DEEPLY JAPAN

古い話も今の話も、それでもやっぱり、ずっと日本!
Truly, honestly, DEEPLY JAPAN!

リベラルとリベラル帝国主義

2016-11-08 16:21:19 | 太平洋情勢乱雑怪奇

オバマが大統領選挙に勝った頃、アメリカで彼に批判的だった人たちが、オバマはブッシュよりましなソフトな方に行くと思っているようだが、とんでもない、もっとハードな、もっと酷いことになるだろうと言っていた。

その意味は、ブッシュは右から来てるから戦争のロジックしかなかったが、今度は左から来てるから、人権、人権、人権で世界中に介入しやすくなるからだ、というものだった。

振り返ってみて、まさにその通りだった。リビアもシリアも、自分で問題を作り上げて、そこにフォーカスをあてて、今すぐ空爆しないと大量の犠牲者が出るのだ、といっては米軍を出して、その地の秩序を破壊する。

この流れは、しかしながらリビアで開発されたものではなく、むしろセルビアの爆撃がまさにそれだった。

つまり、ここには明確な路線の一致が見られる。そして、ヒラリーその人はずっとこの路線の中心人物。

彼女の考えというか思想の中心をもっともよく表しているのはこれかもな、と思った絵を拾ったのでアップ。

 

イラク人にはっきりさせておかなければならないことがある。

彼らは人間が他の人間に与えられる最も偉大なギフトを与えられたのです。自由というギフトを。

 

すっかり忘れてたけど、そうだこのおばさんこんなことを言っていたわけですよ。今インタネットを軽くサーチしたらしっかり報道も出て来た。アメリカABCが伝えた2008年3月の記事。

"And I believe that at the same time that we have to make clear to the Iraqis that they have been given the greatest gift that a human being can give another human being – the gift of freedom. And it is up to them to decide how they will use that precious gift that has been paid for with the blood and sacrifice and treasure of the United States of America.
http://blogs.abcnews.com/politicalpunch/2008/03/hillary-and-the.html

 

■ リベラル帝国主義

一般に、ヒラリーとか米民主党を支持している人というのは、自分を「リベラル」だと規定していると思うわけです。で、その人たちのリベラルってどんなものなんでしょう?

ヒラリーは自ら、ブッシュと表裏一体のリベラル的解釈を披歴しているわけだし、オバマ政権の中東政策を見れば、この路線がまさしく堅持されていたことも明白。

一方、ブッシュ時代には、多くの「リベラル」の人は、ネオコンは困ったとかいって批判していた。自由の戦士って、中世のようだという声もよく聞かれた。そう言っていたフランス人たちは自ら進んでリビアに進撃した。

 

さてしかし、ブッシュとヒラリー・オバマのどこに何の違いがあるんでしょうか?

あるとすれば、メディアの表現方法ではなかろうかと私は思う。

つまり、冒頭で書いたように、「リベラル」という派の場合は、あたかもリバティを追及しようとしているかのような、現地の個人に権利があるかのような体裁を作ってから、攻撃に出向く。

それに対して、ブッシュ一派は、現地工作がなかったか不得手だった。だから、むき出しのリバティ(自由)追求になった、と。

こう考えてくると、アメリカの戦後の基調はブッシュではなく、むしろ「リベラル」の方であったことがわかる。口でキレイごとを言いつつ、始終クーデターをやっていた戦後の歴史がそれを証明している。

もっとさかのぼれば、ウィルソン時代がまさにそれだったとも言える。一方でバンキングカルテルに大きな権力を与え、各国への介入のために公務員ではない人々による様々な活動を許容しておきながら、世界に向けては何か新しい時代が到来したかのようなことを触れ回っていたあの時代。ということは、そもそもこれが帝国としてのアメリカの生き方だったのだ、となるんでしょう。リベラル帝国主義こそアメリカの本体と言いたいものがあります。
 

