赤穂城断絶 [DVD] | |
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ご存知、忠臣蔵。元禄赤穂事件を語る、ではない。元禄赤穂事件という意味では不足だが、忠臣蔵のエッセンスをということならこれは本当に素晴らしい一本。
視聴を終えると、思わず、お見事でござった、とか時代劇めいたことを言いたくなる、インパクトの強い作品。
歴史好きの私としては、このあたりの話は事細かに、くどいほど描いてもらっても一向に問題ない。つまり、大河ドラマのようにある意味でこれ以上ないまでに間延びしたものでもついていける(ドラマを求める人はこういうのを嫌うんだろうと思う)。
ということは、この『赤穂城断絶』みたいな短い作品で忠臣蔵はどうなのか、と見る前はあまり期待していなかった(とはいえ160分という長さは映画としては短くはないのだが)。
しかし、この映画のテンポの良さ、ピリピリっと切れのいい役者の表情、身体の動きを見ると、エッセンス忠臣蔵とでもいうべき作りで、これはこれで良いのではないかといたく感心した。颯爽としてホロリと苦い、ベタといえばこの上もなくベタだが、かなりカッコいい。このへんはやっぱり深作欣二の才能なんだろうなぁ。
深作欣二の才能は才能として、この映画の特徴はまずものすごい人数をかけていることと、その群像の中におさまる東映オールスターともいうべき役者陣の濃さ。
まず、千葉真一(不破数右衛門)、渡瀬恒彦(小林平八郎)という存在感の濃い役者がその壮年期においてあますことなく動いてくれてます。討ち入り中にこの二人が切りあうシーンがドラマとしてはハイライトだろうと思う。で、最近のドラマは細かくカットして、やたらに俳優のアップを見せるけど、この二人のシーンは二人の派手な立ち回りをずっと追う仕立てでショットが長い。それでこれだけダイナミックで途切れない映像を見せられるこの二人の能力の高さは素晴らしい。
さらにセットの具合といい、一人が動くと後ろで誰かが動き、映るか映らないかわからないところまできちんと作ってる。ちゃんとおさまりよく動いている。このあたり、さすが東映というべきか。
近藤正臣、原田美枝子の夫婦も切なくて切なくてものすごくいい。萬屋錦之介(大石内蔵助)と岡田茉莉子(りく)の夫妻は圧倒的。
森田健作(間十次郎)、峰岸徹(堀部安兵衛)は、熱い気持ちはいいんだがよく考えるととっても不用意な動きをしているのだが・・・という微妙だが魅力的なキャラクターがとても似合ってる(とても政治家に向くキャラではないわけで、千葉県の人には申し訳ないが)。
丹波哲郎の柳沢吉保は、もし柳沢がこんな人ならば後年もっと評判がいいのではないのかという気もして役があってないようにも思うが、ドラマ的にはOK。
俳優陣の活躍は書ききれない。個々の俳優さんのファンの方も楽しめる。
それにしても1978年あたりの映画はかなりいい。これもその1本。こういうのはもう本当に撮れないんじゃないかなぁと思うと寂しい。
が、しかし、こうやってDVDがあるわけで、それならそれでいいかと思って楽しめばよい、と思っておくことにする。
赤穂ものでの私のイチオシは、大河ドラマ『元禄太平記』(1975年)。柳沢吉保は石坂浩二、大石内蔵助は江守徹で、この二人が友人というのではないが、赤穂事件以前から好敵手として互いに認識していたという設定。
石坂、江守という知的な人たちが主人公なので、ダイナミズムはないが深みがあった(でも大河は冗長になるので、隅からすみまで素晴らしいというほど良い出来だったとは言えないのは仕方がない)。
浅野内匠頭が片岡孝夫、今の片岡仁左衛門というのも特筆もの。めちゃカッコいい内匠頭。史実なんか無視してでももっとずっと生かしておいてもらいたかった内匠頭。
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