アメリカではウクライナ疑惑の公聴会が開かれ、しずしずと
トランプ氏のウクライナ疑惑、初の公聴会始まる 米下院
朝日新聞-14 時間前
ウクライナ疑惑 初の公聴会 政府高官「ばかげている」と批判
NHK NEWS WEB-3 時間前
米高官、「外交の私物化」告発 ウクライナ疑惑で初の公聴会
時事通信-7 時間前
などと、あたかも何か重大問題が起こり、すばらしい議員とすばらしい司法とすばらしいジャーナリズムが裁いておる、といった趣で報道が進んでいるわけですが、
他方で、この問題にとって現実的に決定的に重要な男、ウクライナ第2の金持ち、ユダヤ国籍のオリガルヒことコモロイスキーが吠えている。
しずしずと近代民主主義の頂点たるアメリカ様と忠実なる同盟者を任じる日本様の各機関が一貫してご推薦申し上げた男はこの方でございます。
この方が私費を投じネオナチの皆様を集め、大隊を結成し、同じく大義のために私費を肥やしたチョコレート業を営むポロシェンコ氏と共に、賊徒討伐のためにご尽力くださったことは記憶に新しい。このような方の後ろに付けたことを近代民主主義を信望する諸氏は喜ばなければならない。
外交の私物化どころかウクライナの私物化を実践され、偉大なる男は偉大なる決断をするのだとばかりの行動に及んでいたのでございます。
という馬鹿な話がこのウクライナ問題ではあるわけだけど、
で、このおじちゃんが何を吠えているかというと、ニューヨークタイムスとのインタビューで、
ロシアとの関係を改善する必要がある
人々は平和を、良い生活を求めている。戦争なんかしたくないんだ。
そして、あんたら(アメリカ人)は俺らを戦争せざるを得ない状態にし、だけどそのための金さえ出してくれない
そして、
ロシアは俺らを新しいワルシャワ条約に連れていきたがってるんだ。
“There’s no use in wasting time on empty talk. Whereas Russia would love to bring us into a new Warsaw Pact.”
俺らはロシアから10兆円取れるだろう。彼らは俺らにくれたがってるんだ、今日にでも。
“We’ll take $100 billion from the Russians. I think they’d love to give it to us today,” Kolomoisky said. “What’s the fastest way to resolve issues and restore the relationship? Only money.”
といった感じで、発狂している模様。わはははは。
どうしてこうなるかというと、単純な話で、コモロイスキーは金の調達が難しくなってるから(笑)。
IMFの資金が、群がる奴らの懐に入ってウクライナ人一般に使われることなんかないだろうとは、最初っからわかっていた話。
しかし、この詐欺スキームが継続されるためには、例えばアメリカが、そしてその子分が永遠に、ウクライナを助けるという名目で金を出さないと回らない。要するに公金横領のスキームだが、国際間にわたってるので立件しづらいというだけ。
そしてIMFは現在、この体制のままでは貸せませんと言ってる。底抜けの企業に金を貸し込み続けられなくなるのは世の常。
だから時間の問題だったといえますね。
ということで、ウクライナを西側はどうやって養うんでしょうね。
コモロイスキーは、ロシアにつくぞ、といって脅しているわけですね。既に今年の5月にも一回吹き上げていた。
「アルゼンチンは何度デフォルトした? それで再建できるならそれでいい」
といい、そして、EUと米国はウクライナの外債を帳消しにするべきだといい
「これはあんたたちのゲーム、あんたたちの地政学」
「あんたたちはウクライナを気づかってるわけではない」
「あんたたちはロシアを傷つけたいだけ、ウクライナは言い訳にすぎない」
IMF支援は受けるな、外債はデフォルトでいい by コロモイスキー
だがしかし、ロシアが食らいつく必要は別にない。
東部ドンバスの、特に高度な技能を持った人などは既にロシアに出て行っているし、そうでない人も今年の初夏に始まったスキームの中でロシアのパスポートをもらう選択をしている模様。ドンバスは命がけでロシア世界に留まろうとした人々なので厚遇される道が見える。
Nearly 40,000 LPR residents received Russian citizenship, say Lugansk officials
https://tass.com/society/1088463
ビッグピクチャで考えても、既に、ドイツとの間でノルドストリーム2は完成間近となり、トルコとの間でトルコストリームが出来て、中国との間で「シベリアの力」がほどなくガスを入れる段階に来て、さらにもっと増強する計画も見える。
だから今さらボロボロになってオリガルヒが手を引かないウクライナに頼る必要はない。
また、軍事的にも、そもそもウクライナをNATOに入れたら強くなるというプランニングが間違ってる(笑)。
