オバマ氏の外交政策の支持率、37%と過去最低 米世論調査
http://www.cnn.co.jp/usa/35049742.html
ワシントン(CNN) 米NBCテレビと米紙ウォールストリート・ジャーナルは22日までに、オバマ大統領の外交政策に対する米国人の支持率が37%と両社がこれまで共同実施した世論調査で最低水準を記録したと報告した。
オバマ氏の外交政策への不信感はCNNと世論調査機関ORCインターナショナルが最近実施した世論調査でも顕著で、支持率は40%に落ち込んでいた。この数字はCNN実施の調査では過去最低だった。
この調査だけでなく、NYTとCBSが実施した調査もほぼ同様の傾向。
こっちの方が各質問項目と答えがグラフになっていて見やすい。
JUNE 23, 2014
http://www.nytimes.com/interactive/2014/06/23/world/middleeast/iraq-poll.html
この短信がこれ。
オバマ大統領の外交政策に米国市民の約60パーセントが反対
http://japanese.ruvr.ru/news/2014_06_24/beikoku-obama/
なんでこうなるのかといって、そりゃまぁウクライナもイラクも何も上手く行っているように思えないからでしょう。中国は壊れそうったって大きくなっちゃうし、ロシアは盛り返してくるし、リビアはぐじゃぐじゃ。南米は相変わらず反米だし、古い欧州は面従腹背を隠しもしないし、ポーランド外相はネオコンの星みたいな地位でEUを取りまとめるのかと思えば、米との同盟なんてさ、俺ら完全に負け組だからさ、みたいなかなりヤクザな表現で自虐しちゃうし。
ポーランド外務大臣「米との同盟なんて紛れもなく有害」
だけど、上手く行ってなくてもそれが理解可能な道筋ならアメリカ人とて我慢のしようもあるだろうけど、一体何をしたくて自分の国は外交だの軍事だのをやっているのかわからない、という感じがだんだん濃厚になっていることが問題の本質だと思うなぁ。
他の国の場合には比較的わかりやすいものがあるわけですね。自分の周辺国との関係が危機的で一色触発になったらそりゃまずいわけだし、それでも戦う理由があるなら我慢もする。しかし、アメリカの場合、グルジアだのウクライナをNATOに入れてロシアと一触即発状態になることのどこに自分たちの利益があるのか、まずさっぱりわからないでしょう。
中東だって同じことで、ある程度は石油資源と密接なドルこそアメリカの強みといわれりゃそうかと思うけど、中東の宗教対立まで煽るような取り組を長年やっているわけで、これってどうなのよ?状態なんだと思う。
■ プレーヤー抜きに語られても・・・
さらにいえば、イラクにしてもシリアにしても、そして911にしても、サウジアラビアの関与を抜きには語れない。が、そこを厳しく問い詰めてみるという傾向は基本的に主流なところではない。
また、2006年頃だったか、ミアシャイマー氏やスティーブ・ウォルツ氏が「イスラエル・ロビー」という語で盛んに、こここそがアメリカの外交を左右していると告発していた。「イスラエル・ロビー」というのはイスラエルを直接に意味するわけではないと注釈をつけつつ行っていたわけで、それはつまり、大きな資金を持つ集団を示唆していた。その意味で、「イスラエル・ロビー」と言う語はある種の政治的是正表現ぎりぎりだったかもしれない。
と、このへんの、大きな影響力を持ち、場合によってはアメリカという国を引きずっているプレーヤーを抜きにして、「アメリカのがいこうほうしん」とかいうのを語れと言われてもなぁ・・・というのもあるでしょう。
また、昨日からちょっと書いたように、ウクライナ、グルジアといった国をNATOに入れるというアイデアは、クリントン、ブッシュの時代からあるにせよ、これを欧州内でやっているのはポーランド、スウェーデンあたりとNATOという今や国家を離れつつある組織。ロシアを敵にするということは核戦争さえ考慮しないとならない話なのに、アメリカがしっかりハンドルしてないのではないのか、という気もする。マジで恐ろしいことをしていると思う。
ドイツのある雑誌の調査では、このたびの騒動を元にポーランドが提案していた10,000人のアメリカ人をポーランドに駐留していただくという有難いプランに対し、74%が反対と答えたとか。つまり、ここも、アメリカの顔を立ててしかめっ面をしつつオバマと共に制裁を語るメルケルさんの足元では、全然そんなことはない、と。その前には、ドイツ経済界はそもそも強硬に制裁反対論者。
