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バーラトプル
サイババのいるプッタパルティを出てから、北インドの観光地を巡って、アグラまで来た。もうすぐデリーである。しかしまだ帰国までには数日ある。観光ルートとしては、アグラからジャイプルに行くのが筋なのだが、観光地にも飽きてきたので、少し目先を変える事にする。
それで行く事にしたのが、バーラトプル鳥獣保護区。
日本から小型の双眼鏡を持参しているし、野鳥の図鑑『COLLINS BIRDS OF INDIA』をカジュラホで買っていたから、バードウオッチングくらいはできそうだ。この鳥獣保護区はアグラからそれほど遠くない。
とりあえずバーラトプルの地図を手に入れようと、政府観光局の事務所を訪ねてみた。すると対応してくれたりっぱなお役人が、しきりにタクシーのチャーターを勧める。タクシー代は1日チャーターして700RSだが、インドルピーの感覚では高額である。その金額で今の宿には6日泊まれる。しかし、タクシーだと帰りに他も見られるとか言われて、結局タクシーを使う事にした。
ITDC御用達のタクシーの運転手は精悍でまじめな感じの男であった。バーラトプルへ向かう道路は真っ直ぐな良い道で、しかも空いていたので、運転手は80キロくらいのスピードで飛ばした。
車から見える風景は、乾いた感じの穀倉地帯で、このような土地にどんな鳥獣保護区があるのだろうかと考えたりした。しかし、一時間も走ったところで、ちょっと森らしい所に入ったら、もうそこがバーラトプル鳥獣保護区の入口だった。
入口の事務所で、ガイドを付けた方が良いと説明を受けた。ガイドがいないとどれほど危険かを係りの人は説明しているらしいのだが、あいにくよくわからない。チャーターのタクシーで行ったものだから、それなりに、余分にお金がかかる事になる。しかし、これも経験と思って、ガイドに案内してもらう事にした。ちなみにこのガイド氏は、1時間当たり75RSだった。学者さんのような?雰囲気の本格的なガイドである。
バーラトプル鳥獣保護区は、森で囲まれた広い湿地帯である。観察のための道が整備されていて、自転車が借りられるので、ひとりでものんびり見てまわる事ができる。ただし、自転車のサドルの高さは、日本のそれに比べてだいぶん高いものだった。またボートを使えば、さらにたくさんの鳥を見る事ができる。
優秀なガイド氏のおかげで、野鳥の図鑑には、すぐに20を超えるマークが付いた。私一人では、とてもそれほどたくさんの種類を見つける事はできなかったはずである。したがって、もし本当に鳥を見るのであればガイドに付いてもらうべきなのだろうと思った。
ガイド氏に2時間ほど案内してもらって、公園のだいたいの雰囲気も分かったので、その後はひとりで自転車を使って公園の中を見て歩いた。森の中の道を行くと孔雀がいた。また、池の水面を見下ろす木の上には、大きなカワセミがいた。日本でたまに見かけるカワセミはすずめくらいの大きさだが、インドのカワセミはヒヨドリくらいの大きさである。ブルーの羽に透き通るような大きな赤いクチバシが魅力的だ。私はカワセミが好きなので、カワセミを見かけるたびに興奮してしまったが、インドでは割にポピュラーな鳥らしい。
インドに住む鳥の色彩は日本に比べるとずいぶんあざやかで、ここが南の国である事を実感させてくれた。
このバーラトプル鳥獣保護区はインドの自然というには、あまりにも手軽だが、それでも、かなり満足のゆくバードウォッチングができる場所だった。
バーラトプルの帰りにファテープル・スィークリーに寄った。この遺跡はタジ・マハルを作った皇帝よりさらに2代前のアクバル大帝が作った都だ。せっかく作ったのに、水不足のため14年使っただけで、別の場所に遷都したらしい。今から400年前の話である。日本であったら400年もたてば「その石垣に当時の面影を残すのみ」になってしまうのだが、全て石造りだから400年くらいでは、つい10年ほど前に作ったかのように残っているのである。だから、これから100年たち200年たちして周囲が変わっていっても、14年しか使われなかったこの都はこのまま変わらずにここにあり続けるのだろう。
このファテープル・スィークリーの礼拝堂にはモスリムの聖人の墓があった。信仰されているらしく、たくさんの人が堂の中に入って墓の周りを回ったり花をあげたりしている。案内してくれたガイドさんに聞くと私が入っても大丈夫らしい。それで、その堂に入って薄暗い墓の周りを回ってみた。
小さいお堂なのだが、タジ・マハルとは全く違ったゾクッとするような雰囲気があった。その違いは、観光地と今現在信仰を集めているものとの差だろうと思った。信仰を集めている場所にただよう霊気のようなものは、そこに祭られている神のものというよりは、そこに集まってくる人々の想念が作り出すもののような気もする。
タクシーは午後3時頃にはホテルに到着してしまったので再びタジ・マハルに行く。南門の外のホテルの屋上でお茶を飲みながら見ていると、何十羽もの鷹が白いドームの金色に輝く尖塔の上をゆっくり旋回しながら上がっていった。それから、前日とは歩くコースを変えてタジ・マハルを楽しんだ。夕方、西日がタジ・マハルの中に差し込むと、内壁の象眼細工や棺を囲む大理石の格子の象眼細工が、その時だけ生き生きと色彩を放って素晴らしかった。
