アパルトヘイト政策の撤廃を指導し、27年間の投獄を経て1994年に南アフリカ共和国の初の黒人大統領となったネルソン・マンデラ氏。
自由、敬愛、正義を基調とするラグビーを通じて人種の融和と国民の団結を進めた姿が映画『インビクタス』(2009年アメリカ)に描かれている。
南アは人種差別があるという理由で1987年に始まったRugby World Cupに出場出来ず、1995年に自国で開催した第3回大会に初出場し、初優勝を飾った。ネルソン・マンデラ氏の夢が叶った。
その大会で日本はNZ・オールブラックスに大会最多失点記録となる17-145で敗れている。NZより強かった南ア。ワールドカップに出て良いものかと率直に思った。
4年前、その南アに日本は勝った。ロイター電は「史上、最も大きな番狂わせ。」と報じ、国内メディアも同様の論調だった。
しかし、私は〝Rugbyに番狂わせは無い!〟と固く信じているので、日本の力が強豪国の水準に達したと考えていた。経験的に、勝ったことのない相手にフロックでは勝てない。戦う前に上回っていなければチャンスは無い。
そして今大会を開催国として迎えた。アジアに日本ありを示し、地域でのラグビー普及を目指した。そして見事に果たした。
歴史的な巡り合わせの南アに敗れはしたが、かつては幕下と横綱ほどの差があった相手に、前半3-5で折り返すレベルに達した。決して“夢のような時間”ではないと確信した。選手は誰のためでもなく、好きなラグビーに没頭したに違いない。
「invictus」(インビクタス)とはラテン語で「屈服しない。」の意味。願わくばワントライでも取って欲しかったが、綿密な研究と想像を絶する鍛錬で裏打ちされた自信がベスト8までの道を切り拓いた。次世代へパスを繋いだ姿は感動的で羨ましくもある。
かつて日本ラグビーの理論的支柱であった大西鐵之祐氏の『接近(攻撃タックル)・展開(高速パスワーク)・連続(ボール支配)』ラグビーは今も命を持っていると感じる。
RWC2019が佳境を迎えた。4チームの戦いを観られるのは夢のようだ。
〜 ラガー等のそのかちうたの短かけれ(横山白虹) 〜