24日に2020東京オリンピックの概ね1年の延期が決まった。IOCのバッハ会長が、4週間検討して結論を出すと述べた僅か2日後の安倍首相との電話会談でのことだった。
いつの間にか4週間後は開催日程の発表に変わっていたが、ではいつ延期そのものが決まったのだろう。日本は蚊帳の外だった?
参院予算委員会で1年の根拠を問われた橋本五輪担当大臣は要領を得ず、委員長から「根拠を質問されています。」と注意を受けたが、腰だめ答弁に終わった。
コロナウイルス・パンデミックの中で、今年開催に拘る日本の姿勢が世界のアスリート、競技団体の理解を得るはずもない。慌てて安倍首相が主導権をアピールしたのだろう。いつものパターンだ。
山積する問題は先送りし、取り敢えず延期したという曖昧さが残る。2020東京大会は“アスリートファースト”と言われているが、商業主義オリンピックに群がる人々の“経済ファ-スト”であることは誰の目にも明らかだ。選手は何も言えない。気の毒だ。
エコノミストによると、2020東京大会の開催経費は当初の7千億円を遙かに超えて3兆円が見込まれるが、GDPの押し上げ効果は開催年を含めた3年間で約17兆円、開催年が約3兆2千億円のプラス効果が見込まれていたと言う。
しかし、タイムラグはあるし、過去の経験則によれば既に2年間分の経済効果である13兆8千億円程度が出現しており、特需のピークは過ぎているらしい。その結果が今のGDPマインス6%台の伸び率予測である。
コロナウイルスの汚染拡大でさらに深刻な不況に陥るのは間違いない。先送りされた“捕らぬ狸”の3兆円を期待して、“来年の2020東京オリンピック”を損失を出さずに終わらせるのは素人目にも不可能と思える。
何より、「完全なる形」かどうかはその時又判断しなければならない。選手にとっては辛いが「中止」にして、まだキズの浅いうちに経済的な影響の処理をすべきではなかったかと思う。
選手や関係者に一人でも感染者が出ただけで練習がストップする。世界的な視点で代表選手と代表を目指す選手に果たしてベストの練習環境が提供されるのだろうか。必ずしもアスリートトファーストではないように思う。
オリンピックそのものを考え直し、誘致の時と同じく“同調圧力”が強い日本社会を考える良い機会と思っていたが、ずるずると延期に進んでしまった。