60才から北海道沿岸一周自転車旅を始めた。函館をスタートし、昔の仕事の初任地の江差から、今金、国縫へ駆け抜けるコースが第一歩だった。
仕事の合間に少しずつ続け、完全退職の65才から本格的に取り組んで10年目の今年、完成した。
距離にして3,000Km、日本列島の長さに近い。1ヶ月で走破しようと頑張っている若者にも何度が出会った。
今年7月下旬に最後に残っていた羅臼から標津~納沙布岬~霧多布岬~厚岸~釧路を走った。
記録的な猛暑のニュースを聞きながら涼しい霧の道東を抜けて、7日目に快晴の浜中町・霧多布岬のキャンプ場に着いた。
良く手入れされた芝のキャンプサイトからすぐ前に嶮暮帰島が見えた。温泉も併設された素晴らしい施設だった。隣に中年の外国人女性カップルがいた。
聞くと二人とも65才のオランダ人。噂に違わず背が高い。
アフリカ北部を4ヶ月かけて回って韓国に3ヶ月滞在。そこまでの経過は英語の語学力が無くて分からなかったが、日本へは大阪から入り、テント旅で北上してきていた。女性二人! 65才! 自転車野宿旅!
日本では大学サイクリング部は別にして、自転車ツーリングは男女に限らず単独が多いと思う。外国人は老若に拘わらず男女カップルで回っているのは珍しくないが、女性どおしに出会ったのは初めてのことだった。
流石に慣れていて、大きめのコッヘルひとつでシチューなどを手早く作っているところに話しかけた。
「これが私達の家なのよ。」と自転車のハンドル部の野草の鉢を指さし、「温泉が大好きなので、通りかがりで見つけたら直ぐに入れるようにバッグから出してあるの。」と前輪泥よけフレームの上の石けん箱を指さし、日焼けした顔でニッコリ微笑んだ。
「70才です。」と言うと、「私達はベビーね。」と何回も笑った。人生の後半にこのような自由なパワフルな生き方をする文化は衝撃だった。「もう使わないから。」と抽選で当たった温泉無料入浴券をプレゼントしてくれた。
翌日の別れ際に「自転車旅は“Small Road”に限る。排気ガスが無く、混雑が無く、安全で景色が良い。」と言いながら渡してくれたカードには運河に浮かんだ小綺麗な住宅船がプリントされていた。
「私達の家です。」と指さした。二人の生き方が凝縮されているようだった。
Good luck !! 「You too!」納沙布岬へ向かった。
当方は浜中から厚岸まで海岸淵の“Small Road”を走って道に迷い、駆け込んだ漁師の家で花咲カニをご馳走になった。やはり“Small Road”に限る。