イスラエル vs ムジャヒディーン勢力との戦いは、現地も流動的になる要素を含むけど、アメリカ国内では、ますます、民主党は狂ってると思う人たちにとって支援になると思う。
私はテッド・クルーズが好きだったことは一度もないし、今後もないと思うけど、この見取りは簡潔。
Heartbreaking.
— Ted Cruz (@tedcruz) May 17, 2021
When given a choice between Israel defending itself and Hamas terrorists murdering women & children, over and over again Dems choose the terrorists. https://t.co/TE0js0QbdT
バーニー・サンダースが、ガザの破壊を非難して、ただちに停戦を求め、あわせて、イスラエルに対する軍事援助を見直すべきなのだ、これは違法だ、と書く。
するとテッドが、自国を防衛するイスラエルと女子供を殺すハマスのテロリストを選べと言われて、民主党はテロリストを選ぶんだな、と返す。
これは、何でもない時なら、なんでテロリスト扱いしてんだ、みたいな議論が成り立つ場合もなくはないんだが、誰がどう見ても都市にロケット弾の飽和攻撃をしかけたのはハマスで、1日2日どころか1週間で3000発もぶち込む人たちを前にしたら、イスラエルが悪いというのは難しい。
どうせなら、民主党はジハード主義者と懇意だからな、ぐらいまで持っていってくれると問題の可視化に大変役立つわけですが、さすがに共和党もそこまでは言わないでしょう。同罪だしね。
ということで、アメリカ国内や欧州の各都市では、あいからず、「パレスチナ」支援を求める人たちが市中に出て支持を訴えるの図が繰り広げられていたが、これが広がる要素はほとんどないと言っていいでしょう。
(「パレスチナ」という語が曲者。アメリカ共和党系メディアはハマスが~と書いて、一般パレスチナと区別してる。ロシアメディアも、場所としてのパレスチナ、ガザと、過激な行為主体としてのハマス、過激派を区別して書いてる。)
ただ、ネット上では数が増えるかもしれない。
なぜなら、主流メディアはシリア問題とウクライナ問題のカバーアップを止めてない。つまり、ジハード主義者を使う算段は止めてないので、イスラム過激派が動いた時に、シオニストを倒せ~とかいって出てきてくれる層はキープしたいところでしょう。
シリアでCIAはアルカイダ系を、米軍はクルドを支援して、同国同士で相打ちになる局面さえあったわけですが、こういうとんでもない事態を見落とすから、話がわからなくなる(見落としていない、アメリカの共和党の一部の方が見通しがいいのは当然だ)。
■ キャンプデービット合意
で、「パレスチナ」とか「ガザ」という語がつくと、往年の反イスラエル運動を思い出して、そうだ、パレスチナの民を救うべきなのだ、資本主義が悪い、植民地主義が悪い、だからイスラエルを倒せ、みたいなことをやっていた人たちが乗り出したり、書き物をしたりする。
だがしかし、彼らの若い時のパレスチナ情勢というのは、もうとっくにない。
60年代ごろまでが一番、なんというか、今から考えるとずっと正常で、ずっと応援のしがいもあったと言えるのではないでしょうかね。当時まで、アラブ人は、イスラエルと戦争をして、勝って追い出そうとしていた。そして、70年代初頭まではそれはあり得ない話でもなかったように見える。エジプトは大きかった。イスラエルはそんなに支援されているとは言えなかったし、モノも万般じゃない。
それが変わったのは、前にも書いた通り、アメリカがこの地域でのソ連の影響を排除するために、エジプトからソ連の軍事顧問団を追い出させて、一方的に友好条約を破棄させて、エジプトを完全な親米政権にして、エジプトとイスラエルに和平をさせる、という状況が出来たから。
