今年75歳になる。
歌にもあったが、思えば遠くに来たもんだ。
高校・大学同期の連中や同じ年頃の有名人の訃報に接することが多くなった。
いずれは閉じる命と思いつつ、大きな病もせずに来たことに感謝する。
人生は分岐の連続集合体、これからも流れに身を任せて行こうと思う。
別に何かを成し遂げたとか、何かの肩書があるわけでもないビル・フラー(75歳)はカナダのフェアバンクスという街に住み、60才代後半になって日本語を学び始め、自転車で北海道から九州まで旅をした。
エッセー『旅する木』(星野道夫著)の「生まれもった川」に登場する。
生来、寒さに強いらしく、マイナス20℃でも素足にサンダル、マイナス30℃になっても「タイヤが道路にくっ付きやすくなるんだよ。」と気にもせず足代わりの自転車に乗る。
1919年生まれ。
今、ご存命とすれば105歳になる。
さまざまな人生を歩んだ。
年齢がどうだからと考えることは無しに、商船、航空機のクルー、サトウキビ農民、ヨットの帆織職人で生きた。
何のためとかではなくスペイン語を学び、カリフォルニア大で植物病理学の修士号を取得している。
水道の無い小さな家に奥さんと二人で住み、「人間はこれだけ何も持たなくてもよいのだよ。」と星野氏に語りかける。
あるがままの人生をビルは言う。
「誰だってはじめはそうやって生きてゆくんだと思う。ただ皆な、驚くほど早い年齢でその流れを捨て、岸にたどり着こうとしてしまう。」
75歳にもなると人は守りに入るのに深い言葉だ。
迷いながら、その気があるのならと今年の元旦も夜明け前にランニング&ウォークで初詣した。
ビルさんの生き方に触れると、人生に第一も第二も無く、あるのは一つとのかねてからの思いを強くする。
連作交響詩「我が祖国」より モルダウ(ブルタバ) F.スメタナ
小林健一郎/洗足学園音楽大学オーケストラ/前田ホール 2014.11
チェコ・ボヘミアの水を集め、北海へと注ぐモルダウ川(チェコ語でブルタバ)。
学生の演奏が若々しい。