むしろ、NATO側はバルト三国とウクライナを巡ってロシアと戦うという、ヒトラーもできなかったことを真面目にやろうとするなら、とてつもない大戦略でも考えないとならないし、そんなことをNATO加盟各国民の大多数が支持しないとならない理由はさらさらない。
■ 歴史ある「ロシアは弱い」
コモロイスキーは、昨日書いた小汚いナチ妄想の右派ネットワークとまったく同様の誤りを犯している。それは結局、ロシアを弱いとみる、という根深い「風習」ですね。
前に書いておいたこれこれ。
■ 歴史ある「ロシアは弱い」
しかし、こうなったのは何も日本とアメリカだけではなくて、ロシアは弱いと嘲笑して後にエライことになった人は過去にも結構いる。著名なところはこんな感じ。
(1) 18世紀初頭
スウェーデン カール12世 「ロシアなど取るに足らない。私が跪かせてみせる」
(2) 1759年
プロシア フリードリッヒ 「後進ロシアなど私が征服してみせる」
(3) 1814年
フランス ナポレオン 「ロシアは脆い巨人だ」
(4) 1941年
ドイツ ヒトラー 「今年の終わりまでにはソ連に勝つ」
これは別に私が今探したのじゃなくて、2014年3月にオバマが、Russia is only a regional power(ロシアは単なる地域の強国に過ぎない)と語った時に、ネット民がおおお、これはひょっとして新たな一行かと笑い話にしてたので当時メモしておいたものを日本語にしただけ。
ロシア弱体化という願望
さらに、ここに、カーター政権の大統領補佐官ブレジンスキーの、ロシアはウクライナがなければ決して大国になることはないのだ、という信念が加わる。
ブレジンスキーはポーランド人だから、ポーランド、西部ウクライナを繋いで、バルト海から黒海までを繋げた大国が出現するとロシアを粉砕できるのだ、みたいな感じで見ていたと思う。それはつまり、上でいうなら、スウェーデンのカール12世の野望。
カール12世の野望がなぜ重要かというと、現代のロシアの原形は、このスウェーデンに勝ったことによってこの地域の覇者となったから。
この戦いを総称して「北方大戦争」というんだけど、そこで1709年現在のウクライナ地方の東部で行われたポルタヴァの戦いがその頂点だっただろうと考えられている。北方大戦争におけるスターリングラードの戦いみたいなものですかね。
ブレジンスキーは他方でムジャヒディーン作戦の生みの親でもあるわけで、マジでこの人はアメリカを凋落に導いた張本人というべきなんじゃなかろうか。その他世界にとっては、まぁそれならそれでいいかとも言えるわけだけど。
アメリカはなんでこんな話につき合わされないとなんなかったんだろうって、しみじみ思いますよ、ほんと。
■ 自分で傷口を広げたの
クリミアをウクライナを使ってNATOのものにする、ってのは2014年に始まったんじゃなくて、もっとず~っと前からアメリカ、ヨーロッパの各NGO団体、シンクタンクが大っぴらに公表して活動していた話。
しかし2014年、その計画はクリミア住民の機転の利いた行動によって大失敗に終わった。
ここで、こりゃもうダメだとして、クリミア住民が住民投票で圧倒的多数をもってロシア帰還を選んだことは民主主義的にはどうしようもありません、とすることが最悪の中での最善の選択だった。
2014年3月の、このへんのリアリスト系統の意見が結果的に一番アメリカにとってダメージが小さなかった。
ウクライナ危機は西側の過失 by ジョン・ミアシャイマー
ウクライナ危機をどうやって終わらせるのか/キッシンジャー
■ オマケ
コロモイスキーの話は、ニューヨークタイムスにインタビューが載ったというのが興味深い。しかも、ニューヨークタイムスやBBCが通常やるような、質問の段階で相手の答えを狭めていって、実は言質を取に行っているだけ、というインタビューではないようだ。かなり言わせっぱなしみたいだ。作りこんでるところは地の説明部分ぐらい(嘘だという意味ですが)。
A Ukrainian Billionaire Fought Russia. Now He’s Ready to Embrace It.
https://www.nytimes.com/2019/11/13/world/europe/ukraine-ihor-kolomoisky-russia.html
つまり、工作できない何かがあるんでしょうね。面白いことだこと。
■ オマケ2
思わぬことが起きていた。朝日等のリベラル派は、あいかわらず基地外みたいなウクライナ情報を伝えているんだが、その中でグローバリスト日経がロシアのTASSを引用して多分現時点で一番事実に近いであろう記事を書いている。
ウクライナ東部、兵力引き離し完了 独仏ロと会談へ調整急ぐ
https://www.nikkei.com/article/DGXMZO52103060T11C19A1000000/
ウォールストリートジャーナルなど経済紙はこの基地外じみて、いつまでも終わるに終われないウクライナ話が続くと、IMF/世銀などがダーティー勢力のおもちゃになっていくことに(まぁそうなんだが)危機感を持っているんじゃないかと思われる。金の切れ目が縁の切れ目ってやつ。