11月になって家の周りの畑にはビート(甜菜)が残るだけになった。
大きなホウレンソウのような葉をつけ、直径15cm位の白いカブのような根をつける。
北海道の畑作の稔りのしんがりを務める〝砂糖大根〟は山間部で初雪の便りが聞こえてくるこの季節、収獲の最後の一日まで糖分を蓄え、砂糖自給率40パーセントを支えている。
小麦、馬鈴薯と並んで、明治時代に冷涼な北海道に適しているとヨーロッパから導入されたビート。
当時の技術者の先見の明に感心する。
先日、農作業支援でビートの堆積場作りをした。
道南伊達市にある製糖会社が集めにくるまで畑の一角に台形状に積んでシートをかけておく必要がある。
そのビートの作付け面積が2026年度まで5年をかけて1割減らして5万ヘクタールにする計画になっていると5日付けの北海道新聞が報じていた。
健康志向にコロナによる外食需要の減少が重なり、安い輸入原料糖との価格差を調整する農家、製糖会社への交付金の会計が現在450億円の赤字になっていて、やがて770億円になるという。
最近の政府の無駄遣いから考えると、「たったの」である。
昔の職場でビートを扱っていた時の作付面積は7万ヘクタールだったから20年余りで3割も減少していた。
ビートは作物病害を防ぐための北海道の畑作の輪作体系(麦、馬鈴薯、豆類、+ビート)に欠かせない重要作物だ。
単純に考えても約29万ヘクタールの畑作物面積の1/4として、7万ヘクタールは最低限必要になる。
農水省とはそのような鬩ぎ合いをした想い出がある。
人口減少も進み、一定程度の減産はやむを得ないとしても海外から必要なだけ食糧・食品が入ってくる時代は終わったと考えるべきである。
スーパーに行けば食べ物が崩れんばかりに何でもあるが、食糧自給率は38パーセントしか無い。
「飽食の中での不足」ということが昔の職場にいた時から叫ばれてきた。
たったの800億円の赤字会計で食糧安全補償という国家百年の大計が脅かされてよいはずがない。
最近のNHKの地方特別番組でも飼料、肥料価格の高騰による北海道の酪農の危機を伝えていた。
国は戦闘機に飽き足らずトマホークの導入まで考えているという。
防衛費は5兆円から10兆円に増やすというが、農水省の予算は調べてみると2.2兆円しかない。
岸田首相から食料自給率のことを聞いた覚えがない。
どこに貴重な税源を使うか、この国の税収をどう伸ばすか、税制に問題は無いのか、
よほど国政選挙で考えなければならない。