タリバンがアフガニスタン全土に支配を確立しそうだな、といった状況を受けて、米などでは、なんという撤退なんだと自分ちの夜逃げスタイルの撤退に呆れたり、腹を立てたりしている人たちが見られる。
だがしかし、現状では、空爆してもう一回取りに行けと言う主張を持ってるのはそんなに大人数じゃないと思う。
それよりも、問題は、この邪悪チームですね。これは日経。
タリバン復権、中ロ脅かす イスラム過激派流入の恐怖
中露を脅かす、とか言ってるけど、要するに、イスラム過激派を作った張本人たちが、なんとかしてタリバンをISISにして、再び騒乱の巷にする気でいる、そうあってほしい宣言をしているようなもの。邪悪な奴らだよ、ほんと。
大雑把にいえば、タリバンは現地の人、ISは黒いアラブ+ナチ残党+三極委員会の産物、ぐらいに覚えておけばいいんじゃなかろうか。
タリバンも90年代はしばしば基地外だったりしたこともあるけど、現地だからこそ、外から来る過激派に違和感を持ったり、抵抗していく動機が生まれていって、変化していったわけでしょ。何度も書いている通り、チェチェン、シリアのケースを思い出せばいい。
だけど、もちろん、世界のド金持ち集団である三極委員会(日米欧)が金使って、宣伝しまくって、そこらで事件起こしまくって、ほうらやっぱりタリバンは過激派なのだ、という方向に持って行かれてしまう可能性は絶大にある。NATOは平気で秘密の軍を使うし、MI6は殺人ライセンス持ちと言われるぐらいの悪質集団。
そして、現地民はいろんな面で弱いかもしれない。
ガニは、車4台に現金を詰めて空港に向かって、ヘリに詰め切れず一部を置きっぱなしでヘリが飛んだらしい。(在カブールのロシア大使館の人談。ここ)
こういう具合に金が湧いて出れば、喜んで傀儡になる奴が出てくるのは世の常。日本だって占領期に、米の占領軍のために働くと法外な金がもらえたっていうでしょ。娼婦なんて将校向けとその他があったというし。
そこらへんがどういう組み合わせになっていくかを、じっと見ているのがこの一件で最も知見のあるロシアさん、ということでしょう。ウズベキスタン、タジキスタン、トルクメニスタン、キルギスタンというあたりとロシアの付き合いは古い。
そのうち、19世紀後半にできたロシア帝国のトルキスタン総督府の話を書こうと思うけど、これをロシアによる現地民の征服である、というのを外側の人間が過剰に言い立てて動乱を起こしてきたことが、なんというか、ここの地域の混乱の原点かもしれない。無駄な努力だったというしかない。
多分、ここを整理していくとウィグル問題ももう少し落ち着いてみられるようになるのかもしれない、とも思う。
でもまぁ、ユーラシアの文明の変化、伸長、勃興、凋落、消滅って、そうやって揉めるからこそ起こることも間違いないわけで、そこらへんは、なんでもかんでもプロパガンダ目的で集めるんじゃなくて、地道に整理していくのがいいと思う。
■ イスラム国になるとは思ってない
で、まるで日経の「疑念」にお答えするかのように、ロシアの大統領特使のアフガニスタン問題の専門家、Zamir Kabulov 氏は、
ロシアは、アフガニスタンがイスラム国に似たものになるという懸念は持っていない
Russia has no concerns that Afghanistan will resemble Islamic State — diplomat
と言っている。
しかし同時に、注意深くモニターすることが重要、簡単に道を外れていくことはあり得るから、とも言ってる。まさに、上述した通り、ド金持ち集団の悪意を甘く見てはいけないし、人々のナイーブさも甘くみてはいけない、ってことでしょうね。
また、このカブロフ氏とロシア大使は、カブールでタリバン支配層から派遣されるコーディネーターと火曜日に会う予定であるらしい。
Russian Ambassador to Kabul will meet with coordinator from Taliban leadership on Tuesday
ロシア、中国、イラン、パキスタンあたりは、アフガニスタンでの大使館業務は通常通りなので、こういうことがあっても別に不思議でもなんでもない。
で、このカブロフ氏は、前にも書いたと思うけど、アフガニスタン問題での結構なキーパーソンなんだろうと思う。ウズベキスタン出身で、ソ連時代からアフガニスタンを担当している外交官。
Zamir Kabulovで検索したらこんな写真が出てきた。2019年の写真であるようだ。手前の人がカブロフさん。
タリバンのおじちゃんたちが真面目に話を聞いている様子が印象的。
■ オマケ
毎日新聞のこの伝え方が、日本の邪悪さをよく表している、って感じがした。
アフガンで影響力拡大狙うロシア 中央アジア支援、タリバンと接近
なんでもかんでもロシアが動くと、勢力拡大、影響力拡大と書く。
で、その中央アジアのスタン諸国はソ連だったわけだし、その前はロシア帝国の内部だった。当時、イスラム過激派なんて存在していない。それがいつの頃からか、アラブと西側のひも付きの過激派があたりに入り込んできて、ムジャヒディーンからここまで、どれだけわけのわからないイスラム過激派によって、人々は危険な目にあってきたのだろう?
今回のようなかなり決定的な場面で、ウズベキスタンやタジキスタンの人たちは、一体誰を頼ればいいんでしょう?
アメは、アフガニスタンでさえ夜逃げ状態。日本なんか頼っても、儲け話やオリガルヒの育成には才はあっても、誰かが命をかけないと収まらない事態にはなんの役にも立たない。
タジキスタンのラフモン大統領が、5月9日にモスクワの軍事パレードに参加したことの意味を少しでも考えてみたらいい。誰かが命をかけないとならない局面を含む、危険なことをお願いするから、ちゃんと礼を尽くしにきたわけですよ。それがわからない野蛮人は家で糞して寝てろ。
参考記事:
40年越しのアフガン騒乱 & 次の秩序へぼちぼち