新型コロナウイルスの感染拡大に歯止めがかからない。東京都のモニタリング会議では専門家が「制御不能で災害レベルの非常事態だ」と現状を分析。医療提供体制は「深刻な機能不全に陥っている」とした。13日段階での東京都の感染者は5773人、自宅療養者と入院・療養調整中の者の合計は3万4千人を超えている。東京都医師会々長は厚労大臣に野戦病院的なものの建設を提案したと伝えられている。東京都はどうしてこの政策を取らないのだろう?
特措法31条の2には、医療機関が不足し、医療の提供に支障が生ずると認める場合には、患者等に対する医療の提供を行うための施設であって都道府県知事が臨時に開設するものにおいて医療を提供しなければならない・・・と定められているではないか。 一方、軽症・中等症患者向けの新治療薬の「抗体カクテル療法」が、医療機関で使われ始めている、との報道も目にした。少しは明るい話題だが、私はイベルメクチンに思いが行く。医療に門外漢の私が僭越にもこう書くのは、イベルメクチンについての、7月7日のBS・TBS「報道1930」を見て、日本の治験体制に疑問を感じたからだ。(写真:イベルメクチンは飲み薬)
エジプトの治験では投与しない群と比較して投与群の死亡率は7分の1になり、インド・トルコなどの6か国の治験では投与群の死亡率は非投与群の約4分の1になったと報道されていた。日本でも最終治験が始まったとか。
6年も前になるが、イベルメクチン発見者の大村智先生のノーベル賞受賞のニュースを聞いたとき、その経歴を知って先生が身近に感じられる一方、イベルメクチンの投与でオンコセルカ症から救われた子供たちに囲まれた先生の写真を見て、本当に嬉しくなった。私にとってイベルメクチンは印象深い治療薬となっていた。更にそれが新型コロナの治療薬の可能性があるとは。(写真:イベルメクチン投与でオンコセルカ症から救われた子どもたちに取り囲まれて、歓迎される大村先生。2004年。ガーナ共和国で)
この間『大村智物語』など何冊かの本を読んだ。多くの方が知っていることかも知れないが、今回のブログでは大村先生とイベルメクチンそのものに触れ、各国の治験の様子や疑問に感じたことについては次回に回したい。
大村先生は1958年に国立山梨大学学芸部自然科学を卒業後、都立墨田工業高校定時制に理科教師として赴任した。私も地方の国立大学出身で、人文学部理学科数学専攻を卒業後、都立高校の定時制に勤務した。出発点だけは同じ様な環境だったから身近に感じれらたのだろう。
イベルメクチンが発見されるまでの経緯は波乱に満ちたドラマのようだ。
1973年、ウエスレーヤン大学に留学していた、大村先生は帰国後、製薬会社メルク社と産学連携の契約を結んだ。研究開発のターゲットは、動物の消化器官にいる線虫という寄生虫を殺す薬を探すことだった。
メルク社は大村研究所から送られて来た放射菌「OS-3153」株(OSは先生のイニシャル)の培養液をマウスに投与したところマウスの寄生虫が減っている実験結果を得た。大村先生とメルク社の研究グループは、この微生物から抽出して単離した化学物質をエバーメクチンと名付けた。
メルク社からは「OS-3153」株を3億円で買いたいと申し出があったが、大村先生はこの提案を拒否し、売り上げに応じたロイヤリティ支払いを主張。こちらの契約から、その後北里研には200億円以上のロイヤリティーが支払れたそうな。これは先生に先見の明があった逸話として今に語り継がれている。
メルク社はマウスの実験結果を受けて、家畜動物にも効果があるかを調べるための大掛かりな動物実験に取り組む。エパーメクチンを動物に投与するように化学的に改良し、これをイベルメクチンと名付けた。放牧された牛のグループを2つに分けた治験ではイベルメクチンを1回飲ませた牛のブループから寄生虫は殆ど無くなっていた。
イベルメクチンを動物薬として特許申請後製品化し、犬への投与を試みると、ただ1回の投与でフィラリアとうい寄生虫にも効くことが分かった。犬の寿命が延びた理由とされている。ここから人間の疾病にも使ってみようと思い至ったのは自然の成り行きだった。
イベルメクチンは世界中で知られるようになり、河川盲目症といわれるオンセルカ症にも劇的に効くことが分かった。1回の投与で治療および予防薬としての効果がある。現在までに全世界で3億人の人々に投与されて来た。そのイベルメクチンが新型コロナウイルス感染症にも効く可能性が出て来ているそうな。多くの国で治験が開始され始めた。