられたという考えは否定されていない)。しかし、アメリカの外交政策は彼らが作った「正史」に基づくので、そんなことはどうでもいい。主要メディアが足元の真実の事情を伝えなければそもそも異論は存在しない(だから、ロシアは自前のメディアを持って争いに持ち込む。外交が上手いと言われるのは以てここに依存すると思う)。
東アジアのケースも同様に見える。とにかく、なんであれ、細かいことはどうでもいい。日本はアメリカにとっては、1937年あたりに日本はとんでもない、言語道断な非道なことをした、だから、チャイナを庇うためにアメリカは出て行った、という、日本から見ると訳のわからない「正史」がそこにある。
中国共産党が推進しているのもその線に沿ったもの。
韓国は、実際には何もなかったんだけど、90年代に作ってこの仲間に入った。
「歴史問題」は、真実を探るために存在するのではなく、敵味方を識別するために、あるいは敵味方になることを正当化するために使われている、と考えるのがいいと思う。
ロシア向けの苦情は、この「歴史問題」がどう使われているかを知る良い手がかりだと思うが、日本ではまぁあまり関心が向かない。ロシアが悪いに決まってると思いなしている人が多いから。
しかし、この「そうに決まってる」と思わせることこそが、作られた歴史問題が流行る、または使われる理由だと思う。
例えば、ラトビアのケースなどが結構生々しい。バルト3国のラトビアには人口の1/4がロシア語を母語とする人々がいる。どうしてこんなにいるのかといえばソ連邦解体の時、ソ連の行政区分に従ってざくっ独立させてしまったので、各共和国でロシア人が取り残された格好になった。
しかも、ロシアのナショナリズムは否定されるが、新しい国のナショナリズムは奨励され、ラトビアでは国籍要件にラトビア語が話せることを加えられ、住民もかなりあからさまに、ロシア語を話すな!みたいなことをすることで知られており、要するにロシア人苛めが有名な地域だったりする。(確かリトワニアは当時の全員に国籍を与えたと思う)
ここでラトビア人が取り出すのが歴史問題。「過去」にロシア人が行った蛮行があるのだから、俺たちは「現在」お前を差別しても無問題という態度を取り、ラトビアはEU加盟国なのだが、この態度は結果的にいえば大っぴらに許されている。
西にロシア人相手なら何を言っても構わないラトビアがあって、東には日本相手なら何を言っても構わない韓国がある。
そして、私たちの多くは、「だってロシアの昔が悪いからでしょ?」と言う。多分、世界中の多くの人たちは東アジアの不和を見て「だって日本の昔が悪いからでしょ?」と言っている。
そこにあるのは真実はどうかという姿勢から出た結論ではない。
■歴史問題と封じ込め政策
要するに私たちは、アメリカの東アジア政策において「悪者」であり続けている、というだけのことなんだと思う。敗戦以来、アメリカの対日政策は封じ込めが基本で、90年代から持ち上がって来た「歴史問題」はそのためのツール、善悪識別票みたいなものだったのではあるまいか。
そういうわけで、朴大統領は、韓国国民にとって、さらには朝鮮民族全体にとってまさしく不名誉なことをしているとは思う。しかし、国際政治の流れをよく理解しているのではないのか、という可能性は捨てられないとも思う。
ラトビアやポーランドが何をやっても国際社会で大きな非難を浴びることはないのと同じように、韓国という国のポジションもそういうものだとの諦観めいたものがある。
だから日本は諦めようというのではないですよ。問題は問題を解決するための戦略が怪しかったということ。現状認識が不全だったし、今も不全かなぁということ。
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