そういう意味で、多くのアメリカ人が画期的に外交に乗り出す日は、まぁあまり期待できない。彼らは、要するに絶望しているわけですね。
でも、それでも引きずられるのがアメリカという国の定めだとは思うんだよね。気の毒だけど。まず在外なんとか人集団に引きずられるパターンをなんとかしないと、とは思うけど無理でしょ。
■ 意味のわからない外交の例
ウクライナに注目している私なので、これを例にしたくなるのだが、例えば今年の春先のクリミアの問題にしても、別に突如今年フォーカスがあたった話じゃない。もう20年近く、だらだらとロシアの回りの国をNATOに入れましょうという方針を維持している。しかし誰もなぜそうなったのか分からない。
例をあげると、先日検索してて偶然みつけたこの2006年の記事がなかなか生々しい。ちょっとリンクさせていただきます。
グルジアとアゼルバイジャンに米軍駐留:クリミア半島でNATO軍事演習
http://ima-ikiteiruhushigi.cocolog-nifty.com/gendaisekai/2006/06/nato_0fed.html
NATOが、つまりアメリカがアメリカの軍人をクリミア半島に入れて演習をするという話。既にこの時点で大きな騒ぎだったわけです。
結果的には、実際、米軍人を入れたんだけど、クリミアで抗議行動が起って確か途中で返したんじゃなかったか? 私の記憶では、アメリカ側からも批判の声があがってたし、一般のアメリカ人がこれをウクライナで目撃して非常に驚いていた。うちの政府は何をする気なんだ、と。
で、そこから8年経って、アメリカさんというかNATOさんはまだ、グルジアとウクライナをNATOに入れるぞ!と頑張っている。当初予定されていたのは、ベラルーシ、ウクライナ、グルジア、アルメニア、アゼルバイジャン、モルドバの6か国。
このうち、ベラルーシはロシアと運命を共にしますと態度をあきらかにしたし、アルメニアもロシアと行きますになった。アゼルバイジャンは装備も訓練もNATOがらみだと思うけど、ロシアとイランに挟まれてる状況なんで、経済は西側と大きくやるけど他はぼちぼちって感じ。そういうわけで、残りは、グルジア、ウクライナ、モルドバの3か国。
さて、これをアメリカが取ったとして、アメリカの安全保障に何か寄与するんでしょうか? アメリカ人の自尊心を鼓舞するでしょうか? モルドバってどこにあるか知ってますか?
前からパット・ブキャナンが言っている通り、ルーマニアをNATOに引き入れて、ロシアと本格的に対立することのどこが安全保障なんだ、と。
反露の巨大なウクライナ軍を作ることはポーランド人にとっては夢かもしれないが、アメリカにとって利益があるとは思えない。
■ 冷戦以降の外交方針の「致命的な誤り」となるのか
こうやってつらつら考えて来ると、1997年にジョージ・ケナンが言ったという、
NATOの拡大は、アメリカの冷戦以降の外交方針の「致命的な誤り」となるだろう、は、痛い。致命的だけでなく、the most fatal errorと言っていたことを真剣に考えるべきだっただろう。
ウクライナ動乱:NATO東方拡大問題(1)
これはつまり、こういうことだったんじゃないかと考える。
ロシアを敵にするなとは、ロシアの強さの問題だけでなく、米がロシアを勝手に敵認定して、そこら中に勝手に突っ込んでいくことによって、1) 複雑な背景を持った欧州世界で個々の対立を引き起こし、2) ロシアはバックアップとして欧州以外の中東を含むアジア方面に力を投影することを意識する、3) 結果的に米国に対抗する、defiant(反抗的)な国家国民が増え、ゆっくりとそのグルーピングが意識されるようになる。それは、最低でも米の支配構造の一部が漸次無効化していくことだ、という感じでしょうか。
つまり、一言でいうなら、ロシアを数多くの国にとってのalternative、もう一つの選択肢にさせたらあかん、ってことだと思う。ちょっとマズイからロシアに付いておくか、ロシアがそう言ってるんだったら俺もいっとこか、とか思わせないこと。
こうさせないためには、「アメリカにとってとても重要なパートナーとしてのロシア」にすればよかっただけ。これならロシアは永遠の2番手として alternativeではなくなり、アメリカは多少わがままだが善良なヘゲモン(覇権国家)として存在できただろう。
核戦略において他国の追随を許さない、その上互いに資源国であるこの2国が緩く連携していたら、一体誰が逆らおうなんて思っただろう?
