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10日間の出来事:新START延長&ミュンヘン会議2007から14年@ダボス

2021-01-30 14:25:49 | WW1&2
アメリカでバイデンが大統領に就任してから10日間、バイデン本人が何をしてるのかよくわからないけど、

1月26日、米ロ間で新START条約が5年間延長され
1月28日、プーチンが12年ぶりにダボスのメンバーの前でスピーチをした

という出来事が静かに大きな出来事だと思う。

新STARTの方は、前任のトランプが、INF条約、オープンスカイ条約を一方的に破棄していたので、安全保障体制にとって唯一残ったハイレベルな条約を残した格好。

米ロ首脳、新START延長で原則合意 唯一の核軍縮枠組み維持

経緯からいえば、トランプ政権が交渉にもならない交渉を続けてモスクワがあきれたところで、プーチンが何も変えず1年間凍結(延長)しようとオファーを出したが、去年の秋トランプはそれも蹴った。

その後、来年バイデンが就任してから、新STARTの期限切れまで2週間あるので、その間にバイデンが延長を承認するんじゃないのか、という観測があった(スコット・リッターなど)が、その通りとなった。

NYTなどが早々に、合意したと書き、プーチンに操られてる~とかいうプロパガンダキャンペーンが来ないところが、現在のアメリカを表してるといっていいと思う。

Biden and Putin Agree to Extend Nuclear Treaty

すなわち、核戦略の3本柱(Nuclear triad)において、アメリカの立場は強くないということ。


表面上、バイデンは強い立場から語っているような作りで記事が書かれるけど、プーチンとバイデンの対話を描く記事の中で、ではバイデン側がロシアと対話するにあたって何を「条件」にしているかというと、ウクライナの主権の堅持とか、2020年(!)の大統領選挙へのロシアの介入は許さん、アフガニスタンでのロシアの行為は云々かんぬんといったことがホワイトハウスにある文章の中で挙げられていたりするんだそうだ。

 It said that Biden had reaffirmed the US’ “firm support for Ukraine’s sovereignty,” and had brought up the situation with Russian opposition figure Alexey Navalny, the SolarWinds hack, the alleged “interference in the 2020 United States election,” and even the unfounded allegations of “Russia placing bounties on United States soldiers in Afghanistan.”
https://www.rt.com/russia/513700-putin-biden-first-call-normalization/

これってみんなプロパガンダのネタでしかない。そして、アメリカがもし国ならばその安全保障にとって課題なのか????といったものばかり。要するに、もうこういう悪意のお邪魔虫みたいなことしか残ってないことを端無くも認めたということでもある。


ざっくりいえば、START延長をアメリカが受け入れたことの意味は、ABM条約を破棄することでMAD体制を葬り去ったブッシュ息子路線の否定の方向に1歩踏み出した、控えめに言ってもブッシュ息子路線継続は止めて今考え中、というのが現状だろうと思う。

とはいえ、まだ最終調印まで行ってないのでわからない。アメリカの現在は、誰が大統領だろうがすべてが流動的。


その2日後の、プーチン@ダボスの話もこの流れで読むことができる。

Session of Davos Agenda 2021 online forum

一般的には、Big Techという民間企業の役割が巨大なわけだが、それって社会の利益とどこで折り合っていけるのかという疑問を呈したところなどが、好んで取り上げられているようではある。

だけど、私としては、これはつまり、2007年のミュンヘン安全保障会議で一極支配は機能しないからやめろと宣言してから14年の「戦い」に対するまとめを、「戦い」の相手に向かって語っているということかなと思った。

一極支配は成り立たない、そしてそんなものは歴史的にも存在したことはないし、存在させる意味もない、ということを語りつつ、各文明を思い起こさせる方に関心を向けている。つまり、一極支配妄想は終わったので次のフェーズに進んでますという認識を表明していると思う。

長い長いスピーチなので、ざっとしか読んでないんだが、来週は時間が取れると思うのでちゃんと読んでからまた書く。読むのが楽しみ。


■ 妄想派は自分のことを心配すべき

で、日本の日経は、ふしだらな人間として、ふしだらな視点から、ふしだらな記事を書いていて、これはこれでよく読めてるじゃないかと思った。

【モスクワ=石川陽平】ロシアのプーチン大統領は27日、世界経済フォーラム(WEF)主催のオンライン会合「ダボス・アジェンダ」で講演し、喫緊の国際問題の解決へ団結するよう各国に呼びかけた。国際的な孤立を回避したい思惑が透けて見え、世界の協調を乱すと批判されるロシアの言動と講演内容にはズレも見られた。 