サイババのいるプッタパルティを出てから、北インドの観光地を巡って、アグラまで来た。もうすぐデリーである。しかしまだ帰国までには数日ある。観光ルートとしては、アグラからジャイプルに行くのが筋なのだが、観光地にも飽きてきたので、少し目先を変える事にする。
それで行く事にしたのが、バーラトプル鳥獣保護区。
日本から小型の双眼鏡を持参しているし、野鳥の図鑑『COLLINS BIRDS OF INDIA』をカジュラホで買っていたから、バードウオッチングくらいはできそうだ。この鳥獣保護区はアグラからそれほど遠くない。
とりあえずバーラトプルの地図を手に入れようと、政府観光局の事務所を訪ねてみた。すると対応してくれたりっぱなお役人が、しきりにタクシーのチャーターを勧める。タクシー代は1日チャーターして700RSだが、インドルピーの感覚では高額である。その金額で今の宿には6日泊まれる。しかし、タクシーだと帰りに他も見られるとか言われて、結局タクシーを使う事にした。
ITDC御用達のタクシーの運転手は精悍でまじめな感じの男であった。バーラトプルへ向かう道路は真っ直ぐな良い道で、しかも空いていたので、運転手は80キロくらいのスピードで飛ばした。
車から見える風景は、乾いた感じの穀倉地帯で、このような土地にどんな鳥獣保護区があるのだろうかと考えたりした。しかし、一時間も走ったところで、ちょっと森らしい所に入ったら、もうそこがバーラトプル鳥獣保護区の入口だった。
入口の事務所で、ガイドを付けた方が良いと説明を受けた。ガイドがいないとどれほど危険かを係りの人は説明しているらしいのだが、あいにくよくわからない。チャーターのタクシーで行ったものだから、それなりに、余分にお金がかかる事になる。しかし、これも経験と思って、ガイドに案内してもらう事にした。ちなみにこのガイド氏は、1時間当たり75RSだった。学者さんのような?雰囲気の本格的なガイドである。
バーラトプル鳥獣保護区は、森で囲まれた広い湿地帯である。観察のための道が整備されていて、自転車が借りられるので、ひとりでものんびり見てまわる事ができる。ただし、自転車のサドルの高さは、日本のそれに比べてだいぶん高いものだった。またボートを使えば、さらにたくさんの鳥を見る事ができる。
優秀なガイド氏のおかげで、野鳥の図鑑には、すぐに20を超えるマークが付いた。私一人では、とてもそれほどたくさんの種類を見つける事はできなかったはずである。したがって、もし本当に鳥を見るのであればガイドに付いてもらうべきなのだろうと思った。
ガイド氏に2時間ほど案内してもらって、公園のだいたいの雰囲気も分かったので、その後はひとりで自転車を使って公園の中を見て歩いた。森の中の道を行くと孔雀がいた。また、池の水面を見下ろす木の上には、大きなカワセミがいた。日本でたまに見かけるカワセミはすずめくらいの大きさだが、インドのカワセミはヒヨドリくらいの大きさである。ブルーの羽に透き通るような大きな赤いクチバシが魅力的だ。私はカワセミが好きなので、カワセミを見かけるたびに興奮してしまったが、インドでは割にポピュラーな鳥らしい。
インドに住む鳥の色彩は日本に比べるとずいぶんあざやかで、ここが南の国である事を実感させてくれた。
このバーラトプル鳥獣保護区はインドの自然というには、あまりにも手軽だが、それでも、かなり満足のゆくバードウォッチングができる場所だった。
バーラトプルの帰りにファテープル・スィークリーに寄った。この遺跡はタジ・マハルを作った皇帝よりさらに2代前のアクバル大帝が作った都だ。せっかく作ったのに、水不足のため14年使っただけで、別の場所に遷都したらしい。今から400年前の話である。日本であったら400年もたてば「その石垣に当時の面影を残すのみ」になってしまうのだが、全て石造りだから400年くらいでは、つい10年ほど前に作ったかのように残っているのである。だから、これから100年たち200年たちして周囲が変わっていっても、14年しか使われなかったこの都はこのまま変わらずにここにあり続けるのだろう。
このファテープル・スィークリーの礼拝堂にはモスリムの聖人の墓があった。信仰されているらしく、たくさんの人が堂の中に入って墓の周りを回ったり花をあげたりしている。案内してくれたガイドさんに聞くと私が入っても大丈夫らしい。それで、その堂に入って薄暗い墓の周りを回ってみた。
小さいお堂なのだが、タジ・マハルとは全く違ったゾクッとするような雰囲気があった。その違いは、観光地と今現在信仰を集めているものとの差だろうと思った。信仰を集めている場所にただよう霊気のようなものは、そこに祭られている神のものというよりは、そこに集まってくる人々の想念が作り出すもののような気もする。
タクシーは午後3時頃にはホテルに到着してしまったので再びタジ・マハルに行く。南門の外のホテルの屋上でお茶を飲みながら見ていると、何十羽もの鷹が白いドームの金色に輝く尖塔の上をゆっくり旋回しながら上がっていった。それから、前日とは歩くコースを変えてタジ・マハルを楽しんだ。夕方、西日がタジ・マハルの中に差し込むと、内壁の象眼細工や棺を囲む大理石の格子の象眼細工が、その時だけ生き生きと色彩を放って素晴らしかった。