ロシアの声の英語版に非常に興味深い記事があった。1日待ったけど日本語版に出てこないのでご紹介。
11 July 2014, 03:51
Crimea is de-facto not part of Ukraine – Luxembourg FM
Read more: http://voiceofrussia.com/news/2014_07_11/Crimea-is-de-facto-not-part-of-Ukraine-Luxembourg-FM-2319/
ルクセンブルグ大公国の外相が、「クリミアはデファクトでウクライナじゃないです」という見出しに、何を言いだしているんだろうと思ったら、結構ぶっちゃけてた。
クリミアはもうde fact 事実上ウクライナじゃないです。言うまでもないですが私たちはこれをde jure 法律上の権利としては認めませんよ。でも、私たちが何か解決法を見つけ出せるなんて信じてるのは、幻想です。ロシアはこれについて私たちと話さないでしょう。しかし、10年もたてば物事変わる可能性もあるわけですよ。
また、ウクライナのポロシェンコ大統領は軍事で片を付けようとしてますがそんなの無理。ドイツの外相のアドバイスに従って、ロシアとOSCEと対話すればいいんです、ともさらっと言う(笑)。
ヨーロッパとアメリカは自分の好きなように世界を作り上げるなんてできません、ロシアと中国なしで世界秩序なんかできませんよ。
等々。
思わず笑ってしまったのは、確かに欧州の古い国というかお家からしたら、領土って動くもんだから、いつまでそんな返ってくるわけもない領土のために制裁だのなんだの言ってるわけ?という感想を持っても不思議じゃない。
さらに、これを読んで、はたと、いかに現在のネオコン+介入主義者たちが「欲張り」かとも改めて思わされた。だって、あんたたちのものでもないのに、なんでそんなに拘ってるわけ? だから。
多分、各国の元領主の人たちもそう思ってるんじゃないのだろうか。あのアメリカ人たち、なんで他人のものにあんだけ執着するわけ? そもそもロシア帝国領内の話に、なんでアメリカ人がうるさいこと言うわけ? 欧州ですらない、なにあの人たち?じゃなかろうか。
あはは。一極支配が壊れてる。
■ 古い欧州どころか古い古い欧州
さらに、この間、おお神聖同盟かと思ったオーストリアのフィッシャー大統領とロシアのプーチン大統領の会談は、この外相がフィッシャーさんに推薦したのだそうだ。
神聖同盟は死なず?:オーストリアとロシアの会合
思わず、これってつまり、ハプスブルグ繋がりですか?とか思うのだったが、とりあえず現在のオーストリアはかつての主人とは切れているのでそこはよくわからない。
でも、とりあえずいえるのは、ルクセンブルグ大公国の外相の重要な発言、行動というのは、大公の見解なんだろうな、と考えるのは基本的に正しいだろう。そして、大公の前後左右には似たような人たちがきっといるんじゃないのかな~と考えてみることはそう馬鹿げてはいないだろう。
とうわけで、大公を検索したら、なんと、あのD-デー、つまりノルマンディー上陸作戦を記念した式典において、プーチンの隣で昼食を取ったのはルクセンブルグ大公国のアンリ大公だった。 (一番右がアンリ大公)
Grand Duke lunches next to Putin
http://www.wort.lu/en/panorama/d-day-anniversary-grand-duke-lunches-next-to-putin-5392ba6bb9b398870803263f
いや、だから何だではあるけど、欧州の利害関係は複雑なんだろうなぁと改めて思う。
で、思えば、あのDデーは、実は大きなイベントだったのかもしれない。というのは、まず第一にソ連の後継国であるロシアの大統領が参加した。
参加させないで対ナチス勝利を祝うというのがそもそも間違いだったのだが、この間違いこそがしかし、戦後の英米の秩序でもあった。すなわち、実質的にナチスをぶった倒したと言っても過言ではないロシアの貢献をゼロにして、第二次世界大戦は自由と民主主義のために英米が戦ったという話にしちゃった(冷戦があったので仕方がない、としても)。
以降、エリザベス女王とアメリカ大統領が主役みたいな感じで式典が開かれていた。
それを今回、フランスが音頭を取る形でロシアを迎えた。あたかも偶然のようにオランド大統領と確か防衛大臣が、そりゃロシアを招きましょうよ、ロシアがいないなんておかしいです、みたいな感じで進んだが、考えられたプランだったのかもしれない。
これはつまり、一つの秩序の終了宣言だったのではなかろうか。
少なくとも、プーチンは第二次世界大戦におけるロシアの地位を取り戻すという意味で、ロシアとロシア人のために、英米世界による戦後レジームを壊している。
■ 参考記事
メディア世界 vs 人間世界