国際的な孤立とは、つまり、日米欧は、ロシアに「戦争」をしかけているという認識があるということでしょう。

孤立させているはずなのに、てめー、まだ生きていやがったなというのがFinancial Timesを買って世界プレーヤーになった気でいる日経のスタンス。

自分が「戦争」をしかけたのなら、負けたらどうするのかを考えているものと思うが、考えてる? 

前回の例からいえばそうでもないのが日本の慣例か。だが、前回のようなラッキーは多分もうない。なぜなら、米+欧に1945年のような力は、頭脳も含めて、もうないから。そして、ユーラシアは当たり前だが大きく、力強かった。


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2 コメント

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ロシア理解のための教材 (石井)
2021-01-30 19:16:56
今週ロシア第一チャンネルで興味深いドキュメンタリーが放映されましたので紹介させて下さい。「世界の構造を理解するための簡潔な手引書」というタイトルで、ロシアと西側の関係を中心に多面的に解説しています。以前、ブログ主様が紹介されていたスイス人ギー・メッタンの本(西洋-ロシア、千年の戦い)を手がかりに、主にフランス人の口から、「ルソフォビア」を鍵にして歴史、政治、地政学、文化的に現代世界を考察するという意欲的内容です。四部構成で、
1) ルソフォビア:https://www.youtube.com/watch?v=NBzyYC9KQOs
2) プロパガンダ:https://www.youtube.com/watch?v=tMQ5s28Du0Y&t=0s
3) 敵:https://www.youtube.com/watch?v=8iZMGBJD6DQ&t=0s
4) 戦争:https://www.youtube.com/watch?v=19ooUVqNO8I&t=0s
教材として秀逸なので何回か見ようと思っています。

面白いエピソードが満載です。そのひとつ。18世紀後半にロシアを訪れた2人の旅行記の比較をしています。(第2部の50分くらいのところ)ひとりがフランス人、ジャン・ドートロシュ。天体観測に来たロシアで見たものとして、野蛮、冷酷、非人間的支配を絵にして残している。(鞭打ちとか虐待とか、実際はそんなものはなかった)もうひとりは大黒屋光太夫。彼には先入観がなかったので、かなり正確で客観的な旅行記を残している。全く悪い印象は残していない。ロシアの野蛮さ、攻撃性、残酷さについて何も書いていない。

番組全体を通して残る印象は、ロシア恐怖症という「ルソフォビア」は、西洋社会にとっては不治の病であり治癒不能だということです。僕が期待したいのは、日本にとっては高々150年くらいの病であり、快復可能ではないかと。甘いですかね。
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知のワクチン (ブログ主)
2021-01-30 21:06:40
石井さん

素晴らしい! ご紹介ありがとうございます。

このお話ですね。

ヨーロッパ1000年のロシア恐怖症
https://blog.goo.ne.jp/deeplyjapan/e/dbd959b12a314ad63d7cbc38443cf533


これは、思うに、ロシア人集団にとってのワクチンのようなものかと思いました。つまり、この枠組みを理解する人が一定数以上いれば、西側の悪意ある中傷をまともに受け止めて、そうか、私たちって野蛮なんだわ・・・となって国家不信になっていくという経路が断ち切られる。

その意味でロシア当局者は将来にわたってのロシアを本当に考えているんだなとあらためて思いました。

もっとも、本当は西ローマ vs 正教会なので、ぜひギリシャ人とかにも見てほしい。

ということで、日本はまだ150年という視点、私もそうだといいなと思います。しかしそもそも文明的な距離が大きいので、実際にはヨーロッパより大変だ、とも言えると思います。接ぎ穂がない。

ただ、この構図が見えないと、日本人は世界史をちゃんと理解できない(the West史観を歴史だと思ってる)、という難問に突き当たりますので、引きつづき私はロシアにこだわりたいと思います。

いろいろご紹介いただき、本当に感謝してます。引き続きよろしく!
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