■ 「リベラル」分業

そして、自分を「リベラル」だと認識している人の大半は、このリベラル帝国主義の枠組みの中の、あたかもリバティを追及しようとしているかのような、現地の個人に権利があるかのような体裁を支持している人たちなんでしょう。好むと好まざるとに拘らずそうなってるともいうけど。

だから、実際の現場の、それをやったら戦争になる、そういったら相手も引き下がれない、ここで妥協だ等々の取り組みや、人が死に、傷つき、逃げまどいつつも立ち向かう、どうしたら犠牲を減らせるのだといった軍事の現場のやり取りには興味がない。

興味があるのは、誰かが傷ついているシーン、誰かが辛い思いをしている物語の方。それに対して涙を流し、胸を痛め、悪い独裁者を倒すべきなのよ、ってなことに大きな意義を感じる。それが私たちにできるせめてもの行動なのよ、と。

現実には、とりあえずgovernance(統治)が行き届いて適当に安定している方が人の犠牲は少ないのだから、妥協しつつ彼らにとって良い方向に改善していけばいいだろう、というのが要するに普通の、正常な考えではなかろうと思う。それがたとえサダムの下であったも。

が、それが許せないのが「リベラル」な人。その統治が自由でないとラベリングされたら直ちに改善するべきだ、とその人たちがどんなところに住んで、どんな歴史があるのか、隣近所はどんなところなのかも知らずに突っ走るメンタリティーを知らず知らずに宿している。

私は別に「リベラル」な人たちを悪し様に言うことを目的としているわけではない。しかし、この分業は危険であると思っている。なぜなら、リベラル帝国主義のモードが生きている限り、分業化された「リベラル」の行動は、現地での汚い作業や目論見をカバーアップするための道具だから。

 

■ リベラルに未来はあるのか

とぐじゃぐじゃ書いてるけど、要するに、分業化しないで、パースペクティブを広く取ればいいだけの話だと思うんですよね。

でもって、ヒラリーだからリベラル、私はリベラルだから私はヒラリーを推すわ、みたいなタグで振り分けるみたいな人を増やさないってのも大事でしょうね。

で、なんでこんなことをぐじゃぐじゃ書いているかというと、おそらく、ヒラリー一派の悪事のせいで、控えているのはリベラルに対する憎悪なわけです。で、それが要するに極右と呼ばれる人たちの伸長を招くから危険だ、みたいなありきたりなことを言うつもりはなくて、体裁やら、スローガンはいろいろつくだろうけど、本質的に、リベラルへの絶望が招くのは、おそらくシニシズムだと思うんですね。

で、これは無法化への一里塚だろうと思うんですよね、私は。法というのは、私も守るがあの人も、この人も、見たこともない第三者も守ると理性が判断できるための感情的な土台が必要だと思うわけですよ。シニシズムはこの土台を破壊する。

どうなっていくもんだかわからないけど、オバマ・ヒラリー時代の悪質さはブッシュなんか赤子だなと思う。

 


 

 

 


コメント (2)    この記事についてブログを書く
  • X
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする
« マトヴィエンコ上院議長訪日... | トップ | トランプが勝った »
最新の画像もっと見る

2 コメント

コメント日が  古い順  |   新しい順
『リベラル十字軍主義』 (ローレライ)
2016-11-09 06:31:07
戦争屋の『チンドン屋戦争』の手口の『リベラル十字軍主義』を進めて戦争に動員したのがクリントン夫妻の手口でブッシュの『テロとの戦い』以上の被害を世界中に与えた。
返信する
ジハードもカーター政権 (ブログ主)
2016-11-09 15:05:18
マジで信じられないほどの暴挙をし続けているのがクリントン政権からこっちですよ。ブッシュはその一幕。
返信する

コメントを投稿

ブログ作成者から承認されるまでコメントは反映されません。

太平洋情勢乱雑怪奇」カテゴリの最新記事