ではその時パレスチナはどうなると思ったのか・・・。
1978年9月にカーターと、イスラエルのベギン、エジプトのサダトが会って会談した、いわゆるキャンプデービット合意というモメントがあったわけですが、アラブ諸国はこれに反対。だがしかし、反対してもエジプトが抜けた後を受けてアラブが一致する、といったことにはならなかった。むしろ、戦争をさせられて無意味に消費させられたって感じではなかろうか。
1979年3月、ビギンとサダトはワシントンDCでエジプト・イスラエル平和条約に署名。この中で、「パレスチナ人の正当な権利」を認めて自治権を認めたらしい(この契約の本文を私は確認していない)。
で、今となって思うに、ヨーロッパ列強だったら自分のためにこんな条約は結ばないだろうな、と思う。なぜなら、パレスチナ側に立つ保証人がいないから。
オーストリアの中立条約を思い出してみればいい。オーストリアはそもそもヒトラーの母国だし、第二次世界大戦を通してドイツとまったく同じ道を歩んだわけだけど、戦後は中立国となってthe Westもソ連も一定期間後引き上げ進駐してない。これは、利害の両当事者が保証人になってるからこういうことが起きる。オーストリア内の親ファシストと反ファシスト(親共産)の両方をバランスさせることができた、って感じ。
この当時の世界で、このいう感じでカーターのやっていることを批判していた人は、きっといないことはないんだろうけど、今に残るものとしては見えない。カーターはパレスチナを潰すためにやっているんだ、って見えてなかったっぽい。※1
ちなみに、サダトはその後1981年に暗殺される。暗殺したのはイスラム原理主義者、ジハード団なるグループに所属する人だそうだ。
そして、1979~1989まで多額の予算をつぎ込んだムジャヒディーンのためのサイクロン作戦では、アラブ諸国から多数リクルートして「フリーダムファイター」にしたてて、当たり前だが暴力を奨励する。まぁ、アラブ人の傭兵化みたいなものでしょう。全然フリーダムじゃない。
wiki サイクロン作戦
サイクロン作戦 (Operation Cyclone) とは、アフガニスタン紛争中の1979年から1989年にかけてムジャヒディンに武器や資金の提供を行ったアメリカ合衆国中央情報局 (CIA) の計画に対するコードネーム。
隣国パキスタンの支援を受けたのみならず、ソビエト連邦による侵攻の前から、アフガニスタン民主共和国政権と戦闘行為を行っていたイスラム武装勢力への支援を強力に推進した。
(ただし、日本語版の「サイクロン作戦」は、不沈空母を名誉だと思った日本らしく、相当無理やりこの行動を擁護している。)
■ ホメイニ帰国→無宗教ソ連憎悪の開始
他方、もう1つの大国イランでは、政情が不安で革命モードが出来上がっていたところに1979年2月ホメイニがフランスから帰国。ほとんどレーニンですがな、といった趣。
帰国前1月27日に、ホメイニ側はアメリカのカーター政権に代理人を通じていくつかの回答メッセージを送っていた。これはつまり、カーター政権側が言質を取ったということでしょうね。ちゃんとチェックして、反米ではない、という言質を取っていたことが、近年の情報公開資料で出てきた。
Two Weeks in January: America's secret engagement with Khomeini
https://www.bbc.com/news/world-us-canada-36431160
https://www.bbc.com/news/world-us-canada-36431160
ホメイニ側は、アメリカに対しては特に敵意はない、イギリスとソ連を抑えるために必要、という認識で答えてる。
イラン内にも多数のユダヤ人がいるが、イスラエルのユダヤ人とは分けて考えるから、そこは心配ない、などともある。(イスラエルを何だと思ってるんだろう?)
