EUがまた馬鹿なことをやっているとしか思えない。
さんざんもめたサウスストリームがトルコ・ストリームになって、天然ガスの上陸地点をトルコにしてそこからギリシャに出して、ギリシャをハブにしたらいいんじゃないの~、とガスプロムが言っている&トルコ、ギリシャはいいよ、それと言っているという状況。
そんな中、EUがガスプロムに独禁法違反だとの疑いをかけた。それもガスプロムのミレルCEOがギリシャを訪問する日に、というので、なんというか、ゼロヘッジでは笑いものにされていた。EUはもう完全に馬鹿の巣窟になってるな的な反応。
ガスプロムに独禁法違反疑い 欧州委が警告
http://www.nikkei.com/article/DGXLASGM22H6E_S5A420C1EA2000/
【ブリュッセル=森本学】欧州連合(EU)の欧州委員会は22日、ロシア国営天然ガス会社のガスプロムにEU競争法(独占禁止法)違反の疑いがあると警告した。ロシア産ガスに大きく依存する中東欧諸国のガス市場で、独占的な地位を乱用して競争を妨げたとの暫定的な判断を示した。ウクライナ問題などを巡ってEUと対立するロシアの反発は必至だ。
こっちがゼロヘッジの記事。
As Gazprom CEO Arrives In Athens, EU (Coincidentally) Files Anti-Trust Charges Against Russian Gianthttp://www.zerohedge.com/news/2015-04-20/gazprom-ceo-arrives-athens-eu-coincidentally-files-anti-trust-charges-against-russia?page=1
日経さんはロシアの反発は必至と書いていたけど、どうなんでしょうね。ガスプロムは反論するだろうけど、反論したってEUはまた次から次から法律を持ちだして言い掛かりをつけるわけでしょ? つまりね、自分たちでもう法の支配さえぶち壊している状況。自分が言うことは正しい、なぜなら俺らは強いからだという態度に出ているEU。
ロシアはどうするのか。そんなら俺らはEU市場を縮小するとなるんじゃないかろうか。そもそもトルコ・ストリームというプロジェクトは、ロシアはギリシャまでしかガスを運ばないというプロジェクトなので、その先はEUが自分でパイプラインを敷設する必要がある。しかし、EUがそのプロジェクトを自分でやった場合、それって引き合うものなの?
ということは、ロシアを困らせようとして何年も放置することが見えた場合、トルコ・ストリームさえ危うくなる可能性はあると思う。
でなければ、ギリシャ、イタリア、オーストリアあたりがEUの言うことを法律論で対応できるだけ聞いて残りは聞かずにロシアと共同して有志連合的にガス会社を設立して引き継ぐ、というのもありでしょう。
■ ユーラシアを見るロシア
結局、EUは、ロシアは現金が欲しいはず、だから私たちに屈するはずよ、お~ほほ、なわけだけど、こうやっていく間にロシアにはロシアの経済発展がありますのでゆっくり行きますと宣言されてしまう可能性が見えて来るのではあるまいか。そういう国だし国民も戦争したり攻められたりするぐらいなら貧乏OKなので、スロー経済とか打ち立てたりして? 思えば、農業に力を入れているし、農家の人は制裁が早く解除されるのは困るとプーチンに訴えてたし、遺伝子組み換え食品の禁輸を検討してるっていうし・・・。
石油、天然ガスの売り先を中国、トルコにして、そこで適宜稼いで、あとはできるだけ内需で生きていかれるようにする、そして西側からは借金しないようにする、というトレンドになるんじゃなかろうか。そのためのユーラシア連合だろうし。
ではEUはどこから代わりのガスを持ってくるのか? きっとアメリカからLNGで来るんでしょう(笑)。場所によって、例えば英仏なんかはそれでも いいかもしれないし、そもそもノルウェー側からの供給もある。だから西の方の欧州はいい。で、問題はロシアに近い側。そこは殆ど100%近くロシア産天然 ガスに依存していた。というか、そもそもソ連圏の国だったからそのまま有りものを使ってたって話でしょう。
それをぶっちぎって、代替ガスをアゼルバイジャン、トルクメニスタン、そしてイランあたり、さらにはリビア、シリア?あたりから持ってくるのが「安全だ」と考えているのが現在のEU首脳部。
しかし、イランの主たる売り先は東でしょう、おそらく。あとカスピ海の東側は中国に出す方が便利。だって、誰がカスピ海を通すプロジェクトやるのよ、って話だって簡単ではないし。
別の考え方をするなら、このへんのEU候補地は、ロシアとの動きを見ながら、中国、インド向けとの引き合いでできるだけ高く売りつけられるようになるっまで待ってるって作戦もいいと思う。EUに売ることの優位性は、自分たちの経済が発展するに従い漸次縮小するんだから。
■ EUというモンスター
しかし、EUの動きが愚かしすぎて泣けてくる。
そもそも欧州のパイプラインは、ソ連(ロシア)が1970年代にドイツ企業との巨大プロジェクトとして作り上げたパイプラインから始まって、そこから枝葉ができて、世界で最も発達した、みんなにとって便利で快適な世界がここにあるわけですね。ロシア産ガスの供給が信頼できるもので、かつLNGからみたらずっと安価であることを欧州は今日当然のものと思っているわけだけど、最初からあったものではない。その40年間の安定を、今、EUというアホな組織がぶち壊しにしようとしているわけです。
1970年代の西ドイツによる東方外交によって、苦労して苦労してソ連との関係を築き、その上に東西ドイツの統合があった。ドイツの経済界の人たちは今何を考えてるんでしょうね。
また、外交的関係改善だけではなく、そもそも、一体何のためのエネルギーなんでしょう? 寒い地方にあってエネルギーをみんなで共有しようというアイデアは、とても実利にかなって、文字通り暖かいものだったのではないでしょうか?
EUの人たちは豊かになりすぎて、人にとって必要なものが何なのか忘れたんだと思う。こんなにも侮辱的にエネルギー産業を扱ったツケは必ず来る。
日本の石油天然ガス・金属鉱物資源機構さんの資料でも、次のように指摘されている。
実際の市場では、ロシアの供給安定性は群を抜いており、ロシアへの依存低下は、現実的な問題として欧州のエネルギー安全保障を劣化させる恐れがある。
このような政策が出てきた背景には、2014年からの「ウクライナ問題」があるが欧州のロシア依存についての米国からの警鐘は、1981年のレーガン政権時代からなされており、当時の国防次官補Richard Perleから今日の米国のネオコン人脈に受け継がれている。この考えにEUのバルト3国、ポーランドといった対露強硬国とが共鳴している状況と言える。
https://oilgas-info.jogmec.go.jp/report_pdf.pl?pdf=1503_out_j_Energy_Unioin.pdf&id=5675
しみじみ、欧州はネオコンに食い荒らされて、銭ボケ、欲ボケが高じて、人間にとっての交易の重要性、とりわけエネルギー資源を使って生活を豊かにするという発想を本当に無くしたのだと思う。
今回、サウスストリームが壊れたことは、ロシア圏にとって良かったのじゃないか。西欧近代主義は取扱いを間違うとああなるというサンプルを見ているわけだから。