関ヶ原合戦 家康の戦略と幕藩体制 (講談社学術文庫) | |
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笠谷 和比古氏のこのご本は今では戦国理解、江戸初期理解の基本の一つみたいになっていると思うのだが、20世紀中に語られていた(先端の学者さんはともかく)ストーリー、理解の枠組みとは結構違っていた。
2003年の日文研における笠谷和比古氏の講演を見たら、そのへんの新しく語られてきた知見と従来の説との差異を語っておられた。こういうものが何年も経って家で見られるって素敵。
関が原の戦いで家康が勝って家康は余裕で征夷大将軍になったという筋書きはおかしい。なぜなら関が原の戦いにおける東軍の主力は豊臣系大名で占められていたから。というのが前半。今となっては全然珍しくない説だが2003年当時こういうべき話題だったのだなとあたためて知る。
大河ドラマでみても20世紀中は概ね家康余裕説だった。特に、『徳川家康』(1983年)は、まぁ山岡宗八の説がそうだから仕方がないのだが家康余裕ありすぎで、なにか鼻白むほどの展開で、特に後半は家康はなんでも知っている、なんでも解説しちゃうぞ状態で困った。後半は脚本が悪すぎる。
『葵徳川三代』(2000年)はその当時までに得られた学説をいろいろ整理しながら進んでおり、津川雅彦演じるところの家康は強そうではあるし勢いもいいが、大名間の工作、朝廷への工作に余念がなく、まさしく食えない親父として描かれていた。
歴史は進展し、開拓されていくものだなと改めて思うし、NHK大河ドラマというのはそのスタッフやプロデューサーの素養、傾向に大きく依存しているのだろうなと思う。
笠谷先生の後半は参勤交代のスケール評価とその功罪を手短に。本当は徳川吉宗についても語りたかったそうだが時間切れとなった。徳川吉宗の啓蒙君主的傾向については別のところで語られている。