また、ソ連は無宗教なので理解しあえないだろう、みたいなことも言ってる。あなたがた(アメリカ)はクリスチャンだが、ロシアは無宗教なので深く理解しあえないだろう、みたいな。
これこそ、ブレジンスキーのムジャヒディーン計画にとってとっても重要なツールですね。
ソ連は無宗教だ、宗教のない人は不道徳だ、だからソ連は不道徳だ、悪魔だ、みたいなことが、この時期からの冷戦を語るのに欠かせない要素。
これによってイスラム原理主義者たちが勢いづくだけでなく、アメリカでもこの点が強く主張された。カーター、レーガン共に福音派を母体とした政権ですから、これはとっても重要。
後日談としては、冷戦期のアメリカ人はこれをまともにくらってるので、冷戦が終わってロシアを見たら、なんだクリスチャンの国じゃんかとなって、だったらなんでソ連がないのにロシアと敵対する必要があるんだと考えるアメリカ人が実は今でもたくさんいる。あれは何だったんだ、みたいな。
それはホメイニ支配下のイランとの共同作業ですよと教えてあげたい(笑)。
■ 鄧小平登場
さらにもっと東では、
1979年1月1日、中国とアメリカ合衆国との国交が正式に樹立。
鄧小平は1月に直ちにンワシントンに行って、カーターと会談。
7月には、深圳をはじめとする経済特区を設置して、外資を導入して工業化を進める政策を開始。
よく言われる、「白猫であれ黒猫であれ、鼠を捕るのが良い猫である」 とかいうセリフで知られるのはこのあたりで吐いたものらしい。要するに、儲かるなら何でもありというのがこの人の方針。
(無宗教者は悪魔だ、敵だという話はどこに行ったんでしょう???)
さらに、1980年、ソ連との中ソ友好同盟相互援助条約を破棄。
ソ連のアフガニスタン侵攻はけしからん、と激烈非難して、モスクワ五輪ボイコット。ムジャヒディーン支援ももちろんやっちゃう。
アルカイダ保護者が叫ぶ、サイクロン作戦、トランプ
彼らの西部国境にあるウィグル問題が取りざたされる直近の理由の1つはここだと私は思います。中だけでなく、その隣接地帯のムスリムが、中国が過激派に支援していたことをまだ忘れたわけではないだろう。
そもそも、この場所は、清朝時代にも悶着があって、その人たちは清を嫌ってロシア帝国の方に逃げていき、その後も、中国よりソ連に近づいていた人たちが結構断続的にいたところ。それを断固無視してアフガニスタンのソ連コントロールを解体した。ということは、多分、アフガニスタンを米中管理して、一帯を中国支配にしようという野望なのでは? それが現在の一帯一路のもう一つの理由なのだろうなとも思うし、それならそれでいいけど、だんだんに思うに、これって上手くいくのかしらと思うこともある。お手並み拝見って感じ。
今、ウィグル問題はアメリカが作ったみたいなことを言う人が多いですけど、確かにフレームアップはアメリカ製だけど、いやぁ、歴史的にみればアメリカ製よりはるかに深刻な問題。直近はムジャヒディーンです。
■ いいけどさ
で、これらすべての様々な出来事の果てに、1979年12月ソ連軍がアフガニスタンに入りました、となって、そこから、わーーーーっとソ連悪魔化計画=イスラム原理主義者万歳主義が進み、現在に至るまで続いている。
その間中東では、イラン・イラク戦争で両者共に疲弊し、ソ連崩壊後は、イラク、リビア、シリアという、いずれにしてもパレスチナ側を支援していた国々が悪魔化され、潰されたり、潰されかけたりしている。現在進行形。
にもかかわらず、言論環境上は、イスラエルに野望があって中東の混乱が起きているようなことを書く論説であふれている。ちょっと違うでしょ、と思う。
また、人権外交というのはこのジミー・カーターが言い出したもの。イスラム過激派に擁護してもらう人権擁護というのはどんなものなのだろうかと、今となってはバカバカしくて笑いもでない。
■ オマケ
※1 のところ。
わかった。これがつまり、今に続く迷惑な一極支配妄想への道だったということなんじゃないのか。つまり、それまでは、いろんな局面はAさん、Bさんという強いパワーが保証人となってパワーバランスが崩れないような仕組みを作ることが当然だった(ヨーロッパのバランスオブパワー発想)。しかし、ここで、アメリカしかいない世界を作って、アメリカは善意の覇者としてすべての利害当事国の上に立って保証しているかのような恰好(錯覚)を作った。その表紙についているのが「人権外交」。