日本の情報当局者は、日本に住む人たちを言語バリアを利用して世界情勢をガラパゴス的に理解させ、それによって利益を得ている、と私は考えているのだが、まさにこの事例がすばらしくそうなんじゃなかろうかと思った。
ロシア下院 外国メディア政府管理強化の法案可決
11月16日 5時50分
http://www3.nhk.or.jp/news/html/20171116/k10011225061000.html
ロシアの議会は、アメリカをはじめとした外国メディアに対する政府の管理を強めることを可能にする法案を可決し、冷え込んだ米ロ関係が、メディアへの締めつけという形としても表れています。
この法案は、ロシア政府が、国内で活動する団体を管理するために施行されている法律の条項に、外国のメディアも加える形で修正したもので、15日議会下院で可決されました。近く上院でも可決され、プーチン大統領が署名して成立する見通しです。
アメリカの人やその他そこから出るニュースを追ってきた人たちは、まずアメリカ議会が、ロシアのRTとスプートニクを、冷戦時代の法律を持ち出して「外国による工作」を行うものとして登録すると言い出し、ジャーナリストやロシア当局からの反対にもめげず米当局がその法を執行し、司法省がRTを登録した、という成り行きを知っている。2カ月ぐらいこれで大騒ぎをしていたから。
そして、ロシア外務省、プーチン他が、もしアメリカがRTを外国エージェント扱いするなら、ロシアはまったく同一の法律を作って報復するからなと何度も大声で言っていたことも知られている。だから、今回のロシアの措置はその報復だと多くの人は知っている、または、ちょっと探せばすぐわかる。(時間を置いて、CNNあたりがロシアが先にやったようなことを言い出すであろうところまでデフォルトか?)
しかし日本の人はよくわかっていない。そして、ロシアがメディア管理を決めた、が大きく、大本営NHKから来る。
すると、おそらくまた世界知らずの日本のリベラルあたりが、中国やロシアは中央独裁の隠ぺい体質だから情報隠蔽しないと国が持たないのだ~みたいなトンチンカンなことを懸命に言い出す。昨日あたり、バロンが中国を批判していたが、ああいうのも工作の一環かもしれないですね。
そうだ、中露に立ち向かう時なのだ、民主主義を守れ、みたいな展開が主にリベラルから来る。
で、首都の上空を外国軍に抑えられることは軽く無視し続ける右派が、対北朝鮮、対中国、対ロシア向けの情報管理を強化しなければならない、我々は敵に囲まれているのだ、共産主義は敵だとかいう雄々しい声をあげる、と。
ああ、面白い。
が、ガラパゴスがなんと考えていようと世界情勢はそれに関係なく進むでしょう。
■ これも一つの冷戦処理かもしれない
で、思うに、この成り行きは本当にここまでくることを最初から予想してこうなったのか、それとも途中からロシアが気付いてこうなったのか、どっちなんだろうと眺めている。
RTが外国エージェント登録されると言っている時から私が考えていたのは、これは結果的にアメリカにとって不利になるのではあるまいか、ってこと。
なぜなら、ロシアに対するアメリカの工作 vs アメリカに対するロシアの工作
では、比較にならないほど前者が大きい。もうず~っとやってる由緒正しい工作機関がまだ存続しているのは実はアメリカ。様々な事件の影に自由ヨーロッパだとかなんだのラジオが関係していたんじゃないかとか、なんて話は冷戦時代からあって、最近の情報開示で確認されているものもある。主流メディアを伴い、話をこさえて、内部の人たちに呼びかけて何かをする、というマジものの工作機関なわけですよ。
そりゃソ連だって工作したでしょうが、世界中のメディア、おおむね新聞のアウトレット(いわゆる媒体)の大多数を抑えているのは西側なんだから、どっちの工作が「効く」かといったら、そりゃもうお話にならない。
そういう状況にあって、ロシアがRT、スプートニクへの報復として同じ法律を造ったら、それら、由緒あるアメリカの工作機関は、晴れてロシア当局の管理下に置かれることになる。
ということで、そうなる見込みが俄然高まった模様。
対象となるメディアは、今後政府が決定しますが、議会の責任者は、アメリカ政府や議会が出資する「ラジオ・フリー・ヨーロッパ.ラジオ・リバティー」や「ボイス・オブ・アメリカ」などが含まれる可能性があるとしています。
ラジオ・フリー・ヨーロッパ(RFE)は、冷戦期から存在する古典的なアメリカの機関。
日本語のwikiがかなり真面目。
1949年6月、ニューヨークにおいて「自由欧州のための国家委員会」(The National Committee for a Free Europe)が設立された。RFEはこの組織の放送部門であった。本部はドイツ(西ドイツ)のミュンヘンに設けられ、1950年7月4日、チェコスロバキアに向けて最初の短波による放送番組が送信された。 ハンガリー動乱では、火炎瓶の製造法という不用意な放送を行い[要検証 – ノート]、責任が追及され廃止まで検討された。 運営資金はアメリカ合衆国議会より提供されており、1971年までその資金は中央情報局(CIA)を通じてRFEに渡されていた。CIAにとって放送は鉄のカーテン(東側諸国)の向こう側に向けた一般的な心理戦の一部であった。
ボイス・オブ・アメリカも、戦時中日本向けにも使われた情報操作ユニット。
思えば、ロシアが、ボイス・オブ・ロシアを改変してスプートニクにしていったのは、冷戦処理だったんでしょうね。その結果、中央からのコントロールというより現地の人たちのニーズにマッチしろ、みたいな方針が取られていると見えて(私の観測だが)、日本語版のスプートニクは国際版とはなんだか相当に趣の違うものになりました、みたいなところ(著しく情報の範囲が狭く、政治というより軽くてかわいい小ネタみたいな妙な記事が多いと、国際版ユーザーの私にはそう見える)。
でもそれでもないよりマシ。そして、イラン、中国等々の「西側」でない国が日本語版サイトを立ち上げているのは、こうでもしないとアメリカ+日本の(治安機関?)のフィルターを通さない情報が外に出てこないからですよね。みなさん、日本の一般の人々と交流しようとして苦労されているというところ。
ということで、RTへの過剰な嫌がらせから始まったこの話は、冷戦期からのCIAの情報工作機関を合法的にロシア当局管理下に置くという不思議な展開となるようだ。
いや、米ロはこれでいいでしょう。私にとっての問題は、それでもまだ頑張ってそこから利益を得ようとしているらしくある日本のメカニズムの方。
■ 関連情報
ポスト安倍が見えない日本
JFKの話をしている場合でもない日本の情報開示拒否
プーチンが追放したアメリカ外交官755人。
なんで、こんなにアメリカ外交官がロシアにいるのって思ったのは私だけ?=比較にならないほど前者が大きい。
数字を出してくださってありがとうございます。
そうそう、その数字を見てもどっちが「損」してるかといえば、大量の人数と大量のお金かけて工作しまくってる米なんですよね。
だから、可能性としては、ロシアは自己改革ができたが、米はできないのでロシアを敵にしながらやってる、みたいな感じにも見えてしまいます。ロシアが倒れない、引かないからこそできる芸当ですが。