トランプは政権を取るにあたっていろんな約束をしたけど、基本構造としては外での戦争をやめて国内に投資して強いアメリカになるのだ、って話だった。
外で大きな戦争には乗り出していないのでそこは一つポイントとしてあるけど、しかし縮小できたかというとまだまだ道半ば。
国内の方では、選挙民との公約がかなり微妙なケースが出てきてる。例えば最近では、鉱山を閉山させないでもっと使うと、輸入しないで米国内の資源を活用する、とか言っていたのだがケンタッキー州では鉱山が相次いで破産しているようだ。当然雇用は減る。
Trump Is Silent After Bankruptcy Wave Devastates Major Coal Producers
2週間ほど前には、トランプ政権がウランの輸入に割当てを導入しろという業界団体からの要請を拒否したというニュースが小さく出ていた。
Trump Backs Away From Barriers on Foreign Uranium
https://www.nytimes.com/2019/07/13/us/politics/trump-uranium-trade.html
輸入に割当てをしろといういうアメリカの現状はどうなのかというと、
現在、アメリカの商業ウランの93%は輸入に頼っている。2009年には85.8%だった。これは外国の国営企業の生産が増えたからだ、などとホワイトハウスのペーパーは言っている、と。
"Currently, the country imports about 93% of its commercial uranium, compared to 85.8% in 2009," Trump wrote. "The Secretary found that this figure is because of increased production by foreign state-owned enterprises, which have distorted global prices and made it more difficult for domestic mines to compete.
US President rejects request for uranium import quota
16 July 2019
http://www.world-nuclear-news.org/Articles/US-President-rejects-uranium-import-restrictions
ホワイトハウスの声明はここ。
Memorandum on the Effect of Uranium Imports on the National Security and Establishment of the United States Nuclear
https://www.whitehouse.gov/presidential-actions/memorandum-effect-uranium-imports-national-security-establishment-united-states-nuclear-fuel-working-group/
では、この93%はどこから輸入しているでしょう。米国エネルギー情報局によれば(ここ)、
カナダ、カザフスタン、オーストラリア、ロシア、あたりがそれぞれ結構なシェアを持っている。
Sources and shares of total U.S. purchases of uranium in 2018 were
Canada–24%
Kazakhstan–20%
Australia–18%
Russia–13%
U.S. suppliers–10%
Uzbekistan–6%
Namibia–5%
China, Niger, South Africa, and others (unidentified) combined–3%
Note: sum of shares does not equal 100% because of independent rounding.
ほぉ、分散してるんだな、みたいな数値とみるべきでしょうか。
しかし、ウランそのもののなのか、それとも加工してあるやつなのかはこの数値からは見えない。
そこでちょっと検索してみると、貿易統計の数値を集めたらしいところにこんな数値があった。
http://www.worldstopexports.com/us-uranium-imports-by-supplying-country/
米国が輸入している濃縮ウラン(enriched)の実に38%がロシアから来てる。
輸入の割合が小さいなら、全体として見た時たいしたことはないわけだけど、上で見たように米の商用原子炉のウラン燃料の8割から9割は輸入でまかなっていることから考えるに、この38%という数値は決して小さくない。
そして、これでも2014年から見てだいぶ減らしたようではある。特に去年から今年に大きく減らしてるようだ。
その分増えていると思われるのが、オランダ、ドイツ、UK。現在ここが56.9%を占めている。これはURENCOというオランダ政府、UK政府、ドイツ大手企業の連合による企業。
■ 大きなことは言ってはいるものの・・・
大ざっぱにいえば、アメリカの電力の2割りぐらいは原子力によるもの。ということは、欧州3国かロシア、またはその両方が、もうお前に燃料売らないと言い出したらアメリカにおいては速やかに停電が発生するということだろうと思う。
だったら、なんで国産のウランを使ってすべてを自前にしないの?という話なのだが、要するに、この前から言ってるウラン濃縮施設の容量の問題でしょう。(対ロシア制裁が見せてくれるロシアの多段階対応能力)
全世界のウラン濃縮キャパにおいて、非常に大きなシャアを持っているのがロシア。上のWorld Nuclear Orgの表組によれば、ほぼ半分。中国、フランス等が拡張する2020年でも4割ぐらい。
つまり、どれだけ自国で、あるいは自国と密接な鉱山でウラン鉱持ってこようとも、問題は濃縮能力で、その能力が足りてないんです、というお話。
どうしてこうなったのか。
多分、ウラン濃縮の方法をガス拡散法から遠心分離型へ移行するのが遅かった、うまくいかなかったからではないかと思われる。ガス拡散法は膨大な電力を使うので、商業的にペイできない。ということは軍事で使ってるものはどうなっているんだろうという疑念が生じるが、これは上のような簡単に出てくる資料にはない。
■ オマケ:311陰謀論
で、上の状況というのは今年急にそうなったわけではなくて、5年前もそう。そしてその前の20年はソ連が兵器に使ってたものを軍縮のために買うという名目で大量購入してた(メガトンtoメガワットプログラムという)。
ということは、この間になんらかの手を打てなかったってことなんでしょうかね。
それはそれとして、で、ここに日本の状況を入れてみると、日本が原発をガンガンやってると燃料を使うのでアメから見ると邪魔だったという説を考えてみることは少なくとも思考実験的にはあり得るでしょう。日本の燃料は基本的に西側グループから供給されていた。
で、この濃縮ウラン問題から311は事故ではなく事件だった説を仮説しているのが、ロシア系アメリカ人のオルロフさん。目的は、日本に原発を止めさせることである、と。
日本の原住民として思うのは、もしそうなら、その目的は事実達成されたわけだなというのがまずなんといっても興味深い。小泉が妙な役回りで頑張ってたのもこれだとなるほどなとなる。
そういえば、311後にネット上では人工地震説が流行っていたわけだけど、この話はどこに行ったんでしょう? 私としては、もしオルロフの概要が正しければ、当初騒ぎまくった人たちは「攪乱要員」だったと思うな。つまり、本当の筋に至らせないためにへんな話を持ち寄っていたというところじゃなかろうか。イルミナティとかネタニヤフとか。
どうあれこれが日本の中で多少なりとも認識される気配はないし、ない方が日本の安寧秩序のためには良いということもありといえばありなんだろうとも思うけど、一応そんな説を唱える人が大物ライターの中にいるということを書いておく。