トランプが勝ちました。
マスメディア、大学、金融、ビジネス、ありとあらゆるエスタブリッシュメントが全部ひっくるめてクリントンを支援するという、信じられないぐらいアンフェアな選挙戦でしたが、それでもトランプが勝ちました。
逆にいえば、マスメディアがもう少しでも、ヒラリーの問題点を取り上げていたら、ヒラリー票はさらに減っていたことでしょう。それだけの大問題を一切無視したことのツケはいずれ支払うことになると思うな。
で、票差から言うと、ニューヨーク、カリフォルニアという人数の多いところが民主党として大勝するので「僅差」になるんだと思いますが、その他の州のトランプの勝ち方は結構安定的なところの方が多いように思った。
個人的には、ペンシルベニアを取ったことがトランプの勝利の意味、深さを物語っていると思った。ペンシルベニア、オハイオ、ウィスコンシンあたり。ミシガンは最後まで競ってますが、これだけ競っただけでもトランプ側の勢いを物がっていると思う。
で、まさにこの態度がいかんのだよという記事を日経が書いていた。面白いわ。
【ワシントン=川合智之】8日投開票した米大統領選は、民主党候補のヒラリー・クリントン前国務長官(69)が民主地盤の州で思わぬ苦戦を強いられた。共和党候補の不動産王ドナルド・トランプ氏(70)が白人労働者の支持を受け、激戦州を切り崩した。女性や中南米系(ヒスパニック)らの動向が影響した可能性がある。
クリントン氏は民主の地盤であるニューヨーク州(選挙人29人)などの東部や、カリフォルニア州(55人)などの西海岸で得票を重ねた。トランプ氏は白人が多く保守的な西部や南部などを固めた。
大票田の南部フロリダ州(29人)も勝った。カリブ海などから中南米系の移民が増えているが、温暖な気候で引退した白人高齢者の移住も多い。トランプ支持者の多い白人か、クリントン支持者の多い中南米系か、どちらが動くかが焦点だった。
http://www.nikkei.com/article/DGXLASGM09H41_Z01C16A1EB2000/
白人労働者とか書いてるけど、元ミドルクラスも含まれるわけで、要するにこの人たちはついこの間までアメリカとは私たちの国と思っていた人たちのことなんですよ。
その層が一貫して現在のアメリカに不安を覚えているわけ。それに対する民主党の態度は、マイノリティーと女性票で切り崩そう、なわけ。
で、これをグローバルなメディアは、多様性だのマイノリティーに優しいだのと表現する。そして、移民の際限のない流入こそ素晴らしいみたいなことを言い、白人層が不安を持つことはまるで不正義みたいな感覚でものごとを裁いてるのが現状。
しかし、これはリベラル帝国主義の裏返しでもあるわけね。
リベラルとリベラル帝国主義
どういうことかというと、相手先の国をぶち壊して、食えなくして、その移民をアメリカ(現在はヨーロッパも)が引き受けるという体制の上に集団移民問題は発生しているから。
頭脳流出もここに含まれますね。相手国の利口な人たちをアメリカに呼んで、いい学校でいい待遇をして、XXXX国のスペシャリストみたいにして当該国関係に送り返したり、あるいはシンクタンクでものを言わせたりするのね。
グルジアのサーカシビリなんかもこの流れですね。
で、そういうことをしつつ、それでもアメリカ国内はすばらしく安定しているとかいう夢みたいなことが起こっていれば、このリベラル帝国主義も機能するんでしょうが、アメリカ国内はすべてのインフラが他に先駆けて先進国になったから、今やとってもガタガタ。製造業が激減したから、どういう仕事についたら将来が見えるのかもよくわからなくなってる。
それをなんとかしよう、しないとだわ、という声はずっとあるものの、過去15年間夢中になっていたのは対外戦争で、しかも、リベラル帝国主義グループはこれを永続させるかのようなことをやってるわけ。
よくよく見れば、現在のアメリカは本当に、心から嘆かわしいことをしている。
宴の始末(19) アルカイダと歩む新しいアメリカ!
宴の始末(18) クリントン氏メール問題と主流メディアの敗北
トランプの運動の足になったのはエバンジェリカル系だと思うけど、そこに合流していたった中には、ほぼ間違いなく数多くの退役軍人、現役軍人さんたちいると私は確信している。だって、誰が一体、テロリストと自分たちが認定し、国連で認定した人たちと一緒に活動したいと思うんですか? これが名誉のわけはないでしょう。名誉の感覚のない正規軍に将来なんかないですよ。
ということで、白人層は、怒ったというより、もう、誰か、この糞な奴らじゃないやつにやってもらう以外にないと諦め、トランプという、エスタブリッシュメントに繋がってない人を求めた、という感じでしょう。
で、なんで、ペンシルベニア、オハイオ、ウィスコンシン、ミシガンあたりが重要だと思ったかというと、このへんの人たちは、古いアメリカだけど、エスタブリッシュメント一辺倒でない古いアメリカだから。だから、ここがごーっと揺れれば、それはやっぱり反エスタブリッシュメントの気運は本物だなとなるんじゃないかと思った。
本当はここにシカゴも入るべきだと思うけど、シカゴはクリントンもオバマもここ出身で、ポーランド出身者が大量にいるというリベラル帝国主義者の牙城になりおおせているのが現状なのでここは特異点。
これに対して、民主党が取った作戦は、ここでもマイノリティ票に頼るものだったらしくて、これじゃ絶対、民主党に付くモメンタムはなかろう、と私は思ってました。
上の日経の記事の最後にあったクリントン敗因分析は正しいと思いますね。
クリントン氏の苦戦の原因は、女性票が伸びなかったことだ。全米約2万2千人から回答を得た米メディアの出口調査では、女性の投票先はトランプ氏が40%に対し、クリントン氏は54%にとどまった。白人女性に限ればトランプ氏が51%と過半数を獲得、クリントン氏は43%と下回った。
http://www.nikkei.com/article/DGXLASGM09H41_Z01C16A1EB2000/
アメリカの女性たちは、アメリカの心配をしているのであって女か男かの心配をしているのではない、ってことでしょう。
この間、女優のスーザン・サランドンがトランプ支援こそしないものの、クリントンを腐ってるとして切って捨てたという話を書いた。BBCのインタビューなんだけど、キャスターが食い下がって、では、女性の活躍を推進しているあなたなら女性の大統領に、という方向に持っていこうとすると、スーザンが凄いことを言ったというので話題になっていた。
日本語でいうなら、
「私は自分のアソコで投票するわけではない」
とこの女優さんは軽く言いのけたわけです。これは結構今回の選挙の一端を表していると思う。
'I don't vote with my vagina': Susan Sarandon on not backing Hillary Clinton - BBC Newsnight
![]() |
オリバー・ストーンが語る もうひとつのアメリカ史DVD-BOX |
オリバー・ストーン | |
角川書店 |
![]() |
オリバー・ストーンが語る もうひとつのアメリカ史 1 二つの世界大戦と原爆投下 |
大田直子,鍛原多惠子,梶山あゆみ,高橋璃子,吉田三知世 | |
早川書房 |
だけどこの説を敷衍すると日本はこの2国から恨まれる側なので、困ったことです。
ロシアとアメリカは底流において同志
http://blog.goo.ne.jp/deeplyjapan/e/be6bdf4e310e23d34b8771d9c1ad9059