一昨日、ロシア海軍が極超音速ミサイルZirconの発射実験をして成功したという映像が出回っていた。基本的に対艦ミサイルですが陸上にももちろん撃ちこめる。
で、このあたりの話は、これまでも何度も書いた通り。
最近ではこれか。
START&ミサイル:狂ってみたところで始まらない
プーチンはこの極超音速ミサイルの開発者を、ソ連の核物理学者でソ連の原爆開発プロジェクトを率いたクルチャトフさんとか、世界初のICBM開発者のコロリョフさんとかになぞらえて称賛してた。
プーチンを悪し様に言う趣味が楽しくて仕方がないNHKをはじめとする各種メディアは、日本のためを思うなら、この意味を一度は考えてみたらどうなんだろうと私は真面目に懸念しますよ、ほんと。
そんな中、思わぬところで、本職の人がこれはイージスじゃ撃ち落とせないと言っているのを発見。
【今後は極超音速ミサイル対応が必須。陸上イージス構成品では落とせない→極超音速ミサイルの試射成功 海上から、音速の8倍―ロシア 】
— 佐藤正久 (@SatoMasahisa) October 7, 2020
現在、防衛省が考えている陸上イージス構成品を洋上に設置するやり方では、迎撃不能。国民を守れない、時代遅れの装備品に。再考が必要
https://t.co/NBZbgO96ly
もちろん、再考が必要だ → 新しいシステム作るのに金くれ、
という軍産に抱えられた議員ならではのパブリケーションだろうとは思う。
だがしかし、実際問題、現状認識としてはメディアよりはまったく正常。
つか、このあたりは散々アメリカで言われていることなんだけど、メディアとかシンクタンクに勤めてる人たちにはそんなに詳しい軍事知識がないのが通常。また国際的な政治知識も大してない。
だから常にとんでもなくいい加減な、ハリウッド映画で見たような雰囲気で、アメリカは世界一強くって、どこもかしこも束になってもかなわないんでしょ?みたいなことを前提にしてものを見てる。
そしてそれを前提に「戦略」を組んじゃう。するととんでもなく危険なことを進めてたりする(例:シリアのヒラリー)
すると多少なりとも本職の人とか、多少なりとも軍事に詳しい人たちなんかが、現実を前に「これはイカン」という時にウォーニングを投げる。
だけど、その時そこには現実を受け止められないパブリックばっかりが妄想にまみれて存在する。ど、どうしよう、となっちゃう。これがとっても危険。
現実には、軍 vs 軍が本格的に組み合うと、通常兵器の小競り合いだって、地理的要因、動機などなどが重なるから、米軍が出てきたらパー――っと終わる、みたいなドラマみたいな話はそうそうない。
■ 大戦争を望まなければいい
で、上の軍産議員が、これでは日本を防衛できない!とか言ってますが、こんなミサイルが飛び交うような大戦争を志向しなければ、問題ないでしょう。
ロシアを崩して、金融資本に大きな肉を取らせて、俺もおこぼれもらいたい、みたいな卑しい欲を捨てて、普通に時々喧嘩したり、握手したりの仲になればいい。共存すればいい。
海保が向こうの警備と悶着起こして銃撃戦になるとか、腹立てて乗り込んで殴り合って双方5人ずつ死ぬ、ぐらいの話で終わる仲なら隣人同士の出来事。しばらく頭に血がのぼって制裁合戦して、半年後やめる、でもいいし、関税かけてやる、ぐらいもいい。大戦争になるよりよっぽどいい。
昔の日本は、相対的に小さな暴力の連続を、国民的な恥みたいに煽りに煽って、感情を掻き立てて、話を大きくして抜き差しならない事態にさせることがよくあった。そしてそれが重なり合って、犠牲者が増えていくとそこにも感情的に引き返せない人々が加わり、後戻りできなくなった。
その愚を再び起こさないようにするのが戦後日本の出発点だったはずだが、ここ30年ですっかり嘘の歴史を仕込まれているので、まったく恐ろしい。
丸山穂高の馬鹿発言の時も、なぜいけないのかまで落として話せてなかったですね。
戦後教育が本当に失敗しているのは、戦前の日本がどうして失敗していったのかの重要な部分を無視しているところだと思う。タイムラインを付けて歴史を見せないから。
小さな愚行の連続を止められなかったことが大問題だったし、もう1つは、37年間に3度先制攻撃をしたこと。後者の部分は特に、もっとずっと重要視されるべき。
■ プロパガンダって長期的には愚行
で、上の軍産議員の下についてるコメントが、いやなんかすごいわけですよ。勝手に可能です、とか言っちゃう人もいるし(笑)。
全然問題がわかってない!!
だけどやたらに、無駄に、馬鹿みたいに、好戦的。
先制攻撃すればいい、とか、核ミサイル打てばいい、みたいな。
全然意味がない。防衛にならない。先制攻撃したらって、最近の世界の多くの国と地域の人たちなら、ロシアは自分ちの防衛はかたいからなぁ、みたいなことを直ちにコメントする人がいるんだが、日本ではこれすら知られてないよね。S-400、500でどうしてあんなに騒ぎになってるのかも知らない?
いや、問題はそこではなくて、先制攻撃して、その3倍返しされたら日本列島の重要部分は確実に破壊されるんですけど、どうするのというところ。
さらには、核ミサイルは1本撃つとステージが変わる魔法のツールじゃないんだから、同じくお返しされたらシャレにならない世界しかない。
基本的に日本はミサイル戦争で勝算はありません。なによりもまず、領土が狭いから。
もっと真面目なことを言う人もいるだろうけど、でも、唖然とするようなレベルの頭が、小戦争を大きくしていく際にものすごく問題になるのは歴史が証明してる。
昔は在郷軍人会とかがこの手の、俺たちは強い、ってな態度を植え付け、さらに太平洋戦争に至るあたりでは小説家たちが架空戦記を書いて、書いて書きまくって、(架空の)兵器があるから大丈夫だ、と青少年に思いこませていたと言われている。(勝手に信じたのだとしても)
大丈夫、神風がふくからと少女はいい、潜水艦富士があるから負けないと少年がいう、みたいな感じだったみたいだ。(潜水艦富士が架空の兵器)
思えば、今日のプロパガンダ屋に釣られてる人たちも似てる。日本は素晴らしいから大丈夫とブロガーがいい、日米共同開発があるから大丈夫とtwitter君がいう、みたいな。
これをどうやって抑えられるのかを考えないと、昔来た道は今も道、みたいなことになると思える。
プロパガンダって、特定の目的を達成するためには便利でも、長期的には、部分、部分できっちり切り分けて回収するような仕組みでも作らないのだったら、敗北への黄金の道だと思う。
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